Crossing Lines

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Crossing Lines

インターナショナル・ポイエーシス・ウェブサイト crossing lines。noteではエッセイと写真作品のアーカイブを掲載。 https://crossinglines.xyz https://linktr.ee/crossinglines

最近の記事

岩佐なを-Ex Librisの詩世界

詩人 石田瑞穂  岩佐なをは現代詩人であるとともに銅版画家でもある。もし、日本にも、英國の詩人にして版画家ウィリアム・ブレイクのような存在がいるとすれば。それは、岩佐なをではないか、そう、ぼくは考える。  ぼくが生まれて初めて、詩人、という存在を知ったのは、幼少のころに母の書架にみつけたウィリアム・ブレイクの詩画集をつうじてであった。爾来、詩と版画はおなじ白頁でとなりあい、ぼくの心身の奥底で密接にむすばれてある。だからか。ぼくの日々の机辺には、エッチングやシルクスクリーンが

    • 三堂めぐり(身辺雑記)

      岩佐なを  三十六年ほど勤めた大学図書館を定年退職して、ちょうど十年が経った。  定年後は、詩や絵や版画などの創作活動が思い切り出来ると思っていたのだが、誤算だった。高齢の親の面倒をみたり、思いがけずに襲ってくる不都合から自分の心身を守り整えたりと、予定通りには過ごせていない。ひとはどんな状況(生活)でも一定量の不都合や不安は必ずついてまわるものなのだろう。老視もあって細かい銅版画の作業はままならない。工夫すれば可能なのだが、それにはまず気力を立て直さなければいけない。な

      • 眼のとまり木 花のうつわ

        詩人 石田瑞穂  机上に咲く一輪の花。  それは、詩や原稿を書くぼくを鼓舞してくれるミューズ。書きあぐねているとき、花びらの色かたち、生命感は、ぼくを虚の世界から実の世界へとつれもどし、乾いた眼とこころをうるおしてくれるのだ。そうして、幾輪もの名もなき野花と百草、庭の茶花たちと、ぼくは幾歳も机を共にしてきた。  だから、華道を嗜まないぼくだが、骨董店でも市でも、つい花の器になりそうなものへ眼がゆく。写真の器は、元来、花器ではない。それと見立て日々愛用しているものだ。読者

        • 目的化をスライドさせ、新たな意味の構築を図る—堤麻乃《In progress》

          北桂樹 21世紀の情報化とインターネットの普及はわたしたちの世界の理解を急激に変化させている。大規模言語モデル(LLM)を活用した人工知能(AI)がわたしたちの疑問に何でも答える時代が訪れており、それらによって現代は何でも知った気になれる時代とも言える、一方でデジタル化によって本来の姿を取り戻しつつあるため、「写真とは何か?」という問いに答えることはますます難しくなってきていると感じる。 現代写真のアーティストとして知られるルーカス・ブレイロック(Lucas Blaloc

        岩佐なを-Ex Librisの詩世界

          冬の酒器−古備前の徳利

          詩人 石田瑞穂  「盃は唐津、徳利は備前」。小林秀雄も断言した骨董道におけるそのとりあわせは、もはや都市伝説とおもわれた。殊に桃山時代を上がる古備前徳利などという代物は、花器の風格をえた大徳利や仕舞い酒用の小徳利ならともかく、一合半から二合の酒が容る独酌に好適な品となると、現物を拝むことすら困難であった。   以前、骨董業者向きの催事で、備前焼蝟集と研究の大家である桂又三郎愛蔵の古備前徳利を目撃したことがあった。ガラスケースに収まったそれは、肌が鈍色に窯変してい、侘びた風情

          冬の酒器−古備前の徳利

          【2023年5月のトーキョートップ】Lacrmatory

          この作品はcrossing linesのトーキョーパートにて、2023年5月に掲載されました。作品の著作権はすべて多和田有希氏に属します。多和田氏のアーティストシップに感謝いたします。 多和田氏のその他の作品は、リンク先のcrossing lines HPからお愉しみいただけます。 https://crossinglines.xyz/writer/tokyo/crossinglinesrenshigroup/ 【プロフィール】 自ら撮影した写真を消す(削る、燃やすなど)と

          【2023年5月のトーキョートップ】Lacrmatory

          【2023年4月のトーキョートップ】Linear Graphs

          この作品はcrossing linesのトーキョーパートにて、2023年4月に掲載されました。作品の著作権はすべて伊藤雅浩氏に属します。伊藤氏のアーティストシップに感謝いたします。 伊藤氏の特集「Linear Graphs」はリンク先のcrossing lines HPからお愉しみいただけます。 https://crossinglines.xyz/area/tokyo/6_s-d/ 【プロフィール】 アーティスト / プログラマー 1983年滋賀県生まれ 岡山大学理学部地

          【2023年4月のトーキョートップ】Linear Graphs

          【2023年3月のトーキョートップ】← →

          この作品はcrossing linesのトーキョーパートにて、2023年3月に掲載されました。作品の著作権はすべて野原かおり氏に属します。野原氏のアーティストシップに感謝いたします。 詩人でcrossing linesプランナーの石田瑞穂と、おなじく詩人でコーディネーターの二宮豊による作品解説は、crossing linesポッドキャストからお聴きいただけます。 【プロフィール】 長野県在住。アートディレクター、ウェブ・グラフィックデザイナー、アーティスト。2019年頃よ

