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#2:雨が見える

人と話していると認識の違いに驚くことがある。

その多くは、あらためて他のひとに確認をとったりしないために起こる驚きで、確認できるものはなるべく確認しておいたほうが、いざという時にびっくりしなくて済む。


多くのひとはトイレの仕方について、幼いころに親に教えてもらった方法を続けているだけで、あらためて他のひとに確認をとったことがない。和式トイレの前後は本当にこれで合っているのか。紙は一度にどのくらい巻き取るのか。もし尋ねられたら僕は自分の仕方が正しいと思いながらも、人と違ったらどうしようという恐怖に少しだけひるんでしまう気がする。

バスタオルは週に何度洗ったらいいのだろう。そんなのだれかに教わった事ない。汗の沁み込んだシャツならすぐに洗濯したいと思えるが、シャワーを浴びて綺麗にした後の体を拭いたものは、果たしてそんなに汚れているものだろうか。

そうやって徐々に自分独自の仕方になっていって、少しずつ『世間』から常識が外れて行ってしまうのが恐ろしい。



「さっき雨が数滴落ちるのが見えた。そろそろ降ってきそうだね」

と言ったら、「見えるの?」と聞かれた。どうやらその人にとっては雨は見えるものではないらしいのだ。たぶん傘に落ちる音とか濡れる触感とかで認識する『常識』があって、決して本当の意味で見えないわけではないのだと思うけれど、雨が降る兆候を視認する可能性に蓋をしてしまっているんだと思う。

雨が降る兆候といえば『雨の匂い』があるけれど、あれも本当にみんなが共通の匂いを指しているのか疑わしいと思っている。もしかしたら、みんな別々の匂いに『雨の匂い』という名前を付けているかもしれない。


猫が可愛くて、思わずガブッとしたくなる理由を僕は「愛しすぎると食べたくなる」と表現してしまったことがある。その表現が必ずしも共通認識されていないと知らなかった僕は、その場を凍り付かせてしまった。サイコパスと思われた、と後悔している。



やや趣きの異なる話だが、カップ焼きそばを作るときの湯切りでシンクが「ぼこん」と鳴るのを経験したひとは多いと思う。

あの「ぼこん」はシンクにとってはあまり良くないそうで、

「シンクの神様が怒ってるよ」

と注意された。



怒ると「ぼこん」って言うのか。


知らなかった。




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