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【最近気になったこと】いのちの電話ボランティア相談員不足について〜東京とカナダBC州のホットラインボランティアを比較して見えてきたこと〜

先日、日本にある、危機介入のホットラインとしては歴史もある「いのちの電話」の相談員不足という話を聞きました。なぜボランティアになり手がないのかな?と疑問に思ったのですが、話を聞くうちに、ボランティアを希望する人たちが少なくなってしまうのも、仕方ないのではないか?と思ってしまいました。

というのも、相談員は完全なるボランティアで成り立っているのですが、まず、その相談員になるのに1年半かかること、またその相談員になるための研修費用がかかること(地域によっては、援助が出る場合もあるそうですが、費用は決して安くはありません)、この2点に、違和感を覚えました。

もちろん、私の住むカナダBC州でも、ボランティアだとしても研修費がかかることがあります。ある団体のホットラインは、80カナダドルの研修費を取るそうです。ただ、そこには理由があります。以前は無料で研修を提供したいたのですが、研修だけ出てすぐに辞める人も多かったということで、80ドルという費用を取るようになったとのことでした。とはいえ、この値段はものすごく良心的な値段です。払えない金額ではないので、納得できます。

今まで相談員不足にならなかったことに驚きですが、カリフォルニア在住セラピストのやすのさんのブログでも指摘されていたように、個人のやりがいや精神性、また熱意や献身的な心に頼るのは、ボランティアというポジションにおいて、あまりにも荷が大きな役割ではないでしょうか?本来ならばトレーニング費用なども無償にし、お給料が出てもおかしくない程の仕事だと思います。その割には、ボランティア側のGiveばかりが多いのではないか?と思いました。このように、ボランティ側が与えることが多い場合、批判的な視点でみると、主催者側にそのつもりはなくても、搾取の構造に加担しうるのではないか?とも思います。

日本の、またいのちの電話いおいての「ボランティア」の位置付けや、意味合いはどういうものなのか、様々な疑問が湧きました。

そんなわけで今回、東京のいのちの電話とカナダBC州のクライシスラインの募集チラシや事業レポート(公的資金はどれくらい投入されているのか?)を比較しながら、持続可能ななボランティアというポジションについて考えてみたいと思います。

東京いのちの電話

まずは、こちら「いのちの電話」です。このいのちの電話のホットラインは全国にあるので、東京のホットラインだけに焦点を当ててみました。こちらは去年の東京の募集チラシです。

この東京いのちの電話は、日本で初めて電話相談として開設された、とても歴史のあるセンターのようです。元々1953年のイギリスで始まったいのちの電話が、世界へ広がっていったとのことで、日本でも市民活動として70年代から広まっていったそうです。その中でもここの東京は1971年に設立されたとのこと。老舗中の老舗ですね。

東京いのちの電話のウェブサイトには、相談員募集サイトの項目の中に、詳しい募集内容・応募方法、また1年半の研修体系概要として、研修で学ぶ内容も書かれています。ご興味のある方はぜひ、読んでみてください。

東京いのちの電話から見えてきたこと

ボランティア募集のチラシやウェブサイト、研修内容や事業レポートを見ながら思った印象は、なんとなく全体的にふんわりとして曖昧な印象でした。
その中でも気になったのは、東京都の人口にしては規模は小さく、助成金が少なこと、そしてボランティアになって得られることが精神的な満足に偏っている(ボランティア側からのGiveの多さの)ことです。

東京都の人口にしては規模は小さく、助成金が少ない

いのちの電話には、東京都から電話事業補助金として、1,825,000円が出ているだけでした。詳しくは、東京いのちの電話の事業レポートに掲載されています。この値段に私は驚きを隠せません。東京都の人口に対して補助金の少なさ、また事業の規模も小さいなと感じました。

規模が小さい割には、例えば有名な人が自死した場合、その報道と一緒に、いのちの電話の連絡先が、ネットやテレビにも出てきます。いのちの電話は広く知れ渡っていますよね。もちろん、全国にネットワークのあるいのちの電話なので、全国規模にすれば大きな事業だと思います。ただ東京の補助金の低さ(あれだけの人口なのに)がひっかかりました。

なんとなく気になったので、政府でも自殺防止対策には予算がくまれていたのでは?と思ったので、そちらも調べてみました。こちらの東京都予算案概要のP60に、自殺防止対策が掲載されていました。

