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『装甲悪鬼村正』感想

 どうもです。

 今回は、ニトロプラスより2009年10月30日に発売された『装甲悪鬼村正』の感想になります。ニトロプラスが創立10周年作品として打ち出した作品。少し古いにも関わらず、現在ではちゃんとWindows10対応版がパッケージ・ダウンロード共に販売されております。有難い限りですね。ゲーム内容に変更は無いので、どれを購入してもいいとは思いますが、パッチ当てるのも面倒ですし念には念をと云う事で、Windows10対応版を購入しました。

 主題歌「MURAMASA」はシブくて良いですねー、このシブさは好きよ。和楽器(尺八?)も、バンドサウンドも、小野正利さんの御声も。あと時代を感じる。

 本作をプレイしたのは、Vtuber餅月ひまりちゃんの動画がキッカケでした。「APEXがぬるぬる動くやつ」の言い方好き。

 調べたら雰囲気も良い意味でエロゲっぽくなくてカッコイイし、結構長尺で名作との呼び声も高かったので、これはやるしかないなと。友人も未プレイだったので、タイミング合わせて感想言い合いながらモチベーションを保てたのも良かったですね(結構大事)。

 では感想に移りますが、受け取ったメッセージと、キャラの印象を書けたらなと思います。こっからネタバレ全開なんで自己責任でお願いします。



1.受け取ったメッセージ

""善悪相殺""

 本作が描き切った、この概念について書く以外はやはり有り得なかったので、これについて色々まとめて、感想を添えられたらなと思います。

「善悪相殺。
 この武を世に布く」
「誰もが、それこそ闘争の真実なのだと知り、認め……
 忌み嫌うようになるまで」
「地上から戦いが絶えるまで」

湊斗景明ー『装甲悪鬼村正』

 本作が―湊斗景明が出した結論としては、上記でした。物語的にはこの結論しかやっぱ無いよなと思います。もう今更引き返せないですから。悪鬼にならざるを得なくて、その彼の生き様を一方的に肯定も否定もできない。村正と共にこの道を行くしかない。そして、本人も言っていましたが、それを自覚し認め、覚悟を確実に固めるまでの物語だったのだと思います。

 簡単に言ってしまえば、人を殺すと云う覚悟が彼にはできていなかった。だから、雪車町に何度も何度も詰められた。彼の言い分も理解できる(寧ろ景明より筋が通っている)のが何とも皮肉で、辛かったですね。    

 人を殺すと云う覚悟。もう少し深掘ってみます。ヒントになるのは魔王編で夕日をバックに村正と一緒に戦う事を決めたシーンでの言葉と、村正と邂逅した稲城忠保からの言葉でした。

「善悪相殺。
……成程、人を殺すという事は、善と悪を諸共に断つという事だ。ようやく理解できた……」
「村正。お前は正しい」
《…………》
「殺人はなべて悪鬼の所業」
「例外など無い」
「あらゆる殺人に正義は無い」
「戦いに正義は無い」

《……御堂……》
「村正。お前がそれを教えてくれた」
「お前ではなく、他の劒冑と結縁して、この二年を戦っていたら……
俺は今頃、自分のことを英雄とでも思っていたのかもしれん」
「世の人々を救うために悪と戦いこれを討つ、正義の武者だとな。そうして、銀星号を倒した暁には、六波羅をも打倒しようなどと考えていたか……」
「想像するだに怖気の走る話だ。独善の化粧でしかない正義に酔い、争乱を引き起こすなど……」
《…………》
「村正。俺に正義は無い」
「その真実を決して忘れたくない。だからお前が必要だ」
「お前を捨てて別の劒冑を取れば……善人は殺さず悪人は殺すという独善の道を、俺は選ぶことになる」
「世に死んで良い人間と死んではならない人間とがいて、自分にはその区別をする権利があるのだと認めることになる……」

《……》
「俺は厚顔無恥な英雄になどなりたくはない。世間の人々がそんな俺を見て、正義の戦いがあると信じ、後に続こうとする――などと、馬鹿げた始末になるのは尚のこと御免だ」
「それこそ災禍というものだ」

湊斗景明ー『装甲悪鬼村正』

「雄飛の命と引き換えにされたなにかのことなんて、僕は知りたくない」
「でもお姉さんは……その意味を大事にして、守ってください。せめて」
「あなたはそのために、雄飛を犠牲にしたんですから」

