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菅総理大臣誕生 省庁に求められる行革

 先日自民党総裁選の投開票が行われ、菅氏377票 岸田氏89票 石破氏68票で菅義偉衆議院議員が第26代自民党総裁に就任しました。菅氏は選出後のあいさつで、「自民党総裁として、およそ8年、総理大臣として7年8か月にわたって、日本のリーダーとして国家・国民のために、尽力いただいた安倍総理大臣に心から感謝を申し上げる」と述べておられました。また、「私の目指す社会像は、『自助、共助、公助、そして絆』だ。役所の縦割りや既得権益、悪しき前例主義を打破して規制改革を進めていく。国民のために働く内閣をつくっていく」と発言されており、行政改革に取り組んでいく姿勢を明らかにされました。

 しかし「具体的に行政改革ってどこの何を改革するの?」と思われた方もいらっしゃると思います。そこで今回は行政改革についてお話していこうと思います。

 そもそも行政改革とは「国や地方の政府の行政機関の組織や機能を改革することである」(Wikipedia参照)というものです。文字通り行政を改めることによって、組織機能をより円滑にすることを目的としています。

 近年行われた行政改革の中で有名なのは橋本・森・小泉内閣の間で行われた中央省庁再編、鳩山・菅(かん)内閣の事業仕分け、第二次安倍内閣で行われた内閣人事局の設置などです。これらについて一度振り返ってみましょう。

 橋本・森・小泉内閣はそれまで内閣の下に合った1府22省庁の行政組織を1府12省庁にまで集約しました。たとえばコロナ対策を担当した厚生労働省は厚生省と労働省が合併した組織で、日本の交通インフラを管轄する国土交通省は運輸省・建設省・国土庁・北海道開発庁の4つもの省庁が合併した組織でした。

 この組織統合によって仕事の効率や、組織の透明性が改善されました。また、民間企業や地方行政に任せられる役割を分担することで、肥大する中央政府のコストを削減することができました。

 中央省庁再編から約10年後、与党自民党が衆議院選挙で歴史的大敗を喫し、野党第一党の民主党が政権を握りました。そして成立した鳩山内閣はマニフェスト(公約)に掲げていた行政改革、事業仕分けを行いました。

 「2位じゃだめなんですか?」このセリフを覚えている方も多いでしょう。鳩山内閣で行政刷新担当務めた蓮舫大臣が、スーパーコンピューター「京」を開発していた理化学研究所の担当者に対して言い放ったセリフです。

 このニュース記事をご覧いただければお分かりの通り「京」は当初、費用対効果の観点から見合った予算で開発が行われているのかと疑問視されていました。そして事業仕分けによって開発予算が削減され、開発日程にも遅れが生じました。
 しかし結果的に「京」は完成後、世界一の性能を誇るスーパーコンピューターとなり、開発過程で性能が大きく見直され、当初の予定よりも良質なスーパーコンピューターが完成しました。これは事業仕分けをなくしてできなかったと思われます。

 民主党政権は2012年の年末に行われた衆議院選挙での大敗によって終わりを告げ、野党第一党の自民党が再び政権に返り咲きました。そして後に憲政史上最長の在任期間となる安倍内閣が誕生しました。

 安倍内閣のスローガンは「戦後レジームからの脱却」でした。レジームというのは日本語で体制と言い、戦後から変わらない自虐史観からの転換を目指していました。

 そして安倍内閣は「アベノミクス」を掲げ、日本経済を復活させる動きを見せました。同時に日本の官僚機構の再編にも着手しました。それが内閣人事局の創設です。

 それまでの官僚制度は、省庁内で幹部人事をコントロールしていました。また、退任した後は「天下り」と呼ばれる人事異動が行われ、生涯にわたって一定の収入を得続けることが可能な環境となっていました。さらに縦割り行政によって、省益のために官僚が仕事をするため、一部の政策が実行しにくくなっていました。

 そこで安倍内閣は内閣府の下に内閣人事局を設置し、省庁の幹部人事を掌握しました。これによって省益のみを追求する官僚などを排し、日本が良くなるための政策を実現しやすくなりました。また、省庁間で人材の異動が円滑になり、適材適所の人事を行うことが可能になりました。

 一方で内閣人事局が創設されたことで、出世を政権に左右されることとなり、顔色をうかがいながら仕事をせざるを得ない状況が生じました。そうした環境は「森友学園問題」や「加計学園問題」、「検事長の任期延長問題」を発生させ、国会運営を停滞させることとなってしまいました。

 改革にはメリットもデメリットも存在します。そのバランスをうまくとって政治は行われるべきだと考えます。新たに誕生する菅内閣は、日本にどれだけのメリットをもたらしてくれるのでしょうか。今後に期待です。

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