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探究学習プログラム#14 -富士見中学校高等学校 高齢者とのコミュニケーションを活性化させるモノコト探究プロジェクト-

プロジェクトの概要

12-2月にかけて、富士見中学校高等学校の中学3年生は、MONO-COTO PROGRAM実践編「高齢者とのコミュニケーションを活性化させるモノコト探究プロジェクト」を実施しました。このプロジェクトは、美術の授業を起点として取り組まれ、特に「デザイン領域」での学びの探究学習が行われました。美術という教科の中で、教科の領域に探究活動を繋げた活動であり、プロジェクトベースドラーニング(PBL)である点が特徴です。生徒たちはデザイン思考を活用しながら、自らのアイデアを提案することを通じて、社会と接続した課題発見・課題解決の経験を積むことを目指しました。

今回は、IT関連企業にお勤めの高坂幹男様からテーマ課題をいただきました。

生徒たちは、チームで課題を発見し、解決するアイデアを考えました。最終プレゼンテーションでは、クラス内発表で選抜されたチームが高坂様に向けてアイデアを提案しました。

プロジェクトの流れ

1. 授業1回目 オリエンテーション

高坂様から、テーマ出題と説明を受けました。高齢社会における高齢者の孤立化は非常に大きな問題であることを生徒は理解しました。今回は、孤立化問題に対して高齢者と他の世代がコミュニケーションを活性化させられるモノコトをデザインします。

オリエンテーションの様子

2. 授業2・3回 チームのワーク時間

生徒たちは、それぞれのチームごとにテーマ課題に取り組み、プロジェクトを進めました。冬休み中に、各自が高齢者に関する調査やインタビューを行いました。1月からの授業では、チーム全体で情報を共有することから始めることで、スムーズにプロジェクトをスタートさせることができました。

3. 授業4回目 中間発表

これまでのチーム活動を、弊社ファシリテーターに共有する中間発表を行いました。現状を言語化することで、チームの状況を客観的に判断することができます。中間発表の実施により、生徒たちは次にする行動が明確になりました。

中間発表の様子

4. 授業5・6回目 チームのワーク時間

中間発表で得たフィードバックをもとに、各チームが作業を進めます。この段階では、各チームごとに進捗状況が異なります。例えば、プロトタイプ作成を進めるチーム、テスト結果から次の方針を考えるチーム、または再度ユーザーインタビューを行って改善するチームなどがあり、それぞれが必要な時間を自由に使っていました。         

5. 授業7回目 クラス内発表会

クラス内の全チームがプレゼンテーションを行い、そこからクラス代表チームが決定するクラス内発表会を行いました。

審査の観点
・デザイン思考プロセス(ユーザー/シーン/インサイト/プロトタイプ/テスト結果)が語られているか?
・審査員的に、インサイトとアイデアの納得度は高いか?
・テーマに対する整合性はあるか?

選出方法は弊社ファシリテーターが上記の審査観点から得点をつける形で行い、1クラス1チーム、合計6チームが選出されました。

6. 授業8回目 最終発表会

テーマ課題を出題していただいた 高坂様 にご来校いただき、選抜された各チームへのフィードバックをいただきました。
選抜されたチームからは、「高齢者専用の通話アプリ」や「日々の生活を記録できるカレンダー&カメラ」などが提案されました。

最終発表会の様子


代表チームのプロジェクトとインタビュー

最終発表をした6チームから代表して1チーム(Aさん・Bさん・Cさん・Dさん)のプロジェクトとインタビューを紹介します。

プロジェクトの概要

代表チームが認知症予防を目的に考案したのは、「日々の生活を記録できるカレンダー&カメラ」です。このアイデアでは、記憶力が低下している高齢者が簡単に生活を写真で記録したり振り返ることができます。朝の散歩や家族との食事、日中の趣味の時間など、日々の大切な瞬間を写真に残すことで、記憶の定着や思い出づくりにつながります。

代表チームが作成したプロトタイプの写真


インタビュー

プロジェクトについて

Q.アイデアが決まるまでの流れについて教えてください。
A 高齢者はコミュニケーション不足によって、認知症が進行する可能性があるという記事をネットで見ました。そのため、認知症予防のために、高齢者が日々の生活を楽しみながら振り返ることができるアイデアを考えました。

Q.中間発表後の流れについて教えてください。
B 中間発表では、高齢者が手芸を通じて子供と交流するアイデアを発表しました。しかし、フィードバックで「高齢者全員が手芸が好きなわけではないし、無理に参加させられても楽しくないかもしれない」という意見をいただきました。このフィードバックを受けて、新たにアイデアを考え始めました。その後、たくさんのアイデアを出しましたが、全員が納得できるものがなかなか見つかりませんでした。チーム全員が「これまでにない斬新なアイデアを出したい」という共通の目標を持ちながらも、なかなか思いつかず苦戦しました。