自殺防止には、ホットライン意外、様々な事業がありますね。そこにもだいぶ投入されているとは思いますが、それでもカナダBC州の人口と東京の人口って大きな差があるので、東京の人口にしては、電話相談事業への支援は少ないなと思いました。そして東京都で自殺などのホットラインをやっているところは、いのちの電話だけではないようです。いくつかの団体に分けられる、ということで、いのちの電話への助成金が決まるのかな、とも思いました。

ボランティアになって得られること

東京いのちの電話の相談員や研修している方の声というのが、ウェブサイトにも載っています。またチラシにも感想が載っているのですが、それを読むと、このボランティアをすることで得られることは、やり甲斐、人生の中で気づきをえたり、相談できる仲間ができたりなど、ボランティア個人の心が満たされる事なのかなと思いました。やはり精神的なものですね。それ自体は悪くはないと思います。

ただ、どうしても引っ掛かるのが・・1年半かけて、東京は最低でも合宿費も入れてば最低6万円も自費で払うということ・・(交通費も入れたらもっとですよね)。ボランティア側からのGiveの多さと、ホットライン業務という大変さ、結果的に得られるもののバランスの均衡が取れていないと感じます。結局、それでもやりたいと思える献身的な人であり、時間とお金に余裕のある人しかできないなのでは?と疑問に感じました。

ボランティア相談員として働くには、月2回できる人を求めているようですが、それは大体1回に何時間しなければいけないのか、また月に最低何時間やらなければいけないのか?そういったことがもう少し明確に書かれている方が、ボランティアをするかどうか、できるかどうかを検討できるので、ボランティアを応募する側にとっては大事な情報かな?とは思いました。

ボランティア対象者は誰か:相談員のターゲット層を限定していないか?

世の中には、時間とお金がなくても、何らかの貢献したいと思ってる人、学びたいと思っている人、またメンタルヘルス領域に興味のある人はいると思います。1年半という長い時間と研修費に最低6万円も出す必要があることから、このボランティア相談員のターゲット層というのが、中流家庭以上(自由に使えるお金がある)で、さらに時間のある人を対象としているのではないか?と思いました。

そうなると、リタイアした人、学生でもお金を出せる人で時間のある人、子どもがいない、もしくは子供がいても大きくなり忙しくない主婦とか、正社員として働いていない人がターゲットでしょうか。応募のエントリーの時点で、応募資格の中に、上記のような条件が明記されていなくても、1年半の研修時間と研修費用を見ると、すでに応募できる人の層が自然と設定されてしまうのではないかと思います。なので、幅広い層は求めていないのでしょうか?これは相談員不足につながるのではないかなと思います。

ジェンダーの暗黙のバイアスはないだろうか?

なぜそのような層に、結果的に限定されているのか?と考えてみました。そもそもいのちの電話相談員のボランティアがスタートしたのが、70年代なので、時代背景も大きく反映していたのではないかと思いました。

もしかしたら、専業主婦やリタイアした方のみをターゲットにしていたのではないか?もしも、だとすると、いのちの電話そのもの、あるべきボランティア相談員の姿に、このジェンダーの暗黙のバイアスはなかったのか?とそんな疑問が思い浮かびました。

仮に、ジェンダーの暗黙のバイアスがあったという前提でこの仕組みを見ると、ターゲット層がすごく限定されてしまうのも、ボランティアそのものが個人の熱意、献身、善意にたよっているのも、すんなりと理解ができます。この相談員になることで、例えば、会社からリタイアした人、また専業主婦として家にいた人が、自分も社会の一員として貢献しているのだ、という誇りを持つことができたのではないかと思います。もちろん、これらは決して悪いことではありません。

しかし当時の日本社会の現実を考えると、女性の社会的な地位は今よりも低い時代でした。ここで一歩踏み込んで、この状況を批判的に見ると、社会の中で、精神的に満たせるような相談員という責任や役割を与えることで、女性の中にある認められたいという欲求をある程度満たしながら、実際は無償の労働をそこから引き出し、女性をその低いままのポジションに留めるような、構造だったのではないか、そのような見方もできます。悪意があってその仕組みにしようとした人はいるとは思いませんが、暗黙のバイアスというのはそういうものではないかと思いますし、それが現在の日本におけるジェンダーギャップ指数にあらわれているのではないかと思います。

