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ゼロはやっぱりプラスだった(夜明けのすべて/瀬尾まいこ)

「そして、バトンは渡された」で有名な瀬尾まいこさんの作品。
素直に面白い、と感じた一冊。久しぶりに読み始めから終わりまで一気に読み切り、読み終わると生きるのが少し楽になる。
自己肯定力が低くなっててモヤモヤしてる時に読んだので、少し救われた気持ちになった。


自分に勇気をくれる人との出会い

自分に合いそうな相手に出会った時は、感覚的になんとなく分かる。
この人、笑いのツボが一緒だ、とか、たぶん私が言った言葉に対して欲しい言葉で返答してくれるな、とか。漫才のボケとツッコミに近いイメージを持っていて、自分がボケたらちゃんと突っ込んでくれるし、相手のボケも私は気づいて突っ込めそう、という感覚。
そういう相手に出会った時、私は一気に気を許してしまって、どんどん話しかける。相手にどれくらい気の許した言葉をかけて良いのか、相手が傷つかない範囲を探りながら、色々な言葉を投げかける。こういうことをする相手は、得てして異性であることが多いのだが、恋愛関係になることはほとんどない。

この本の登場人物である藤沢さんと山添くんはお互いに全く興味はないが、それぞれの抱えている病気(パニック障害、PMS)を介して、徐々に仲が深まっていく。最後まで恋愛に発展することは全くないが、お互いがお互いの見えないところで少しずつ影響し合って、自分の人生を一歩前へと進めていく。

自分が気を許せる友人は、そう多くはない。だからこそ、出会えた時は、嬉しい。自分の嬉しかったことを報告したくなったり、相手のことを思って行動を起こしたりする時、自然とワクワクしてきて、背中に羽が生えたような気持ちになる。二人のやりとりは、自分の中のネガティブな言葉がとれて、やりたいことはなんだってできる!、と勇気出るあの貴重な気持ちを思い出させてくれる。


ゼロという関係

数字の0(ゼロ)がプラスであるか、マイナスであるかについて、真剣に考えたことがある。数学的な位置付けというよりは、自分の中でその数字をどう捉えるか、考えたくなったのだ。
結論からすると、マイナスでないことは基本的にプラスだと感じたので、私はゼロをプラスだと考えることにした。

自分のことをポジティブに励ましてくれたり、好きだという愛情表現を伝えてくれる人は自分にとって大切だし、勇気をくれる存在である。一方で、ネガティブな言葉をかけられたり、自分の勇気をくじかれることを言ってくる人は、一緒にいると結構辛い。
藤沢さんと山添くんの関係は、そのどちらでもなく、まさしく”0”に近い関係だと感じた。お互いが思っていることを、気を使わずただ口に出している。それだけなのに、それぞれが少しずつ自分のことを肯定できるようになり、地に足をつけていくような感覚で一歩、一歩と前に踏み出していく。ポジティブな声はもちろん勇気をもらえるけど、マイナスにならない表現、ただそこにいる自分を肯定してくれる感覚は、気づかないうちに自分の背中を押してくれているのだと気付かされた。

読み終えた後、自分の好きな友人に連絡が取りたくなる一冊。



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