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なぜ「成長」するのか?

山口周氏がモリス・バーマンの『神経症的な美しさ:アウトサイダーがみた日本』を勧めていたので読んだのだが、とても腑に落ちた。

▲アメリカとの葛藤のなかで進んできた日本近代。その功罪の原因を探究する。
▲アメリカ型の拡張主義的な資本主義の限界を越える「ポスト資本主義」のモデルに日本はなりうるか?
禅、民芸、京都学派、アート、オタク文化など、広範囲にわたる文化事象を参照しながら、日本人の精神史をアメリカとの接触の中でどう変容してきたかをたどり、〈日本的なるもの〉の可能性を精査する。『デカルトからベイトソンへ』の思想家が贈る骨太の日本人論。

バーマンは、資本主義における拡張至高主義からの脱却が必要と述べている。

例えば、ぼくはスタートアップにいるが、スタートアップでは成長こそが正義だ。
成長して、IPOやM&Aという形でexitして投資家に還元する。
成長できないスタートアップは「落ちこぼれ」と見なされる。だけど、時々感じていたのは「何のために成長しなければならないのか?」ということ。
成長してIPOさせたい、ミッションを実現したい、キャリアにつなげたい、そういう個人的な想いはあるにはある。
成長させていくことはある種の中毒性があり、楽しさもある。ロールプレイングゲームでキャラクターのレベル上げをしているのに近い感覚かもしれない。
でもこれらは、成長させなければならない理由ではないはずだ。

スタートアップに限らず、もっとマクロな観点で言えば、日本経済もそうだ。
日本の経済成長は他の先進諸国と比較しても停滞しており、これは「良くないこと」とされる。
でもなぜ「良くないこと」なのだろう。(今や日本は世界最高の長寿国家であり、失業率は低く、犯罪率も低いのにも関わらず、成長率がより影響力をもった尺度として語られる)

日本においては、高度経済成長期のかつての成功体験から、未だに成長が素晴らしいものとされ、刷り込まれている。
この本を読んで、「成長」という幻想に囚われすぎていたことに改めて気付かされる。
「成長」の先に豊かさがあるのかどうか、問い直すきっかけとなる一冊としておすすめしたい。

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