見出し画像

きみのいる世界へ①【春弦サビ小説】


 一体なんで私は7年前にタイムリープしてしまったんだろう?
まるでアニメや漫画のような出来事がまさか私の身に起こるなんて。
 雑貨屋の前でじっと考え込む。普通アニメとかだったら何か事件が起こるよな……そこまで考えてはっとした。
 ついさっき私は健(たける)に話しかけようとしてたんだっけ?……ということはまさかあの後、健の身に何かよからぬことが起こって……それを阻止するために私は7年前にタイムリープしたとしたら?
 恐ろしい考えに私の心臓は早鐘を打った。でも、だとしたら私に一体何が出きるのだろう?
 目眩がしそうなのを堪えて桜の下にあるベンチに座る。
 こういうときは紙に書いて整理してみるのが一番だ。
 バッグからメモ帳とボールペンを取り出す。
 ついさっきまでは私は2024年4月にいた。
 そして現在2017年4月。
 あの駄菓子屋「かどや」の亡くなったはずのおばあさんは生きていてる。
 私は健にあのことを言いかけていた。
 ふと自分の手足を見ると小さく縮んでセーラー服を着ていることに気づいた。
 そうか、私中学生に戻ったんだ。とりあえずこのまま家に帰ろうかな。
 でもふと思った。この世界で私だけがこれから起こる7年分の知識を持ってるとしたら?世界を変えるできる!?……私はぶるぶるとかぶりを振った。そんなことを考えてはいけない。それは悪魔の囁きだ。私はただ健に逢いたいだけなのに。
 そうやってベンチに座って考え込んでいると向こうから足音が聞こえてはっとした。
「おまえ美海(みうな)じゃないか。そこで何してんの?」
 懐かしいの中学生の敦だ。
「美海一人で花見でもしてた?」
 その後ろから夏帆が現れた。あの頃から二人は仲良かったな。
 私はほっとして涙が出そうになった。
「敦に夏帆ちゃん久しぶり~」
「久しぶりってさっきホームルームで挨拶したじゃん」
「そうだっけ?」
「どうしたの美海、泣きそうな顔して」
「うんん。何でもない。それよりさ。健がどこにいるか知らない?」
「たける?たけるって誰?」
「えっ?」
「もしかしてフードファイターのたける?」
「ちょっと、冗談はやめてよ」
 そのあといくら話しても二人は健について知らないと言う。
 いくらなんでも二人して私を騙すなんて酷すぎる。それとも本当にこの世界に健はいないの?私は絶望的な気持ちになって泣きながら家に帰った。
 そして急いで玄関から二階の私の部屋に上がると、机の引き出しから緊急連絡網のプリントを取り出した。
 じっと見てみると……ない!健の名前がどこにも載ってなかった。
 それから修学旅行の冊子を取り出して、目を皿のようにして読んだけど、どこにも健の名前は無かった。
 私は途方に暮れてしまった。
 まさかついさっきまで健と話してたのが夢だとでもいうのだろうか?それも中学から大人になるまでの7年間もの夢?いいやそんなことはあり得ない。
 私はつい先日読んだ物理の本を思い出した。量子力学では多元宇宙論という仮説があるらしい。
 私はどういう訳か健のいない世界線にタイムリープしてしまったのだろうか?引き金は私が言おうとしたあの言葉?
 私が茫然自失としていると机に置かれたnoteパソコンの画面が点滅していることに気づいた。
 そうだ。私、この頃からインターネットで色んな人とオンラインゲームをするのにハマってたんだっけ?
 マウスをクリックすると一通の差出人不明のメールが来ていたので開いてみる。

「こんにちは凪沢美海さん。私はジョン・タイター。2038年の世界からやってきました。あなたもタイムリープを経験したのですね。今この世界にはタイムトラベラーが7人いて、私もその一人です。あなたが2017年の世界にタイムリープしたのは意味のあることなのです。そう2038年に起こる破滅的な危機から人類を救うため、あなたは選ばれました。あなたはこの世界で一つのミッションが与えられています。それを完遂できれば健さんのいる世界線に戻ることができます」

 私は途中まで新手の詐欺メールか宗教の勧誘か、誰かが面白おかしく書いた悪戯メールかと思っていた。でも読みすすめるうち健の名前を見つけてはっとした。
 つまりこのメールの送信者は私と健のいたあの世界のことを知っていたことになる。
 メールには続きがあった。


「残念ながらネット上ではジョン・タイターと名乗る偽物が氾濫しています。そのため私の名前を検索しても意味はありません。またある某国が、タイムリープ技術を盗んで世界の覇権を握ろうと企んでおり、それを阻止しようとする米国との間で暗闘が繰り広げられております。そのため、あなたを危険に巻き込まないため、こちらから暗号化したメールを不定期に送信しますが、そちらからのコンタクトはお控えください。あなたはタイムトラベラーであることを悟られぬよう普段通りに生活してください」

 メールはここで忽然と途絶えていた。
  某国と米国が暗闘?もし私がタイムトラベラーだとバレたら身に危険が及ぶのだろうか?
深呼吸して頭を整理する。――とにかく今はこのジョン・タイターさんを信じるしかなさそうだ。
 今は普段通りに生活して次にメールが来るのを待つ。それしかなさそうだ。私はティッシュを取って涙を拭いた。


 それが私と健が再会するための長い戦いの始まりだった……


※riraさんのこちらの小説の続きです。今2時間ほどで一気に書いたのできっと粗だらけだと思いますが時間なのでこのまま投稿します。
#春弦サビ小説


この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?