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人は老化すると、なぜ病気になりやすくなるのか、そのメカニズムの一端を解明

京都大学は9月22日、マウスを使った実験によって、老化に伴い、がん、糖尿病、動脈硬化、アルツハイマー症、慢性腎不全などの慢性炎症性疾患やリュウマチなどの自己免疫疾患にかかりやすくなるメカニズムの一端を解明したと発表しました。研究チームによれば、免疫の中枢を担う、リンパ球の1種、T細胞が老化し、同じく、免疫の中枢を担う、リンパ球の1種である、B細胞と相互に刺激し合うことで、上記のような老化関連疾患にかかりやすくなるといいます。以下、詳しくみていくことにしましょう!

免役老化とは?


私達の免疫も加齢によって老化します。例えば、歳を取ると、免疫力が落ちて感染症にかかりやすくなったり、慢性的な炎症がおきやすくなったり、本来、外敵を攻撃するはずの抗体が、私達自身を攻撃しやすくなったりします。これを免役老化と言います。

そして、この免役老化がさまざまな老化関連疾患に深く関係していることが近年の研究によって解ってきました。例えば、がん、糖尿病、動脈硬化、アルツハイマー症、慢性腎不全などの慢性炎症性疾患やリュウマチなどの自己免疫疾患などの基礎にこの免役老化があることが解ってきたのです。

しかし、免役老化によって、これらの疾患が、どのようにして引き起これるのか、その詳しいメカニズムについては、よく解っていませんでした。

今回、研究チームはマウスを使った実験によってその詳しいメカニズムの一端を解き明かしました。

では、研究チームが解き明かしたそのメカニズムを詳しくみていくことにしましょう!

老化したT細胞が、B細胞と、相互に刺激し合うことで、慢性炎症が引き起こされ、自己抗体がつくられる


今回の研究成果を解りやすく解説したイラスト。京都大学のプレスリリースより引用。

T細胞とは、私達の免疫の中枢を担う、リンパ球の1種で、ウイルスに感染した細胞、がん細胞などを破壊するキラーT細胞や他の免疫細胞と連携し、司令塔としての役割を果たすヘルパーT細胞などがあります。

また、B細胞とは、これもT細胞と同じく、私達の免疫の中枢を担う、リンパ球の1種で、抗体をつくる役割を負っています。

今回の研究成果の主人公はこの2つの細胞です。

老化したT細胞は、通常、分裂・増殖せず、不活性化していますが、若いT細胞にはみられない特異的なタンパク質が出現しています。「CD153」といいます。

また、外敵ではなく私達自身を攻撃する抗体、自己抗体をつくってしまうB細胞(自己反応性B細胞)の中には、ごく少数ですが、他のB細胞にはみられない特異的なタンバク質「CD30」が出現しているものがあります。

で、このCD153とCD30がくっつき、これを介して、老化したT細胞と自己反応性B細胞が、相互に刺激し合うことで、老化したT細胞が分裂・増殖し、活性化。また、自己反応性B細胞も分裂・増殖し、活性化。そして、老化したT細胞からは、炎症を引き起こす物質が大量に放出されて、慢性的な炎症が引き起こされ、自己反応性B細胞からは、自己抗体が大量に放出されます。その結果、慢性炎症性疾患自己免疫疾患につながるというわけです。

実際に、研究チームが、CD153とCD30を介した相互作用を阻害する抗体をつくりマウスに投与したところ、老化したT細胞の増殖、炎症を引き起こす物質の増加、自己抗体の増加などが抑えられることが確認されました。

研究チームによれば、今回の研究成果は、今後、さまざまな老化関連疾患の克服に向けた新しいアプローチになる可能性があるそうです。

最新テクノロジーレビューではこれからも最新のサイエンス、テクノロジーに関する話題を解りやすくお伝えしていきます!よかったら「好き」をよろしくお願いします!!

【参考URL】

京都大学のプレスリリース Microsoft Word - 誤字訂正_(詳細版PDF用)京都大学プレスリリース_老化T細胞が自己免疫病や慢性炎症疾患を引き起こすメカニズムを解明―老化関連疾患克服への新しいアプローチ―.docx (kyoto-u.ac.jp)

免役老化について T細胞の老化と免疫老化 : ライフサイエンス 領域統合レビュー (lifesciencedb.jp)







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