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運動が体に良い理由、ちゃんと知っていますか?

運動が体に良いことは誰でも知っていることだと思います。

具体的には、痩せる、筋肉がつく、体力がつく、といった効果を思い浮べると思います。しかし、運動の効果はこれだけではないのです。実は頭の良さや、ストレスやうつの改善、月経前の気分の改善などにも関係します。

では、なぜ運動はこれらの効果をもたらしてくれるのでしょうか?

人に運動を勧めるにも、その理由を説明できなければ説得力がありません。この記事を読めば、あなたは今すぐにでも運動をしたくなり、他人にこの知識を説明したくなることでしょう。

それでは、説明していきます。

運動するとなぜ痩せるのか

運動するとなぜ痩せるのでしょうか?

皆さんご存知のとおり、運動するにはエネルギーが必要となります。当たり前ですよね。では、このエネルギーはどうやって作られるのかわかりますか?

それを知るにはまず、ミトコンドリアについて知りましょう。ミトコンドリアとは、酸素を取り入れて体内に取り込んだブドウ糖や脂肪酸といった栄養素からエネルギーを作ってくれるものです。基本的に全ての細胞の中に含まれていますが、特に、筋肉に多く含まれています。

このミトコンドリアが多い人ほど一度に大量のエネルギーを生産することができるので、体力があります。そしてミトコンドリアが多い人というのが、習慣的に運動をしている人です。彼らは運動すると多くのブドウ糖や脂肪酸からエネルギーを生み出すので、その分脂肪がつきにくい体質となっています。

・ミトコンドリアの量が少ないことの悪影響

運動習慣がない人は、筋肉量が1年で1%ずつ減少していきます。これはつまり、運動していなければどんどん筋肉中のミトコンドリア量が減っていくことを意味します。

ミトコンドリア量が減ってしまうと、エネルギーを生産するための酸素を多く取り込めなくなり、少し動いただけで息切れを起こしたり、エネルギーを多く生産できないので体内に余った栄養素が脂肪として蓄積されていくこととなります。それによって肥満、メタボリック症候群、生活習慣病を患うこととなります。

また、量だけでなく、質も低下していきます。質が低下するとはどういうことかというと、エネルギーを生産するときに、活性酸素が排出されてしまいます。この活性酸素は、細胞を傷つけてしまい、その結果老化が進み、アルツハイマー病や糖尿病、がんなどにかかるリスクが高まります。つまり、燃費の悪い車が排気ガスを大量に排出して環境汚染するような感じです。

・ミトコンドリアを増やすためには

ミトコンドリアを増やすには、やはり運動しかありません。具体的には、有酸素運動をしましょう

なぜかというと、有酸素運動を行うと筋肉の中でも持久力に関係する遅筋が発達します。遅筋は、ミトコンドリアを大量に含んでいるので、遅筋の発達によってミトコンドリア量を増やすことができるのです。

運動すると頭が良くなる

運動で頭が良くなることはご存知でしたか?勉強できる人が運動をしているイメージはあまりないかもしれませんが、実は運動している人ほど学習能力が高いのです。

理由は、運動によって放出されるBDNF(脳由来神経栄養因子)にあります。これは何なのかというと、情報を記憶するニューロンを成長、強化させる物質です。新しいニューロンを生成するときにもこのBDNFが重要となってきます。これによって脳は新しい情報を取り入れやすくなり、長期間記憶しやすくなります

また、運動によってBDNFが放出されると、それと同時にIGF-1(インスリン様成長因子)、FGF-2(線維芽細胞成長因子)、VEGF(血管内皮成長因子)といった物質も放出されます。

1つずつ効果を見てみましょう。

IGF-1は、インスリンと協力してブドウ糖を細胞にまで運ぶ働きがあります。このブドウ糖は、脳が唯一エネルギー源にできる栄養素であり、学習に必要不可欠となります。

VEGFは体内の酸素が不足しているときに放出されるもので、体や脳で新しい毛細血管を作り、より多くの血液を脳に巡らせるようになります。

FGF-2は体内の組織の成長を促進させる効果があり、ニューロンの成長に欠かせないものとなります。

難しいかもしれませんが、要するに運動によって集中しやすくなり、物覚えが良くなるので、学習するのにベストな状態を保てるということです。

「勉強しなければならないけど、集中力が続かない」という方は、一度外に出て軽く歩くだけでも効果があると思います。

ストレスや不安が解消される

運動した後、気分が良くなった経験はないでしょうか?これはなんとなくそう感じるだけでなく、実際に体がそのように変化しているのです。

まず、運動すると筋肉の張力が緩むので、それに伴って不安が和らぎます(緊張すると筋肉がガチガチになりますが、これがなくなるわけです)。

また、ストレスや不安の解消に関係するホルモンがあるのですが、それが運動することによって放出されます。具体的には、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)といったものがストレスや不安を解消してくれます。

