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SS『頭にあたるつり輪』

組章が光ると、笑いが漏れた。楽観的なのは僕の悪い所だ。実害はないし、生きていく分にはなんの障害もない。
カラッと笑うところが好きだって言ってくれる人も多い。先生にはもっと真剣に考えろと言われるけど、深刻になってる同期を見ると馬鹿だなぁと思う。まあそれも愛おしいけども、自分にはあんな苦しみを課したくない。
世界はなるようにしかならない。
通天閣が見えそうな駅で遅延していることに苛立つのは無意味だ。ましてや、月曜日。毎週のように止まるのはやっぱりそういう理由か。
朝のテストが無くなることは厭わない。むしろ、喜んでしまうのは悪いことか。満点を取らなきゃ放課後呼び出されて再テストだなんて間違っている。僕らの貴重な青春の1ページをなんだと思ってるんだろう。先生も仕事がふえるだけだし、帰るのが遅くなるのは嫌じゃないのかな。どっちにしろ、帰れないのか。部活動の面倒見ないとだもんな。
教師にだけはなりたくない。
世間ではさも安定した職業、就職が楽だなんて思われてるけど、そんなの嘘っぱちだ。大学に入ったら授業の量が多すぎてパンクする。本当にやりたいことなど出来ずに終わるにちがいない。なのに、就職しても自分の時間を持てない?
今まで出会った先生を思い出す。
誰も幸せそうじゃないじゃんか。
空は真っ青だけど、構内放送は騒がしく鳴り響いている。
接触事故。
さっき肩をぶつけた性犯罪者は死ななかったのかな。残念だ。
痴漢をすることに必死になってるから、軸が甘いんだよ。ちょっと押せば、軽く体勢が崩れてそのまま線路に落ちてしまう。可哀想な人。
いつも被害を受けてたセーラー服の女の子の口角が上がったのは、嬉しかった。日々の恨みから解放された彼女たちは、生きやすくなるだろう。
大丈夫。誰にもバレない。死に値する人は居るんだ。

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