C アイデアを出していく中で、紙のカレンダーにチェキのような写真を貼り付ける案が出ました。しかし、デジタルの方が使いやすいのではないかという意見から、カレンダーとカメラの機能を合わせたアイデアが生まれました。このアイデアは既存にはないもので、また認知症予防に役立つことからチーム全員が納得しアイデアが決まりました。

Q.プロトタイプテストの流れについて教えてください。
D アイデアが決まった後、最初に粘土を使ってプロトタイプを制作しました。完成した後、各自の祖母にテストしてもらいました。その結果、「写真を撮るためにお出かけしそう」「孫と一緒に写真を撮りたい」といったポジティブなフィードバックをもらいました。一方で、「3日坊主になりそう」という意見もあったので、その点を改善しアイデアを進めることにしました。

中間発表の様子


プロジェクトを通して感じたこと

Q.プロジェクトを通して楽しかったことについて教えてください。
C チームでアイデアを考えることです。皆が異なる視点を持っていたため、多様な意見がありました。他のメンバーの意見からさらにアイデアを膨らませることで、最終的なアイデアを考えることが出来ました。

B クラス内のプレゼンテーションです。私たちのチームは自信があったので、堂々とアイデアを発表することができました。また、他のチームの発表を聞くことで、効果的な伝え方について学ぶことができました。翌日には最終発表会があったため、時間は限られていましたがギリギリまでスライドを修正し続けました。

Q.プロジェクトを通して難しかったことについて教えてください。
 A チームでの合意形成です。チームメンバーがそれぞれ異なる考えを持っていたため、1つの方向にまとめるのが難しかったです。何度も話し合いをしていく中で、最終的にはチーム全体が満足できるアイデアを出すことができました。

Q.プロジェクトを通して学んだことについて教えてください。
A 客観的な視点を持つことです。中間発表までは、自分が想像している高齢者でアイデアを考えていました。しかし中間発表で、高齢者の視点を考慮していないというフィードバックを受け、想像ではなくユーザー自身がどう思うかを意識し始めました。このような客観的な視点を持つことが、ユーザー自身が楽しめるようなものを作るきっかけになると思います。

D チームの話し合いでは、反対の意見を出すことも重要だと学びました。中間発表までの期間、チームのアイデアにはあまり賛同していなかったにも関わらず、それを口にせずに進めていました。しかし、中間発表のフィードバックで落ち込んだ経験から、以降は自分の意見を積極的に発言するように心がけました。その結果、意見がまとまり、クラスの代表に選ばれることができました。


Q.今後、プロジェクトでの学びを活かしたいことを教えてください。
 B 日常生活でもユーザーの立場に立つことを意識したいです。ユーザーが何を求めているのかを常に考える習慣を身につけたいと思っています。この視点を持つとで、私たちの生活をより良くするためのアイデアや改善点に気づくことができると思います。

D 自分は案を出すのが得意ではないですが、今回はクラスの代表に選ばれたいという気持ちからたくさん意見を出すことができました。これからも、積極的に発言していきたいです。また、今後もチームやグループの活動において、自分の考えを共有することで他の人と意見をまとめていきたいです。

最終発表会の様子

探究授業について

Q.教科授業と探究授業の違いを教えてください。
C 探究授業では、教科授業とは異なり、学習が授業の中で完結するだけでなく、その成果を最終的に外部に発表する機会があります。このような発表の機会によって、学習が授業の枠を超えて継続していると感じます。今回のプロジェクトについても、授業は終了しましたが、高校生になってもプロジェクトを継続していく予定です。

A 探究授業では、自分の意見を自由に発言できる環境があります。通常の授業では抑えてしまうような意見も、探究授業では積極的に発言することができました。このような経験は、将来の人生においても役立つものであり、普段の生活では得られない貴重な経験だと思います。今回の経験を大切にし、今後も積極的に取り組んでいきたいです。

Q.デザイン思考を学ぶ意義について教えてください。
B ユーザーの立場に立って物事を考えられるようになることです。中間発表でフィードバックをもらい、高齢者の立場に立ってアイデアを考える力を養うことができました。この経験から、他者の視点を理解し、ユーザーの本当の課題に応えることの大切さを学びました。この考え方は、プロジェクトだけでなく日常生活でも役立つと思います。

D アイデアを形にすることはデザイン思考の重要な要素だと感じました。頭で考えているだけでは、チームメンバーがそれぞれ異なる想像をしていたり、誤解が生じることもあります。形にすることで、抽象的なアイデアが具体的なイメージとして共有され、チーム全体が同じ方向を向いて進むことができました。

Q.これからの探究活動への意気込みをお願いします!
A  今後はチームでアイデアを磨き、最終的には企業の方にアイデアを提案したいと思っています。社会と接続できる貴重な経験を通して、たくさんのことを学び成長したいです。これからも頑張ります!

最終発表会の様子

記事に関する詳細は、弊社担当までお問い合わせください。
・プログラム:https://mono-coto-program.com/
・イベント:https://mono-coto-innovation.com/
・Facebook:https://www.facebook.com/curioschool
・担当: s-daimon@curioschool.com(大門)





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