難しそうですが、1つ1つその効果を見てみましょう。

セロトニンは、運動によって脂肪酸から分解されたトリプトファンという物質が材料になって放出されるのですが、これは気分の調整に関係します。つまり、苛立ちや不安、焦りなどの感情を抑制してくれるのです。

ドーパミンは皆さん聞いたことはあると思いますが、これはやる気や報酬系に関わるホルモンです。このドーパミンが放出されることで何もしたくない状態から立ち直ることができます。

ノルアドレナリンは、注意や知覚、意欲などに関係している神経伝達物質です。過度に放出されると悪影響が及ぼされますが、適度な量であれば集中力が増し、意欲が高まります。その結果不安解消につながるのです。

ANPは、運動したときに心臓から放出されるホルモンです(心臓から放出されるなんて驚きですよね)。これは、ストレス反応に関係するHPA軸の働きを押さえてくれる働きがあります。その結果、ストレスや過度の興奮が和らぎ、気持ちが落ち着きます

このように、運動によって様々なホルモンが放出され、それぞれが様々な方向からメンタルに良い効果を与えてくれるのです。

うつが改善される

うつ病は精神病なので、発症したと思ったらきちんと精神科を受診することをおすすめしますが、運動によって症状を改善することができます。

まず、運動するとエンドルフィンというホルモンが放出されます。ランナーズ・ハイという言葉を聞いたことはありますか?これは、ランニングをすると気持ち良くなり、たとえ走っている途中で足を痛めてもその間は痛みを感じない状態のことです。要するに、運動、特にランニングをすると気持ち良くなり、気分が良くなるのでその間うつ症状が和らぎます

また、運動によってノルアドレナリンも放出されます。先に述べたとおり、集中力や意欲が増すので、うつの無気力感を解消することができます。

さらに、先に述べたドーパミンも放出されるため、気持ちが前向きになり、幸福感が高まる上に、注意システム(やる気や集中力)も活性化されます。

運動でうつが治るとは言いませんが、「最近うつ気味だな」と思う方で運動していない方は、運動することによってある程度は改善されると思います。

病気になりにくくなる

運動不足は様々な病気のリスクを高めます。

具体的には、糖尿病やメタボなどといった生活習慣病や、骨粗しょう症、がんなどの病気にかかりやすくなります。

しかし、運動習慣を身につければこれらを患うリスクが大幅に低下します。

例えば糖尿病について話をすると、ブドウ糖が細胞膜を通って血液から筋細胞に移動するのを助けるGLUT4(グルコーストランスポーター4遺伝子)という遺伝子があるのですが、運動不足はこの遺伝子の活動を抑制します。その結果、血液中のブドウ糖が増加して糖尿病のリスクが高まります。

ですが、運動すればこのGLUT4は活性化し、血液中のブドウ糖を筋肉がどんどん取り込んでエネルギーを作り出します(ミトコンドリアの説明参照)。その結果糖尿病のリスクも低下するのです。

また、がんの発症率も低下するということが144万人のデータを基にした運動習慣とがんのリスクの関係性に関する研究からわかっています。13種類ものがんの発症リスクを下げますが、その中には肺がん、大腸がん、胃がん、肝がん、乳がんなども含まれます。

このように、運動を習慣化することによって病気を患うリスクが低下するのです。

(女性の方)月経前の気分の落ち込みが改善される

女性は月経前になると気分が落ち込んだり、イライラしたりすると思います。これは先に述べたセロトニンの放出に必要なトリプトファンを脳の前頭前野という部位にうまく取り込むことができなくなることでセロトニン放出が抑制され、気分を制御できなくなるためです。

しかし運動、特に有酸素運動をすると、血液中のトリプトファンの量が増え(運動によって脂肪酸を分解するため)、それに伴ってセロトニン濃度も高まります

さらに、ドーパミン、ノルアドレナリンといったホルモンも放出されるので、気分が改善されるのです。

月経前の気分改善にも運動が効くのは意外だったと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか?百聞は一見に如かずです。是非試してみて下さい。

以上、運動によって得られる効果とその理由を書きました。

まとめると、運動は理想的な体をもたらすだけでなく、頭も良くなり、メンタルが改善され、病気にかかりづらくなり、月経前の気分変動も抑えることができます。

運動習慣がない方は運動を続けることで自分を変えることができるといっても過言ではありません。

しかしこう思う方もいるでしょう。「でも、運動ってきついし、続ける自信がない」と。

また、「運動が具体的にどう良いのかはわかったけど、何から始めれば良いかわからない」、「今の生活が忙しすぎて運動する暇がない」と思う方もきっといらっしゃると思います。

そのような方のために、運動の始め方や、やる時間帯と継続時間、目的別に運動のメニューなどをまとめた運動習慣化プログラムを記事にして提供します。お楽しみに。

それでは。


<参考にした本>
・「脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方」ジョンJ.レイティ(NHK出版)
・「世界一効率がいい 最高の運動」川田浩志、福池和仁(かんき出版)
・「ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方」能勢博(ブルーバックス)
・「科学的に正しい筋トレ 最強の教科書」庵野拓将拓(KADOKAWA)

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