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優しい人【読書感想文:瀬尾まいこ 夜明けのすべて】

前回の読書感想文はこちら↓

本を一冊読み終えた。
夜明けのすべて、という作品だ。

私は原作があるものは、映画が公開する前に本を読まなければと思ってしまう。映画を観に行こう詐欺ではなく、本当に観なければいけないと自分の背中を押すためだ。

今回の作品も、読み終わった後、絶対に映画館に行くと決めた。

最近はとか、時代的にとか、あんまり言いたくないけど、人は人が自ら生きづらい世の中を作っている気がする。現に、精神疾患や様々なマークが付くものを持つ人が、目に見える病よりも多くなってきた気がする。
私はそういった症状はないけど、考え過ぎだと言われることもある。大体の人間は自分も他者も考え過ぎだと思った経験があるだろう。

それを語っている作品がこれだ(以下作品はAと略す)。


優しい人に囲まれている時、自分はなんて優しくないんだと感じる時がある。Aはまさに、この感情に塗れていると感じた。

自分はこの人達のことを本当に優しいと思っているけれど、私はこの人達の為に何か出来ているのだろうかと考えてしまう。そもそも何か返せるような人間なのか?とも考えてしまう。

でもそんなことは相手からすればどういうこと?と思われる小さな小さな塵。でもAは、そういう物に焦点を当てている。

周りからすれば気にしなくていいのに、自分を責めるような考え方をしてしまったり、いつもやれている行動に、急に自信が無くなったりすることを一つ一つ丁寧に書かれていた。

寒いから靴下を履く。
天気が良いから外に出る。
お腹が空いたからご飯を食べる。

こんな小さな行動を、したくても出来ない人がいるのかもしれない。

意味が分からないんだけど、で終わらせるのはある意味可哀想な気がする。
そこに目を向けることで、自分が不可能だったことを可能にする喜びとか、不可能になってしまったことがどうして悲しいのか苦しいのかを考えるきっかけになるから。

それでもそんなちっぽけな事で悩むなんて、と思う人の方が多いし、ちっぽけな事で悩んでる人も、ちっぽけな事で悩んでるなとまた悩みを増やしてしまう。
でも人間なんだから、大きくても小さくても自分が悩んでいることに真剣に向き合うのも面白いと感じてもいいんじゃないかと思った。


人間は元々複雑な生き物で、本能と理性という混沌の中過ごしている。この行動を取ってしまったら周りにどう見られるか、つい言ってしまった言葉で誰がどう傷付いてしまったか。そんなこと野生の動物達は考えもしないだろう。
でも人間だから考えてしまうし、考えられるのだと思う。それを辛いと思うか、幸福だと思うかは人それぞれなのかもしれない。

Aを通じて、小さな幸せでも喜べること、そこから何かに気付けることは、とても素敵な事なんだと気付いた。

自分は優しくされたら優しく返せるような人間になりたい。

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