「アート思考」を"体感"する リベラルアーツ研修"自円(ZIEN)" トライアルVol.1 開催してみました!
場の魔法
10月某日、月曜日のお昼間の横須賀線に揺られながら小1時間。
着いたのは北鎌倉駅。駅に降り立っただけで感じる緩やかな時間の流れ。
今回の場所を此々にしたのは、研修に至る道中からの非日常感を味わって
いただきたかったからです。
日常のビジネス脳から完全に切り替わるために必要だったのは、
まさにリアル・メタバース空間とも言えるこの空気感・・・。
会場は浄智寺さんの敷地の奥にあるこちら「たからの庭」です。
門=ゲートはこちらとあちらを繋ぐ大切な役割と言われますが、まさに
ここををくぐると更なる異次元の世界に足を踏み入れるような感覚に。
Mix & Matchの重要性
鎌倉の地形の特徴である谷戸の自然そのままの小道の坂を分入って進むと、築80年の古民家アトリエに到着。ここは以前陶芸家が住まわれ、戦前は多くの外国人にも人気があり、昭和21年にはあの藤田嗣治も訪問しディナーセットを注文されたという「鎌倉陶園」があったそうです。
日本家屋の古民家とモダンなランプなどがとても良いMix-and Match感を
醸し出していますが、この感覚も今日の研修にぴったり意図したところ。
実は今回、HRとアートの掛け合わせた可能性を探りたい!という合同会社
事業人の代表、西村晃さんの熱い想いに大共感し、「自円(ZIEN)」研修Vol.1のトライアルをご一緒させていただきました。
そしてお声がけいただいて集まったメンバーは若手起業家の方々。
ここで日本美術の話を聞きながら、アートを楽しみ、哲学対話をする。
自然 x 古民家
若手起業家 x 日本美術
アート創作 x 哲学対話
これをMix & Matchと言わずして何という・・・ほど色々混ざり合ってますが大切なのはそれがバラバラではなくマッチしていること。
混沌とした中に共通する純粋性のようなものがマッチ感を生み出す、まさに
これもアートだなぁ・・・と。
さて、そろそろ研修がスタートです。
プログラムの流れ
①まずは墨を摺る
草木生い茂る谷戸の小道を登り、少し息切れしながらアトリエに到着された
みなさまに、まずしていただくのは墨を摺ること。
小学生の時以来だ!とのおしゃべりも、硯に水を少し垂らし、墨を持った
右手首に少しづつ力を入れつつ摺ること1、2分で無言に・・・。墨の香りは心を落ち着かれる作用があるそうですが、みなさん見事な集中力!
文字も個性の表現でした。
程よく墨が整ったら、手慣らしで描いていただいたのは、自己紹介。
紙面をどう使っても、漢字でも平仮名でも自由、ご自分の氏名を半紙に
描き、出来上がった順から庭にでて、チェックインスタートです。
ひとりひとり、みんな異なる字の太さや配置。
どうしてもそんな風に描いたのか?という一言説明を聴きながら、
すでに創造の多様性全開ぶりに驚きです。
ちょっとした「文字の自画像」。まさに字は体を表す。
この1枚で言葉以上のご自身の個性が表現され、垣間見られました!
古代中国より「書」は芸術の1つだったことを実感。
そして室内に戻り、次は1時間の日本美術の講義です。
②2人の天才絵師、狩野永徳 vs 長谷川等伯
教科書で名前は聞いたことがある狩野永徳。
近年前澤友作氏が購入したことでも話題になった長谷川等伯。
この2人が桃山時代、全く同時期に活動し、天才絵師同士が火花を撒き散らして仕事をしていたことをご存知でしょうか?