どちらにせよ、このままでは相談員への希望者が少なくなってしまうのも当然なのだと思いました。

カナダBC州のクライシスライン

カナダも全国様々なホットラインが設けられています。今回はいのちの電話と似たような、24時間体制でやっているホットラインサービスを選んでみました。BC州で自殺防止なども含め、24時間対応しているホットラインといえば、Fraser Health Authority(フレイザー・ヘルス・オーソリティーFHA )が主体となってやっている、クライシスホットラインです。東京のいのちの電話と似たような規模の団体がを選ぼうと思ったのですが、むしろ東京いのちの電話の程の規模の団体が、自殺含めたこのような24時間ホットラインをしているところは、BC州にはありませんでした(例えば、チャイニーズホットラインというのがありますが、中国人移民向けの北京語・広東語・台湾語だけの限定です←なので規模は小さいですが・・)。

BC州は、公的資金から成り立っている医療地域が5つに分かれているのですが、そのうちの一つがこのFraser Health Authority(フレイザー・ヘルス・オーソリティー、以下FHAとする )。このFHAが、地元の大きなNPO団体Option Community Seriveと委託して、このホットラインの運営をしています。

フレイザーヘルスから提供しているクライシスラインは二つ。自殺防止ラインとメンタルヘルスのラインです。この自殺防止も含めたホットラインは、24時間サービスで、最大140ヶ国語での対応可能だそうです。
BC州の人口が現在500万人ちょっと。そこに6億ちょっとの資金が自殺防止のホットラインサービスに投入されているようです。

フレイザーヘルス・クライシス・ラインとして、NPOオプション・コミュニティ・サービスのサイトBC州のヘルスリンクに掲載されています。ボランティアの募集チラシはこちら英語)。

カナダBC州のクライシスラインから見えてきたこと

こちらのチラシや募集要項を見ると、ボランティアの役割はじめ、ボランティア相談員になると、どんなことを得ることができるのかが、かなり明確に書かれています。そこは日本の曖昧な感じと違うなと思いました。

まずはボランティアの任務、役割については・・・
感情的サポート
危機介入
リスクアセスメント
必要に応じて適切なサービスへと繋げる(リファーラル)

フロントラインでの役割ですね。この最後の必要なサービスへ繋げる、ということはとても大事だと思います。

そのほかに明確にされているのが、応募できる人の条件とボランティアに求められる業務時間です。条件はかなり長々書いてあります。長いので引用は控えますが、こちら英語)に書かれています。

応募資格として18歳以上であり、犯罪歴がないことが必須(こちらでは必ず犯罪歴がないことを証明しなければいけない→警察署に行くと証明書を発行してくれる)、経験なしでもOK、などがあります。あとは英語でコミュニケーションができること、ベーシックなPCスキルや、信頼性・ノン・ジャッジメントの姿勢など、様々書かれています。意外に細かい・笑。これはボランティアだけではなく、仕事を応募する際にも、応募要項には、条件がたくさん書かれています。

こちらのクライシスラインは、相談員になった暁には、最低200時間の業務義務が課されます。その200時間を稼ぐには、1週間に4時間のボランティア時間、もしくは、2週間の間に8時間を満たせば良いとなっています。200時間というと、計算するとだいたい1年。最低1年は、ボランティアとして活動できる人を募集している、ということも明確に書かれています。

またボランティアになると、何を得ることができるのか、というのも明確に書かれています。それらは、新しい知識・スキル取得(ボランティアになるための危機介入に対応する研修は、無料で受けることができます)、関心や興味が近い仲間との出会いや、やり甲斐の他に、団体へ就職できる機会(就労チャンス)、大学などへ進学に有利な経験、仕事を得るときに必要なリフェレンスや実務経験になることも明記されています。

カナダ社会の中のボランティアの位置付け

カナダでボランティアをする意味は、上記の太文字にした部分も、結構大きいと思います(アメリカもそうだと思います)。というのも、北米ではボランティア経験も、お金をもらって仕事をした経験と同じくらい、価値ある経験として評価されます。特に、メンタルヘルスの領域では、このようなホットラインの経験は大きいでしょう。しかも、ボランティアになるための研修費は無料なので、敷居は高くないと思います。無償で働く代わりに、知識とスキルを得ることができる。ボランティアをするからこそのメリットですね。私自身も、DVのクライシスラインで1年半ボランティアをした経験があるのですが、そこで学んだ経験は今でも生かされています。