稲城忠保ー『装甲悪鬼村正』

 簡潔にまとめると、以下の2つ。

①殺人に正義は無く、全て悪鬼の所業であること。
②そして、その犠牲となった意味を大事に守っていくこと。

 このたかが2つ、されど2つの真理を心に刻み、迷いから逸脱するまでが湊斗景明と村正に必要な覚悟だったのだと思います。加えて、地上から戦いが絶えるまでは絶対に(死を含め)止まる事も許されない。何故なら、彼が歩みを止めてしまった時点で、それまでの覚悟が…所業が…犠牲が…全て無意味同然になってしまうから。何とも辛い話ですが、でももうこの道しかないんですよね。ここまで来てしまったら。本当に泣けてくる。

 彼だってこんな道を出来る事なら選びたくなかった。だから、殺人を繰り返す度に心のどこかで迷いがあったし、感情が揺らいだ。村正だって彼にこれ以上この道を強いる事はしたくなった。でも、彼と離れ離れになる事は嫌で一緒にいたかった。お互いに引き返したくても引き返せない。でも、そんな関係だからこそ、この2人は関係は唯一無二で強固なモノになったのだと思います。また、この苦悩して、罪の重さを噛みしめる姿が紛れもなく湊斗景明が湊斗景明たり得る魅力だった様にも思います。

 何が彼をこんな人間にさせたのか。色々あるとは思いますが、一番はもう湊斗統でしょう。彼女の以下の言葉がかなり印象に残っています。

「景明に不殺を命じたのは、武人としての事。 厳しいのは当然だね……」
「何?」
「戈を止めると書いて武の一文字。 それが、楽なもんなわけはないさ」
「景明は敵の命じゃなく、悪意を断つために戦う必要がある。口で言えば一言でも、やるとなったらどれほど苛酷か……あんたに言われるまでもない」
「諸葛孔明は蛮王の孟獲を屈服させるために七度勝って何度許した。
それだけのことを、景明もしなくちゃならないだろ」
「…………。正気か、統」
「寝言にでも聞こえるかい、本家?
でもそれくらいしないと心の刃は折れないだろうね……鉄の刃は一度で折れる。けれどそいつは武じゃあない。ただの力だ」
「力は次の戦を呼ぶばかり。正しい武だけが戦を終わりにできる。
本家。あんたとわたしが景明に命じたのはそういう事だよ」
「死ぬに決まっておるぞ……」
「死は武人の運命のうち。景明にはその覚悟がある……」
「……立派な言い草だ。武人の鑑だな」

湊斗統ー『装甲悪鬼村正』

 彼女の唱える武は、1つの正義の形でした。美しいです。それを景明に託し、景明もそれを強く信じてきた。だからこそ、身体に沁みついて、どこまでも呪いの様に付き纏ってしまったのだと思います。
 村正を手に取り、統の命を自らの手で奪った時点で彼女が託してくれた道は残念ですが、もう潰えてしまった。この時点で彼は違う覚悟を固めなくてはならなかった。でも、彼にとって彼女の存在はフラッシュバックする位には大切だから、そんな簡単には切り替えられなかった訳です。この過去編を見てからは、彼に同情せざるを得なかったですね…。

 また、彼は光を絶対には殺せなかった。光は妹ではなく、実の娘だったみたいで想い入れに差があるのかもですが、家族である事に変わりはない。そんな家族を殺そうと覚悟を決めようとしても悩んでしまって無理で。
 では、光をどうするか。光は悪くない…悪いのは自分。"善悪相殺"の戒律を発動する。まさかここで散々迷いの種となった"善悪相殺"を以て、湊斗景明が悪鬼である事と、彼から光に対しての愛の実在を証明して魅せたのは見事と云う他無かったです。物凄く皮肉めいているのに、何だか救われた感じがしてしまい、あの瞬間の感情はこれまで感じた事のないモノでした。

 そろそろ、まとめます。
繰り返しになりますが、これ程までに苦悩する姿がやっぱ湊斗景明だったなと思います。"善悪相殺"と云うテーマもブレなかったですが、それに説得力も持たせる、彼の苦悩する姿がブレなかったのは本当に素晴らしかった。人間悩みを放棄する方が簡単です、どーでもいいやと。でも彼はそうしなかった。そうできない善人だった。善人だったからこそ、悪鬼にならざるを得なかった。手に掛けた命の数だけ、その人生と向き合ってきた。それを本作は何よりも伝えたかったのではないかと思います。