自円研修は「アート思考」を体感していただくものですが、
そのために選んだのがこの2人の絵師(アーティスト)です。
もちろんすでに故人、歴史上の人物ですが、素晴らしいのは
作品が残されているので現代に生きる我々にもそれが観られるということ。
しかも400年近く前から、誰かが、必死に守り抜いてきて今に現存する。
その想いも込められた作品達、なわけです。
アーティストというと現代アートだけを想像してしまうかもしれませんが、
むしろその作品自体の価値が美術史上定まっていて、しかもルノワールや
ピカソでもなく我々の祖先であるという意味でも日本美術の絵師の視点や
思考は充分興味深いもの。
とはいえ、死人に口無し。作品のみからそれを洞察するのもかなりハードルが高いので、今回はそれを研究者として極められている学芸員、かつ博士でもある黒田泰三氏にナビゲートしていただくのがポイントです。
まるで大企業とも言える絵師集団・狩野派を率いるリーダーであり、その画法は力強くエネルギーに溢れる天才肌で、飛ぶ鳥を落とす勢いだった全盛期に過労死をしてしまった狩野永徳。
一方北陸・七尾の一介の絵仏師から京都に出てきて少しづつ名を馳せ、
小さな長谷川派を築き、狩野派独占の市場崩しに果敢に挑むために数々の
戦略で最終的に豊臣秀吉からの仕事を勝ち取るベンチャー企業家のような
長谷川等伯。
ビジネスセミナーではありません、れっきとした美術史のお話なのですが、それぞれ生き残りを賭け、優れた仕事をするための二者の視点や観察力、
時代を読み取る力、そこから生み出されるイノベーション戦略などは、
まさに現代にも通用するものです。
黒田先生にナビゲートいただきながら、2人の絵師の思考をなぞりつつ、
絵画を通して五感で体感していただくのがこの講義の最大の目的でした。
③「模写」も体感のひとつ
模写は昔から絵師が必ずやっていたと言われ、その対象物を深く観察し、
描きながらその絵そのものや描いた人までをも体感することができ、
非常に重要な行為の一つです。
長谷川等伯の国宝・松林図屏風は日本人が好きな日本絵画の1位に輝いたこともあり非常に愛されている彼の代表作ですが、今回はその一部を拡大し、
模写にチャレンジしてみました。
じっくり観察し、手を動かしてみること15分・・・。あっという間です。
墨で濃淡や距離感を出すのが凄い!
これって本当に1人の画家が描いたのですか?
見た目以上に激しいタッチ!
一筆で描くのがめちゃくちゃ難しい・・・
などなど、実際に描いてみると、等伯がこれを描いた感覚を体感でき、
時空を超えて等伯との距離感がグッと縮まる瞬間です。
最後にこの松林図屏風の描かれた背景の秘話について、黒田先生の発見と
仮説の設定、そして長年の研究の結果をダイジェストでお話いただき、
この屏風を描いた長谷川等伯にそれぞれ想いを馳せました。
④哲学対話
次は今聴いた先生のお話をご自身でどう受け止め、感じたかについて、
「あなたは永徳と等伯、どちらに共感しましたか?」というテーマで
ゆる〜くみんなで30分ほど対話してみました。
自然に囲まれた中での哲学対話、無理して何か話すのではなく、
心に湧いたことを言葉にするだけで構わない。
なんならテーマに沿った日本美術のことを話さなくてもいい、
好きな趣味のこと、ワインのこと、今の自分のこと・・・etc.
日頃、まず頭で言葉を考えるビジネス上の発言と真逆の行為ですが、
こういう言葉のキャッチボールが意外と贅沢な時間なんですね。
⑤自円を描く
室内に戻り、ついに自円研修のフィナーレ、円相描きです。
どこから筆をスタートするか?
どれくらいの力を入れるか?
何を考えて描くか?
今回は円相そのものが持つ意味は何も説明をしないので、まずは皆さんが
描きたいように描いてもらいます。
ただ今日は日本画家の話をじっくり聴いたし、
模写もしてみたし、無意識下にそれらが影響しているはずなので、
自分の身体の動きに身を任せ・・・。
自円研修も円満○無事終了!
最後は全体シェアです。
みなさんから本当に素敵な感想をいただきました!
最後は今日行った3種類のアート表現、自己紹介・模写・自円を手に持って
黒田先生を囲んでみなさんで記念写真!
人、場所、そしてアート。すべてのパーツが緩やかに混じり合い、信じられないほどの気持ちの良い研修となりました。
みなさま、お疲れ様でした!
そして次回Vol.2は12月に宗教編で開催予定です!
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