黒羽ひみと

言いづらいことだってときには話したい。

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記事一覧

愛と優しさ

 愛の色を思い浮かべよ。  と、言われたら私は桃色を想像する。  優しさの色を思い浮かべよ。  と、言われたら私は水色を想像する。  愛とは優しさではない。  優し…

黒羽ひみと
3時間前

空虚な神様

「行ってきます」 「行ってらっしゃい」  母の声を背中に、私は玄関を出た。  今日も心臓が騒がしく鳴っている。暫く歩くと私は立ち止まり、上着の胸ポケットから折り紙…

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離別

 一枚の手紙ついて、私はいまでも思い出すことができる。その内容こそ記憶していないが、宝箱が描かれていた。手紙の贈り主は、私が幼少の頃に住んでいた家の、近所に住ん…

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墓参り

 この所、墓参りに行っていない。  私は生まれてから、三人の墓を目にしたことがある。一つは父方の祖父と祖母、二つ目は母方の祖父だ。幼少の頃、父方の祖父を亡くして…

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変わりたいけど、変わるのが怖い。だから変えてくれる何かを待っている。

初めまして、黒羽ひみとです。 読書はインプットからのアウトプット、ということで大好きな太宰治さんの作品を読みました。 いきなり長編は難易度が高いので「待つ」とい…

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愛と優しさ

 愛の色を思い浮かべよ。
 と、言われたら私は桃色を想像する。
 優しさの色を思い浮かべよ。
 と、言われたら私は水色を想像する。

 愛とは優しさではない。
 優しさは、誠実さのことで。愛とは、愚鈍である。優しさは突き放すものであり、愛は包み込むものである。優しさは厳しさを持ち合わせ、愛とは許しをもたらす。
 誠実さと愚鈍さ。
 突き放しと、包み込み。
 厳しさと、許し。
 それらを両立するには

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空虚な神様

「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
 母の声を背中に、私は玄関を出た。
 今日も心臓が騒がしく鳴っている。暫く歩くと私は立ち止まり、上着の胸ポケットから折り紙の御守りを取り出した。私が織った、私だけの御守りを、両手で握り締めて、目を閉じ、心を落ち着かせながら、冷えた空へと祈りを込める。
 今日はいじめられませんように。
 スっと目を開いて、深く息を吐くと、私はその御守りを胸ポケットに閉まった。

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離別

 一枚の手紙ついて、私はいまでも思い出すことができる。その内容こそ記憶していないが、宝箱が描かれていた。手紙の贈り主は、私が幼少の頃に住んでいた家の、近所に住んでいた幼馴染の男の子である。私より一つ歳下の彼を、私は『あっくん』と呼んでいた。
 あっくんは、姉が一人いる三人家族の生まれで、当時、我儘で傍若無人な私とは違い、いつも眉を八の字にしてオドオドしていた。色でイメージするなら明るい緑色を思い出

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墓参り

 この所、墓参りに行っていない。
 私は生まれてから、三人の墓を目にしたことがある。一つは父方の祖父と祖母、二つ目は母方の祖父だ。幼少の頃、父方の祖父を亡くしてから、私は初めて墓参りに行った。
 墓参りには、父、母、姉、兄、私の家族五人全員で行き、お供えものは果物が入ったバスケットを持って行った。花束も買っていたかもしれないが、私が覚えていないのは、その果物が美味しそうで、帰って食べることを楽しみ

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変わりたいけど、変わるのが怖い。だから変えてくれる何かを待っている。

初めまして、黒羽ひみとです。

読書はインプットからのアウトプット、ということで大好きな太宰治さんの作品を読みました。

いきなり長編は難易度が高いので「待つ」という掌編作品について。

この作品は、およそ四ページしかない短い作品です。しかし、何か心の奥底に入り込んでくる恐怖を感じました。

テーマでいえば題名の通り「待つ」でしょう。けれどこの主人公、何を待っているのか分かりません。

主人公は駅

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