 当たり前ですが、悪を働いていると云う自覚無く悪を働いている人間が一番マズイです。そして、視点が変われば悪は正義にもなるし、正義は悪にもなる事も含めて。でも大人になればなるほど、こんな簡単で大切な事を忘れがちな世の中になってしまっているとも思います。非常に残念ですが。
 彼程とは言わないまでも、ちゃんと悩み抜いて、善悪の自覚を持って行動し、覚悟を決めて、自分が選んだ道を進む事が大切だと思わされました。

 受け取ったメッセージは以上になります。何か少しでも感じ取って頂けたり、考えのヒントになっていたりしたら幸いです。



2.綾弥一条(英雄編)

 一条は景明が成りたくても成り得なかった姿だったのだと思います。だから"英雄編"と云うサブタイトルも凄いしっくりくる。正義の裏側にあるモノを見て、感じて、彼が何で悩んでいたのかもちゃんと理解して。正義の末路を目撃しても、”それでも正義はある”と、父の教えを胸に彼女は証明し続ける事を決めました。これもまた、1つの正義の形であり、景明とは違う覚悟ですね。ここまで来たら正義を貫き通すしかないぞと。

 正義は大義には成り得ず、正義こそ戦いを生むと、そもそも正義を認めてくれなかった景明。そんな彼が敗れる結末も、彼女の正義を証明する様なエピソードでした。あの戦いの一条と正宗の限界突破感好き。

 彼女は自身が犠牲となる事を厭わず、躊躇いが全く無かった。身体も精神も。何なら手を汚してもブレる事なく、寧ろ鋭利さを増していきました。元々タフではあるけれど、ここに躊躇いが生まれなかったのは、父に因って刷り込まれた魂に加えて、憧れだった景明の存在があったからこそでもあって。"戦わねばならないなら、戦う"と。彼女を突き動かしていたのは紛れもなくこの精神。これをずっと感じていたので、エピローグで村正と共にこの道を歩む事になったのは、何と云うか凄い痺れました(語彙力)。

 戦いをなくし、平和を目指す処は景明と同じだけれど、彼とは対極の道で進む。悪にも善にも真っ直ぐで、真正面から否定も肯定をもしてくれる彼女は美しかったです。そこに年相応の未熟さと可愛さを添えて、輝きを保とうとする感じは誰もが惹かれてしまうポイントだった様に思います。
 口上「世に鬼あれば鬼を断つ。世に悪あれば悪を断つ。ツルギの理ここに在り。」の時の立ち絵と、美人さんな大人姿が堪らなく好きです。


3.大鳥香奈枝(復讐編)

 香奈枝は初見から只ならぬ雰囲気を醸し出していました。糸目もそうさせるし(笑) 何と云うか、根っこが全く視えない、見せてくれない人。で、明らかになったのは、嫌々ではなく、好き好んで殺人をする女性でした。彼女自身はそれが普通だと思っていたけれど、悪魔と呼ばれ続け自身が歪んでいる、異常な人であると理解する。でも、理解はしたもののどうしていいか解らない。だから、少なくとも殺人が正当であるとされる"復讐"を貫こうとする。それが紛れもなく殺人(悪)だと解っていても。この点で景明とは違ったベクトルでこうするしかないと、苦悩していた人物でした。

 直向に正しい復讐をする中で、景明から感謝されたあの瞬間。彼女の中の歯車が狂い崩壊し始める。物語的にもあそこが個人的にはピークでした。彼も断罪を望んでいたし、きっと彼女もこのどうしようもない苦悩をどうにかしてくれる瞬間…人物を深層心理では求めていたのだと。絶対に理解はされないから曝け出す事もできずにいた、その辺りが何とも不器用な人でした。

 罪人と断罪者。景明と香奈枝がお互いに苦悩を理解し始めて、彼にとっての"正義"と、彼女にとっての"復讐"で全然違うのに、そこに至るまでの人間性と云うか、実は同様の感情原理で動いていたのだと着地する展開は見事でした。また、菊池が殺された事で、景明も香奈枝に復讐する立場が出来上がってしまったのは本当に憎い(褒めてる)。お互いに復讐し合う関係であるが、香奈枝だけがそれを理解し、景明にとっての彼女自身の存在価値を優先させたのは、彼女のせめてもの想いだったのでしょう。無常感溢れる、メリーバッドエンド的なラストとても良かったです。