ですので、将来、保健福祉関連、もしくは何らかの援助の仕事に携わってみたい人、今勉強中の学生や、関連の職種にすでについている人で経験値をあげたい人、また就職チャンスを掴みたい人などのも、このボランティア相談員のターゲット層ということになります。あとカナダでは、私もそうだったのですが、新しく移民として暮らし始めたときに、ボランティアを通して、いろんな人と出会い、そこから仕事につながる、ということがあります。なので、そういった人たちもターゲットでしょう。

これは余談なのですが、カナダで仕事を探すときに、カナダでの実務経験のある人・・という理不尽な要件がよくあります。これによって現地に来たばかりの新移民は、自国で経験値が高くでも、カナダでの経験がまだないので、自分がやりたい職種で仕事が見つからない時もあり、ケースによっては辛いです。それでまずはボランティアをやってみる、、ということも多いです。

ここはカナダの問題で、高い能力を持つ人材が生かされていない、という事が時々あります・汗 有名なのが、タクシーでなんらかの発作が起こっても、カナダだったら助かる確率が高い、、なんて言われたりしています。自国で医者だった人が、カナダで医師免許の書き換えができず、結局タクシーの運転手をやっている、そういう移民がいるよ、という皮肉っています。

ちょっと話が脱線しましたが、このように、無償の労働を提供する代わりに(それも期間限定:このポジションの場合は最低1年やれば良い)、経験値を上げたり、就職に有利なリフェレンスや経験を得る事、また知識やスキルを無料で得ることができる、ということなのです。やり甲斐や精神的な満足以外でも、得ることは多い事から、自然とターゲット層も幅広くなるのかなと思います。

北米でのボランティアの位置付けは、このようにお互いが必要とすることを満たし合う関係性であることから(ボランティアのGiveと得られるもの、そして業務内容と求められる労働時間のバランスは比較的取れている)、より対等な関係性で成り立っていると感じます。

二つのサービスを比較して見えてきたこと

東京にあるいのちの電話と、BC州のホットラインのを、ウェブサイトから見えるものを比較しただけですが(チラシ、募集要項、事業レポートなど)、東京いのちの電話相談員と、カナダBC州のクライシスラインの方たちのボランティアの位置付けが大きく違うなというのが、まずは印象的でした。

そのほか、助成金など公的資金や事業規模の違いも大きいなと思いました。あの大都会東京に、いのちの電話だけが電話ホットライン(もしくはチャットなど)の事業をしているの?と一瞬思いましたが、もちろん調べると実際はそうではなくて、いくつかの団体が同じような相談事業をしているようです。

東京はいくつかの団体が独立してサービスを提供

東京の場合は、いのちの電話だけではなく、その他にも電話やチャットによるサービスがありました。東京都は福祉保健局のウェブサイトには、こころの悩み(しにたい、消えてしまいたい…)についてとして、いくつかのホットラインを掲載しています。この『しにたい・・消えてしまいたい・・・』という項目が、自殺対策のサービスかなと思ったので、ここに注目しました。

掲載されている団体を調べると、お給料をもらえる団体もありました。ボランティアではなく、危機介入というフロントラインでの仕事に就けるというものです。このように、団体によっては、ボランティアではない形態をとっているようですし、しかも心理やソーシャルワーカーなどの保健福祉に関わる資格の人を求めている団体もありました。その中でも、#いのちSOSは、厚生労働省の「自殺防止対策補助事業」とのことなので、公的資金が投入されて立ち上がった事業なのかなと思います。この事業では、相談員へのお給料が出るようです。

ただ・・・ここでちょっと疑問に感じたのは、新事業を立ち上げる必要はあったのか?ということです。いのちの電話のように歴史のある団体(全国に広がっている団体)と提携した事業ができたのでは?と思いました。いのちの電話相談員の中には、かなり経験のある相談員も多数いるはずです。ここを母体に、さらに相談員の研修に磨きをかけて、ボランティアだけではなく、経験の長い人はスタッフとして雇ったり、そのほかのスタッフ、スーパーバイザーに心理職を雇って・・という風に、様々アレンジできたような気もしました。

様々な事情があったのかもれませんが・・・
東京都には、自殺防止に関わる独立した団体がいくつもあり、なんだかわかりにくいな・・と正直思いました。それも、その仕組みに統一性とか一貫した印象は感じられませんでした。もっと統合して、シンプルかつスッキリと、わかりやすくサービスを提供したら良いのに、と思いました。

BC州のシンプルな福祉システム

カナダBC州は、自殺以外のクライシスラインはもちろんありますし(例えば性暴力など)、対象や問題によって(例えばシニア、児童・青年向け・家族、移民、差別)連絡できる団体やホットラインはあります。

