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記事『二次的著作物において大切な心構え』

【著作権法についてのレポート】
 コンテンツビジネスにおける二次的著作物による広がりを以下の点に留意しながら述べなさい。
 ①著作物の定義/②二次的著作物の事例/③著作財産権/④著作人格権
 1000文字まで。


 コンテンツビジネスにおける二次的著作物の制作で大事な心構えは、原著作物の著作者へのリスペクトであるのではないか。

2009年に脚本家とシナリオ協会が、脚本の原作となった作品の原作者を提訴した。請求内容は、脚本「やわらかい生活」を『年鑑代表シナリオ集』に収録、出版することを妨害するな、というものが主である。被告は映画化にともない著作財産権などを委託管理している出版社と映画プロデューサーの所属する映画製作会社との間で原作使用許諾契約を結んでいるが、脚本の内容に納得していなかった。設定ストーリーが原作から逸脱しており、書き直しても問題があったため「原作に忠実な脚本に変更するのでなければ、映画化の話は中止したい」と伝えた上で被告は対面での会議、そこに脚本家も同席するという条件のもと話を進めた。しかし、プロデューサーの勝手な意向で脚本家をその場に呼ぶことはなかったとされる。

この一件は、ここで当人同士の話し合いを行わなかったことから大事になったのではないか。脚本が改善されないことへの不信感を募らせた結果、原作者である被告は脚本を文字として残すのを許可しなかった。

一方、原告である脚本家は脚本は自分の創作性を発揮するものであり、表現の自由が尊重されるべきだと訴える。そして、それを理解していないと被告を「横暴だ」「見下している」などと激しい言葉を用いて攻撃した。ここに、原作者へのリスペクトは見受けられない。また、陳述書で「シナリオは原作のためではなく、映画のために書かれるものです。そこが分らない原作者は、映画化の申し入れを拒絶するべきだと思います」とも言っているため、脚色を「他人の作品をダシにして自己を語る」という批評に近いと思っている原告の思想として、脚本が原作の二次的著作物であるという理解が見出せない。確かに、脚本も創造性があり二次的著作物として著作権は認められるが、あくまでも原作者の著作者人格権を守る形での自由な表現が許されているのであり、被告は一貫して脚本に納得していなかった。その時、原作を使うのだから原作者と納得できるような両者の思いを込められるように歩み寄る必要があった。

別件であるがドラクエ訴訟でも同じように使用した作品、言葉の作者に対する誠意さえあれば問題とならなかったであろう。二次的著作物は原著作者との歩み寄りがあってこそ健全に拡大するのではないか。(999文字)

【参考資料】
荒井 VS 絲山出版妨害禁止請求事件 http://song-deborah.com/copycase5/ (2021/01/27)

2012-07-24 「やわらかい生活」脚本事件と二次的著作物 - 弁護士法人クラフトマン IT・技術・特許・商標に強い法律事務所(東京丸の内・横浜) (ishioroshi.com) (2021/01/27)

映画「やわらかい生活」脚本事件-著作権 出版妨害禁止等請求事件判決(知的財産裁判例集)- : 駒沢公園行政書士事務所日記 (livedoor.biz) (2021/01/27)

「キミたち一人ひとりが勇者」 ドラクエV主人公の名付け親・久美沙織さんが「スクエニ」を訴えた理由(弁護士ドットコム) - Yahoo!ニュース (2021/01/27)

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