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横浜コリアンタウン

遠い昔、黒船が大挙して来航した港や、山手の外国人居留地、中華街など、
街の随所に異国情緒が漂うことで知られる、横浜。
あまり知られていませんが、
韓国の店が多く並ぶコリアンタウンもあるのです。
しかも二つも。

一つはせんべろ楽しい野毛の隣りの福富町。
もう一つは横浜橋商店街です。
東京の新大久保や川崎のように観光地化されていないのであまり知られていないのと、特に福富町は、(風俗色強めの)かなりディープな夜の街の一角にあるのも相まって、まるで日本ではないような特有の雰囲気に満ちている場所です。
夜一人で歩くのは正直、ちょっと怖いけれど、
その物騒な雰囲気ごと、不思議な魅力を持つ街。

福富町には数々の韓国料理レストランのほか、
専門の食料品店もいくつかあります。
えごまや生の唐辛子などの素材、チャプチェやヤンニョムチキンなどの惣菜、調味料、各種キムチ、乾物のほか、酒や飲料、DVDや食器、生活に必要なあらゆるものが揃えられています。

一方、横浜橋商店街にはキムチ屋さんが多く並び、ソルロンタンの美味しい食堂や、驚くほど専門的な精肉店も。
韓国人に限らず、アジアのさまざまな国の人が行きかっていて、リトルアジアといった風情。
ここを歩く人の半分は中国人と韓国人ではないかと思うほどに外国語が飛び交っている、なんだかカオスなアーケードの一本道です。 

ここはもともと、噺家の桂歌丸さんが愛したことで知られる、昔ながらの商店街。
昭和の庶民の街といった風情の合間に、
韓国の店がうまく混ざり合っています。
さらに中国の勢力も次々拡大中。
伊勢佐木町の延明という中国東北地方の料理店の、スパイシーな惣菜店もなかなか魅力的です。

明らかに日本のそれとは違う佇まいで、商品の説明札がここまで潔く中国語の魚屋さんも。

ここに行けば必ず、ニンニクたっぷりの韓国料理を作りたくてたまらなくなる場所です。

たくさんある食材店、品揃えや雰囲気もふくめて
どこが自分にいちばん合うか確かめるために、
少しずつさまざまな店で調達します。
もっとも、話している日本語がよくわからないところもありますが。

今日、えごまの葉やアミの塩辛などを買ったお店のおじさんは、
眉間にしわがよっていて、
最初はすこし不機嫌なのかな、と思ったのですが…。
包みながら、オキアミの塩辛の美味しい食べ方を実に親切に教えてくれました。
そこで調子に乗っていろいろ聞き、話をしていたら、
いつしかケランチムという韓国の茶碗蒸しの話になり、
そのうちに、無性に食べたくなってしまいました。

無愛想そうで実は話好きなそのおじさんのおかげで
今夜の晩ご飯のメニューは、鶏肉コリアンに。


まずは、ケランチム。
だし代わりに、鶏のひざ軟骨をひたひたの水で煮込んで、
昆布だしか水2カップを加え煮てスープを作り、
濃い目に調味してから溶き卵6個をそそぎ、
火を弱めて汁気がなくなったら優しくかき混ぜ、ふたをして出来上がり。
残りものの枝豆をむいて加えました。

直火ですから、卵とじ感覚で気軽に作れますね。

仕上げには、アミの塩辛と刻みわけぎのごま油和えをのせて。
これはおじさん直伝の食べ方です。
万能ねぎだとちょっと風味が弱いので、わけぎにしました。

ケランチムは出来立てがいちばん。
食べる直前に作るといいですよ。


そして、色あざやかなスイスチャード(不断草)のチャプチェ。
青梗菜ともやし、ねぎの白い部分も加え、鶏せせりといっしょに仕立てました。

スイスチャードはほんの少しほろ苦い小松菜のような味で、
ペペロンチーノに加えたり、色を生かしてサラダにも。
色があせてしまいがちなので、ゆでるより炒める方がお勧めです。
チャプチェはやっぱり、少し黒っぽい韓国のさつまいもの春雨がいちばん。もちっとしています。


えごまとレタス、パクチーを添えたぼんじりの網焼き。
コチュジャンと、先ほどのねぎ和えアミ塩を添えました。
これにキムチやチャンジャを加えて巻いて食べましたが、
そんなに辛くないのに、びっくりするほど汗がでてきました。

これぞデトックス、と言う感じ。
ふだん代謝が悪く、サウナに入ってもなかなか汗が出ないので、びっくりしました。
元気になりたくなったら、
またあの不機嫌そうなおじさんの店に行こうかと、思ったくらいです。



それにしても・・・
そんなに大きな商店街ではないのに、
土地柄か、パチンコ店の両替所が何箇所も、隠れるようにありました。
その換金のために並ぶたくさんの人たち。

歴史を感じる酒屋に昔からある角打ちで、
明るいうちから酒と肴を嗜む、常連らしきおじさま方。

夕方の商店街にはそぐわない、宝石だらけの異様に派手な格好の高齢女性。

開店前の路地裏のスナックのカウンターでくつろぐ小学生の背中。

人種だけでなく、さまざまな人生も、行くたびにここで垣間見ることになります。
それが、商店街ならではの魅力ではないでしょうか。

実は、わたしの幼少期の原風景とこの界隈、どこか似通っているようで、
住んだこともないのに、なぜか郷愁を禁じ得ません。

人にもいろいろな表情や感情があり
けして他人がひとくくりに決め付けられないのと同じように、
幸せや不幸せ、あらゆる物事も、
それぞれの目線や受け取り方で違うのでしょう。
…なんてことを思うのも、
もしかしたら、レジに向かって一方通行のスーパーマーケットでは感じることのない気持ちかもしれません。
いくつもの店の袋を提げて往来を歩き、たくさんの人とすれ違いながら、
そんなことをつらつらと、考えていました。


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