 そんな愛や憎しみの様な、単純明快な感情の悍ましさ、強固さを訴えかける物語でもあったのだと思います。人情深い香奈枝と云う人物を通して。疑いの余地が無い感情ほど強いモノはないですね。あと、彼女の狂った叫び声も良かったけど、それ以上に厨二心擽る服の構造が好きすぎました。


4.足利茶々丸(魔王編)

 茶々丸はビジュアルもだけど魅力的な部分が多かっただけに、何か色々勿体無かったキャラでした。勿体無く視えてしまったが適切か。彼女の√自体が村正√のサブ的な位置付けにされてるので、仕方が無いと云えば仕方ないのだけれど。劔冑時の立ち絵はダサイですし、これから!って時にエンドロール流れて終わったのは嘘だろ⁈って声出た程ショックでした(笑)

 彼女はずっと我欲の為だけに動いてきました。ちゃんと実行に移せるだけの能力と頭脳も兼ね備えていて。大それた事は要らなくて、自身の苦痛をどうにかしたい。この苦痛から逃れる為に景明の愛情が欲しい。その為ならば例え相手が世界であろうと怯まない。ここだけで彼女の苦痛が如何程なのかは想像に難くないですね。生い立ちよりもずっと説得力を個人的には感じました。また、分岐点での彼女の以下の台詞は印象に残っています。

《お兄さん、迷わないで。湊斗光が大切なら守り通せばいい》
《それで世界が犠牲になるから何だってんだ。世界のためって理由がついたら、何もかも諦めなきゃいけないのか?》
《世界が他の何かを犠牲にするのは許される、けど他の何かが世界を犠牲にするのは許されないってのか!?》

足利茶々丸ー『装甲悪鬼村正』

 この言葉を掛けたのは景明を想っても少しはあると思うけど、それ以上に自分の為。世界を天秤に掛ける事になる自分の願いを貫く為に他ならない。易々と犠牲や敵を作れるし、精神汚染してまで景明を手に入れるし、そしてこれらの行動と願いを理解して欲しいとも想っていない。どこまでも只々自分の為だけに動いている自分を自分で支える言葉だったと思います。

 全肯定は出来ないけれど、とても人間らしい娘だったと思います。普段は軽々しく可愛いらしい感じなのに、狡猾で策士な二面性な処とか。先述した我欲を貫く処も。特に欲は大事。人間にあって神に無いものが我欲であるからこそ、神を否定する事で自身を肯定しようとしていたのかもしれません。
 聞きたくもない神の声が耳に入る中で、景明の声だけが唯一"特別"に聴こえて。この"特別"以外は余計なモノとする思い切りの良さ。だからこそ、彼に"一目惚れ"だった告白に納得せざるを得なかったのも良かったです。
 魔王編の最期の言葉でも、"呪い"と云う言葉を使って、自身の存在(我欲)を忘れてはならないと伝えたのは彼女らしかったですね。


5.村正(悪鬼編)

 千子右衛門尉村正三世。彼女が本作で一番ヒロインしてた。好きです(直球)。蝦夷の姿と、何より須本綾奈さんの声が本当に…良かったです。彼女は健気で一途で、戦い以外は未熟で疎い部分も結構あって。彼に全てを委ねる時もあれば、絶対に引かない位に強気に出る時もある。景明とは本当に色々あったけれど、どれも必要不可欠なエピソードで、お互いに心を打ち明けながら、徐々に情も信頼も増していくのがとても良かったです。どんどん夫婦漫才さながらの掛け合いになっていって、マジで微笑までした。

 悪鬼編での以下の言葉なんかは等身大の彼女を感じて印象に残ってます。

「生きてたっていいじゃない!何もできなくたってっ」
「なんで貴方は、その程度にすら自分を許せないのよ!」
(中略)
「生きている意味がないって思うなら、逆に考えなさい!
こうして生きているだけで意味があるんだ、って!」
(中略)
「この世の中、責任の重さに耐えられくて逃げたり忘れたりしながら生きてる人は一杯いる! 貴方の理屈だと、そういう人達は皆生きる価値なんか無いってわけ!?」

村正ー『装甲悪鬼村正』

 彼の苦悩に対して、もっと楽に簡単に考えろと(笑) 人間悩めば悩むほど、考えは飛躍し抽象化していくモノで。景明もその例に漏れず。そんな彼を止めて(支えて)くれる存在は、彼を誰よりも理解している彼女しかいなかったんだなと。彼女が言うからこそ真に意味を成す言葉でした。

