なぜ「成長」するのか?
山口周氏がモリス・バーマンの『神経症的な美しさ:アウトサイダーがみた日本』を勧めていたので読んだのだが、とても腑に落ちた。
バーマンは、資本主義における拡張至高主義からの脱却が必要と述べている。
例えば、ぼくはスタートアップにいるが、スタートアップでは成長こそが正義だ。
成長して、IPOやM&Aという形でexitして投資家に還元する。
成長できないスタートアップは「落ちこぼれ」と見なされる。だけど、時々感じていたのは「何のために成長しなければならないのか?」ということ。
成長してIPOさせたい、ミッションを実現したい、キャリアにつなげたい、そういう個人的な想いはあるにはある。
成長させていくことはある種の中毒性があり、楽しさもある。ロールプレイングゲームでキャラクターのレベル上げをしているのに近い感覚かもしれない。
でもこれらは、成長させなければならない理由ではないはずだ。
スタートアップに限らず、もっとマクロな観点で言えば、日本経済もそうだ。
日本の経済成長は他の先進諸国と比較しても停滞しており、これは「良くないこと」とされる。
でもなぜ「良くないこと」なのだろう。(今や日本は世界最高の長寿国家であり、失業率は低く、犯罪率も低いのにも関わらず、成長率がより影響力をもった尺度として語られる)
日本においては、高度経済成長期のかつての成功体験から、未だに成長が素晴らしいものとされ、刷り込まれている。
この本を読んで、「成長」という幻想に囚われすぎていたことに改めて気付かされる。
「成長」の先に豊かさがあるのかどうか、問い直すきっかけとなる一冊としておすすめしたい。
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