徒然 私は老人が怖い
私は老人に優しくできない悪い人間だ。
介護とか出来る気がしない。
介護士の方を尊敬するけど、私には無理なことだった。
そんな自分が嫌いだけど、
世間的には悪い人間だけど、
どうしても老人が怖い。
白髪の老人、それも女性がいたら私は嫌な気持ちになり避けたくなる。
それは何故か。
私は祖母たちに愛されなかったからだろう。
父方の祖母とは4歳から同居をしていた。2世帯住宅を立てて、ドアを隔てて暮らしていた。
祖母は認知症であった。
彼女は夫を早くに亡くし、男3人を育て上げた。外面はいいけど、本当の友達はいないみたいな人だったらしい。
だからか、女のことが嫌いだった。
私と母は虐げられた。
家に1番いた私達は彼女の面倒を見なければならないが、ご飯を出すのもただ庭を通るだけでも罵倒をされるような日々だった。
「女のくせに」って毎日言われてた気がする。だから、私は女である自分が嫌いになった。
母方の祖父母には、5人孫がいるが私以外全員男だった。母は実家から離れた場所である大阪に住んだから、私と兄も年に1回逢いに行くようなレベルだ。他の3人は祖父母と同じ県内に住んでいるから、私たちよりも彼らは仲が深い。
だからか、祖母は私という女子の扱いがわからなかったのだろう。
いつ行っても、兄にばかり愛想が良かった。兄のことが可愛くて仕方がないという感じは、幼心にも伝わった。
そりゃまあ、兄は出来がいい。凄い良い人だし、賢いし、優しいし、性格だっていい。そりゃ、可愛いでしょう。私も可愛い兄だと思ってるし大好きだ。圧倒的に敵わない存在だ。
いつだって、「お兄ちゃんとは違って」と思われるのは仕方ない。「生意気だ」と言われるのもしょうがない。私は出来が悪いだろう。
それでも、愛想良くしてたつもりだ。けれど、それでもダメだそうで、私は上手く祖母と馴染めなかった。
未だに祖母と喋るのは苦痛だ。
いや、最近やっと私も大人になれたのか一線を引いてより愛想良くなれたと思う。
大学でいい成績を収めることが出来たから、評価してくれたし。
それでいいんだろう。
だけど、私は老人が怖い。
父方の祖母のことを思い出すから、白髪のおばあちゃんが怖い。
老いて、何も覚えていられなくなるのが怖い。怒りっぽくなるのが怖い。まともに歩けなくなるのが怖い。視野が狭くなるのが怖い。
怖くて仕方がない。
兄は「可愛いおじいちゃんになりたい」と言う。
私はそんなこと考えることが出来ない。老いたくない。老人になる前に死にたい。出来るなら40やそこら辺で死なないと、自分がああなってしまうのではないかと心底恐怖なんだ。
その恐怖はいつからあるのだろうか。
きっと、父方の祖母が人嫌いで愛想がいい人間だったからだろう。
母は「とかげと似てる」って言ったように思う。
そこには警告の意があったんだろうと思う。母には悪意なんてなかったと思う。
だけど、その言葉を私は、アルツハイマーになり暴れ暴言を吐き散らす人間になるという意味に取ってしまった。
私は、人間が嫌いだった。だけど、愛想がいい。
小学生の時からそんな人間だったんだろう。自覚はあるし、自分の中で、祖母との共通点を感じてしまったんだ。
アルツハイマーになることが人生で1番の恐怖だ。死ぬなら早く死にたい。
私はきっとアルツハイマーになってしまうから。
そして、子供や孫に暴言を吐き散らし、苦しめてしまうから。
自分の中にはその要素がある。
怖くて仕方がない。
きっとなってしまう。
道行く老人を見ていると、自分の行く先を見ているようで恐怖する。
ああはなりたくない。
って、ずっと思っていたから。
なのに、なるしかない。
私たちは絶対に老いる。決定事項なんだ。
ごめんなさい。
私は老人が怖いんだ。
表面的には優しくするけど、きっと本質的には優しくできない。心の底から嫌悪してしまっている。
老人に優しくされたことがない。
揉めた男子のお爺さんに「女のくせに生意気だ」と怒鳴られ、
町の祭りでも近所のお婆さんに「ガキのくせに」と怒鳴られ、
何もしてなくても彼らは自分勝手に怒りを撒き散らす。
そんなふうに思いたくなくても、幼少期の恐怖心が勝ってしまう。嫌悪することで自分を守ろうとしているのかもしれない。
嫌悪することを私は許す。
あんな目に遭ったのだから、仕方がない。私は老人が嫌いな自分を許す。だから、彼らには近づかない。高齢者福祉からは目を背けさせてもらう。
その代わりに、児童福祉を沢山行おうと思うんだ。
福祉活動は大事な事だ。
子供たちを愛することは出来る。
子供が嫌いな人だって沢山いると思うから、その人たちの分も私は動きたいと思う。
だから、私の代わりに高齢者の福祉活動を誰かしてください。
老人が悪いわけじゃない。
ただ、私は自分の中の恐怖心から逃げることが出来ない。
沢山のいいお婆さん、お爺さんがいるに違いない。きっと沢山いる。大丈夫。
本当にごめんなさい。
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