          【2023年3月のトーキョートップ】← →

          【2023年2月のトーキョートップ】

          この作品はcrossing linesのトーキョーパートにて、2023年2月に掲載されました。作品の著作権はすべて池田敬太氏に属します。池田氏のアーティストシップに感謝いたします。 【プロフィール】 1960年、佐賀県生まれ。 1978年、挿絵画家になるために上京。童話や教科書の挿絵を描きつつ、劇団キラキラ社、劇団状況劇場に在籍。その後、映画看板絵描きとなり、並行してライブハウスで撮影を始める。 さまざまなアーティストのライヴ写真を中心に手がける。 主な著書に戸川純との

          【2023年2月のトーキョートップ】

          【2023年1月のトーキョートップ】

          この作品はcrossing linesのトーキョーパートにて、2023年1月に掲載されました。作品の著作権はすべて谷口昌良氏に属します。谷口昌良氏のアーティストシップに感謝いたします。 【プロフィール】 1960年東京生まれ。高校卒業後渡米。10年間在住し現代美術、写真、仏教を学ぶ。現在、浄土宗長応院住職、空蓮房ギャラリーディレクター、写真家。著に「写真少年」3部作、「空蓮房|仏教と写真」畠山直哉共著、「空を掴め」石田瑞穂共著がある。個展、グループ展多数。サンフランシスコ

          【2023年1月のトーキョートップ】

          【2022年12月のトーキョートップ】

          この作品はcrossing linesのトーキョーパートにて、2022年12月に掲載されました。作品の著作権はすべて我妻ひかり氏に属します。我妻氏のアーティストシップに感謝いたします。 【プロフィール】 平成生まれ。2019年『あおとゾンビ』で第9回THE GATE編集部賞を受賞。2022年11月より、COMIC OGYAAA!!にて『パコちゃん』を連載中。 個人サイト『べっどるーむ。』→https://www.pikarimanga.com/

          【2022年12月のトーキョートップ】

          【2022年11月のトーキョートップ】

          この作品はcrossing linesのトーキョーパートにて、2022年11月に掲載されました。作品の著作権はすべて横山大介氏に属します。横山氏のアーティストシップに感謝いたします。 【プロフィール】 1982年兵庫県生まれ。大阪市在住。 2005年同志社大学文学部文化学科文化史学専攻卒業。 自身の吃音をきっかけに、他者との関係性やコミュニケーションのあり方を、ポートレート写真の手法を用いて考察している。2022年『I hear you』Kanzan gallery /

          【2022年11月のトーキョートップ】

          【2022年10月のトーキョートップ】

          この作品はcrossing linesのトーキョーパートにて、2022年10月に掲載されました。作品の著作権はすべて横山大介氏に属します。横山氏のアーティストシップに感謝いたします。 【プロフィール】 1982年兵庫県生まれ。大阪市在住。 2005年同志社大学文学部文化学科文化史学専攻卒業。 自身の吃音をきっかけに、他者との関係性やコミュニケーションのあり方を、ポートレート写真の手法を用いて考察している。2022年『I hear you』Kanzan gallery /

          【2022年10月のトーキョートップ】

          夏の酒器

          石田 瑞穂(詩人)  梅雨の足音が聴こえだすと、土物の徳利を時代箱に仕舞い、夏の酒器をいそいそとりだす。  地球温暖化の高温多湿で、わが家の古徳利たちはたちまち黴てしまうようになり、とても夏はつかえなくなった。このことは、いまやおおくの酒器好きの悩みの種ではないか…。  今年もお世話になるのは、江戸時代中期の作といわれる、古瀬戸麦藁手片口茶碗である。ぼくは、近年、これを酒器に見立てて愛用してい、もはや夏の晩酌には欠かせない存在になっている。その名の通り、もとは夏茶碗とし

          Absolute Photographsの彼岸

          石田 瑞穂  伊藤雅浩の〈写真〉をめぐっては、こんなエピソードがある。   目利きとしても知られる高名な写真家が、東京蔵前の写真と現代美術のギャラリー〔空蓮房〕をおとずれたときのこと。オーナーで写真家の谷口昌良氏と写真家が歓談していると、壁に架けられた作品にふと話題がおよんだ。写真家が「じつにユニークで面白い。山肌のようにもみえる…どなたの作品ですか」と谷口氏に訊ねる。  谷口氏は作品が伊藤雅浩という若手写真家でプログラマによる「Recursive Call」シリーズの

          Absolute Photographsの彼岸

          レンカをめぐるノイズあるいは断章

          石田瑞穂  気がつくと、彼女は、淡い光のなか、木の床のうえで上体をゆうらりゆすらせ微動していた。観客ひとり一人の視線と、彼女の瞳を触れ合わせて。そうやって彼女は、虹彩だけで、踊りだしていた。  ここに書きつける言葉は、レンカという身体の表現、いや、彼女のからだと不器用に触れ合う音信となろう。  彼女の踊りとともに詩の朗読を試みるとき、リハーサルというものをしたことがない。彼女には譜面もコード進行も計画も練習もないから。彼女はからだに街のプラグをいれる。板橋の地下ギャラリ

          レンカをめぐるノイズあるいは断章