目覚ましの森【小鳥にまつわる詩を三篇】
ふと、小鳥の氣配を感じることがあります。
高い空にではなく、すぐそばに。
氣がついたら、ぴちゅんとすましてそこにいる。
そういう小鳥は、いつもなにかしら、わたしに言葉を運んできます。
わたしをみあげて、ぴちゅぴちゅ、にぎやかに語るのですが、なにしろ小鳥の言葉なので、そのまま書くのは難しい。
「ちょっと待っててね」
わたしはパソコンを開き、小鳥のさえずりに耳を傾けながら、それを、人の言葉に翻訳していきます。
かたかたかたかた。
わたしはキーボードをたたき、小鳥はぴちゅぴちゅ、話を続けます。
「ええと」
わたしのパソコンを打つ手は、頻繁に止まります。
それをどんなふうに「人の言葉」に訳したらよいのか……よくわからなくなるからです。
ぴちゅ、ぴちゅる。
ぴり、ぴりる。
キーボードを手探りしながら……もしかして本当は、それを翻訳する必要なんてないんじゃないかな、と、よく思います。
だって、小鳥の言葉は、既にとても澄んでいて、そこに存在するだけで十分美しいからです。
ぴちゅる、ぴちゅる。
ぴちゅる、るり、りるる。
るらるら、るる、るりり。
ぴちゅる、りい。
わたしが訳した言葉より、小鳥の言葉はたぶん何倍も澄んでいる。
でも、だからこそ、わたしは小鳥の言葉に関わりたいのだと氣がつきます。
その透きとおった言葉に、わたし自身がふれるために。
そんな物思いにふけり、わたしがキーボードをまさぐる手をとめているあいだに、小鳥は、開いた窓から空へと──飛びたっていきました。
「あ……」
いってしまった、と思ったけれど、どうすることもできません。
わたしはパソコンに向かい、小鳥の残した余韻が消えないうちに、またかたかた指を動かします。
途中、何度も手が止まるけれど、上手にできているかはわからないけれど──小鳥の声を、思いだし、思いだし、打ち込んでいく、その半透明な時間が好きです。
清々しい6月の空から、久しぶりに小鳥が遊びにきてくれたので──そのおしゃべりを、noteにそっと書き留めました。
小鳥にまつわる詩を三篇。
ご笑覧くだされば幸せです。
6月の空から舞い降りた小鳥の歌で──クロサキナオさんの企画に参加させていただきます。
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☔️この記事はクロサキナオさんの企画参加記事です☔️
#クロサキナオの2024JuneJaunt
https://note.com/kurosakina0/n/nc219c459e047
こちらの記事に、数週に渡り、計6つのコングラボードが届きました。スキをくださったみなさま、本当にありがとうございました!
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