異世界(Une femme est une femme)
「女性のライフサイクル無視の歴史は長い」と明示されている通り、ここに私たちのための服は用意されていない。なのに、何とか選んで工夫して使え、という暴力を振るわれる意味がわからない。過去に私たちが受けた屈辱を追体験、再体験させられる深遠な狙いを浅学菲才のため掴み切れない無知蒙昧な女は呆然と立ち尽くし、痛みだけを感じている。
過度に男性化された社会に適応しようともがいた挙句壊れ、それからずっとこの拘束具を剥ぎ取るための苦闘を強いられてきた女として、それでも何か選べと強要されるのなら、ヒンドゥーの装いを選ぶ。そして棄てる。「棄てる」という選択肢が示されているという点のみに置いて選ぶ。
私は私のための服を着たい。
それが望めないのなら、私のためではない服より裸で生きることを選ぶ。乞食になる。無理やり着せられることを拒否してそこにそのまま立つ。傷だらけの体から目を背けさせないように立ちはだかる。
でも彼らはまた無視をするのだろう。
「誰がこんなことを」と声をかけてくる正義漢も中には出てくるけれども「貴方ですよ」と笑顔で告げると、憤ったりバツが悪そうに後ずさって行く姿を何千年も見せつけられた。
英雄になり損ねた人間は、ちょっとした言い訳で贖罪すると、踏みにじられた私たちのことをすぐ忘れ、無視をする群れに戻る。
私はまた取り残される。彼らが無自覚に何千年も享受しているものを望むのは大罪なのだろうか。
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