ただ自殺防止に特化するならば、このフレイザーヘルスのホットラインのみでした。(二つの番号があるのですが、繋がる先はこのフレイザーヘルスのホットラインの相談員のようです)シンプルでわかりやすいというのが印象です。

カナダに住んでから思うのは、福祉のシステムがとてもわかりやいということ。公的機関(省庁や医療区域の病院)と公立学校、地域センターと、その地域にあるNPOなどの団体がつながっています。政府から公的資金が出ているプログラムもあり、NPOが委託してそのプログラムを請け負っていたりします。その中には家族支援もそうですが、メンタルヘルスのサービスや虐待・トラウマに対応するプログラムもあります。

今回のホットラインも、フレイザーヘルスから公的な資金を地域のNPOに委託して事業をしていました。このようなNPOは、様々な福祉プログラムがあるのですが、それぞれのプログラムは、個人からだけではなく、カナダBC州の様々な公的機関からも資金が出ていて、それで成り立っているプログラムが数多くあります。

今後の課題:日本のメンタスヘルスシステムについて

今回、カナダと日本のボランティアの応募などを見比べて、それぞれのボランティアに求めるもの、ボランティが得ることができることの違いや、またそこからボランティアの立ち位置や、その地域におけるサービスの仕組みなどが浮かび上がってきました。

いのちの電話相談員になりたい人を増やすには、やはり今までのやり方を変えていった方が良いのではないかなと思います。1年半という長い研修を短くできないのか?またもっと公的資金を得て、研修費をもっと安く(もしくは無料)にするべきではないか?とも思います。何十年もやっているので、ベテランさんをスタッフとして雇っても良いかなと思います。

とはいえ、それを可能にするには、公的資金ですね。そうなると、いのちの電話だけの問題ではなく、東京都(もしくは日本)のメンタルヘルス連携システムをシンプルにまとめて、構築し直すべきだと思います。しかし、それをするにも、メンタルヘルスについて、社会の中に共通理解がなければ、構築することも難しいのではないか?という疑問が浮かびます。

「相談業務」とはなにか? 
「相談業務」に従事する人は、ちょっと話を聞いてあげる人なのか?それともクライシスに対応する危機介入する人たちなのか?メンタルヘルスを扱う人なのか? 1on1的な「聴く」の人たちなのか?日本ではやたら「聴く」ことにこだわる傾向がありますが、「聴く」だけでメンタルヘルスに関する問題が解決するのか。

日本社会における「相談業務」の意味の幅広さと曖昧さ、乱立した民間資格が、誰が、どのような事をやっていて、その役割の人は、どこまで責任を負うべき範囲なのか、を見えずらくさせていて、それが、「なんとなく、ふんわりとした」曖昧さ・・を生んでいるのではないでしょうか

また、産業領域、学校領域、精神疾患は医療領域など、この縦割り構造も、メンタルヘルスの全体を見えずらくさせているのではないだろうか。
どうしても、日本におけるメンタルヘルスシステムの一貫した全体像がなかなか掴めません。

いのちの電話ボランティア相談員の位置付けも、無償労働にしてはあまりにも荷の重い業務でもあり、役割と責任の不一致もある。それはむしろ、相談員自体を曖昧な立ち位置にさせるものではないか?とも思います。

その延長線上には、メンタルヘルスに関わる人たち、例えば日本の心理士(臨床心理士や公認心理師)の地位や価値なども曖昧になったままなのではと懸念しています。でもそれらは、日本においてのメンタルヘルスの領域が、いまだに見えづらく、そして理解されていないことが根底にあるのではないかとも感じています。

日本からきたクライアントさんの話で一貫しているのは、病院やクリニックに行ったら薬を処方してくれた。それが治療だった、という事がほとんどです。これは医療モデル(メディカルモデル)に偏りすぎていることの現れです。それで病院をたらい回しにされてきた話もよく聞きます。心理療法はあまり根づいていないようですね。いや・・そもそもメンタルヘルスへの理解は浸透していないのではないか?と思います。

24時間ホットラインで電話をかけた人たちは、その後、どのようなサービスへ繋げてもらえるのだろうか?そんな疑問も浮かびます。

そういう意味で、日本社会の今後の課題だと思うのは、メンタスヘルスのシステムをもっと見えやすくし、適切なサービスへアクセスしやすくすることではないかと思います。それには、今以上に、メンタルヘルスに関しての理解を進めなければいけないと思います。

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