 彼女は景明よりも最初はそれ程悩んではいなかった。と云うより表には出さず、1人で黙々と抱えていた感じ。結果的に銀星号を誕生させてしまい、景明や世界に対しての罪悪感を抱えながらも、仕方ないじゃない…と心のどこかでは赦しを求めていたんだと想います。それもあって、その気持ちを確かに伝えられる彼女がやっぱり景明の傍にいるべき…いて欲しい人だったなと。自分を赦されない人であると認めてはいても、せめて"正しく人として"赦せる余裕はあって欲しいと。そんな風にいつも正しさを示してくれたのは間違いなく彼女だったと思います。

 また、村正は景明へ愛情も向けていたし、先述した事も含め彼と共に悪鬼では無く、もっと普通な人間に少しでも近づきたかったのだとは思います。でも、それは絶対に赦されないし、景明もそう言うのなら…愛ではなく信頼を選ぶのなら、私もそれに応えるしかないわねと。彼女に寄り添うと少しばかり哀しいけれど、でもこれで信頼の純度がより崇高なモノへと変わった気はします。

 こうやって書くと、本当に2人はお互いに必要不可欠な関係だったなと改めて思います。罪も役目も目的も責務も、全て共にしてきたからこそ理解し合えるし、それは絶大な信頼へと繋がりこれからも共にする事で、互いに大切なモノを捧げ合うと誓える様になる。本当に始まりを告げるこれ以上ない終幕でした。

 更に、光(ひかり)の「わをもってとうとしとす」。母、湊斗統から教わった言葉で物語を締めてくれたのは、彼への最大の皮肉であると同時に、彼にとっては潰えてしまった正義の形が続く希望そのものであったと思います。この事からも、物語全体を通して改めて、正義…延いては善悪と云うモノが其々固有に在り、そこに真に正しいモノなどは無く、それだけ人の意思が…道が…人生があるのだと証明してくれましたね。


6.さいごに

 まとめになります。

 ニトロプラス10周年記念作品に相応しい傑作でした、間違いなく。"善悪相殺"と云うテーマを最後まで真っ向から一切ブレる事なく描き切ってくれて。「受け取ったメッセージ」でも書いた様に、大人になればなるほど忘れがちな大切な事を説いてくれた作品だったと思います。戦闘を中心に厨二臭い要素が沢山あるのに。ギャップ萌えですね(笑) そして、湊斗景明の物語をちゃんと見届ける事ができて本当に良かったです。

 ライターは奈良原一鉄さん。文章も非常に丁寧で切れ味よく、硬派且つ強固で、隅々まで血が通った物語でした。敵味方関係なくキャラが生き生きとしており、どのキャラにも強い芯を感じるから、どんな展開になっても目を背けられない辺りも巧みでした。
 あと、本当に長かったけれど、つまらなくは無いし、読める(読みたくなる)文章だから余計に長く感じてしまったのかもしれません。ギャグの差し込み方もあまりに上手で。強いて不満点を挙げるなら、戦闘の理屈は丁寧すぎた気も。けど、あーゆーのが好きな人がいるのも解るので難しい。劔冑のバリエーションや技の多彩さ、戦闘演出自体はとても良くて、男心が解ってるなぁと。一人称視点とか没入感を促そうとする気概も感じました。

 イラストはなまにくATKさん。お名前通り?肉感がとても良かったです。バランスを伴った曲線美も凄まじい。立ち絵もCGも文句無しに良かったです。1人選ぶならやっぱ村正のビジュアルが好きですね。

 音楽はZIZZ STUDIOと、GEORIDE。チームなので個人で見るとそこそこの人数が参加されている様でした。それもあって、サウンドもジャンルも幅広く取り扱ってくれて、且つシーンをしっかり際立たせてくれてたと思います。1曲の長さも殆どが2~3分で、4分以上の曲もあって個人的には嬉しかった。「BLADE ARTS Ⅲ」「英雄襲来」「凌辱」「小さな村」「落葉」が特に好きです。「凌辱」には"泣き"を誘われました…統様…。

 とゆーことで、感想は以上になります。
長かったけれど、その長さに見合った達成感と満足感がありました。ニトロプラスの作品はゲームだと本作が初めてだったので、そーゆー意味でも良かったなとも。今後は『沙耶の唄』なんかはエロゲ―マーとして、やっておきたいと想っているので、いつか絶対プレイします。改めて制作に関わった皆様、ステキな作品をありがとうございました。

 ではまた!



©NITRO ORIGIN

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