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科学文献における「強みの3つの学派」はコレだ! ~ストレングス・ファインダーとVIAとStrength Profile~

はじめに

こんにちは。紀藤です。本記事にお越しくださり、ありがとうございます。
さて、本日のご紹介の強み論文のテーマは「強みの3つの学派」について。強みを測定するアセスメントには「クリフトンストレングス(ストレングス・ファインダー)」「VIA」「Strength Profile」がありますが、その概要・開発背景・強みの定義の仕方を、以下論文を参考に整理をしてみました。それでは早速まいりましょう!

<ご紹介の論文>
『職場における強みの活用:文献レビュー』第3章 科学文献における強み
Miglianico, Marine, Philippe Dubreuil, Paule Miquelon, Arnold B. Bakker, and Charles Martin-Krumm. 2020. “Strength Use in the Workplace: A Literature Review.” Journal of Happiness Studies 21 (2): 737–64.


強みの3つのアセスメント、何が違うのか?

現在、強みを知るためのアセスメントが3つあります。

(1)クリフトンストレングス(ストレングス・ファインダー)
(2)VIA-IS(Value in Action Inventory of Strength)
(3)Strength Profile


の3つです。(ちなみに1、2は日本語で受検が可能。3、は英語他言語での受検となります)

日本では、ストレングス・ファインダーが多く知られている印象。しかし他にも強みを測定するアセスメントはあるのです。

とはいえ「3つのアセスメント、何がどう違うのかを端的説明して?」
加えて「歴史と科学的なデータを含めて、丁寧にお願いしますよ!」なんて追加オーダーもいただいたとしたら(そんな人いないと思うけど)、頭を悩ませてしまいそうです。

「どことなく似ているものの違いを明確に語る」というのは難易度が高いもの。そんな中で、今回ご紹介の論文では、その違いについて、簡潔にまとめてくれていました。

以下、論文のはじめに部分より、著書の語っていた内容を要約いたします。

・科学的な文献を調べると、強みの運動は3つの主要な学派によって長い時間をかけて発展してきたことがわかる。

・これらの3つの学派は相互に影響を及ぼし合っている。強みを特徴づけるための定義、分類、測定方法についても同等であるが若干異なるものを提案している。
 
・これら3つの研究の流れや目指すものを統合することで、この分野をよりよく理解し、包括的な視点から、強みの概念にアプローチすることが可能になるであろう。

「強みの分野をよく理解し、包括的な視点」を手に入れていこうぜ、ということです。なるほど、その気になってきました。ということで以下、順に整理してまいりましょう!

(1)ストレングス・ファインダー

最初は、米Gallup社のストレングス・ファインダー。これは「最初の学派(2001年)」とされています。以下、「ツールの特徴・研究方法・信頼性」→「(ストレングス・ファインダーでいう)強みの定義」→「強みの種類」について整理します。

ツールの特徴・研究方法・信頼性

◯ツールの特徴
・名称:クリフトンストレングス(ストレングス・ファインダー)
・177問の質問で回答
卓越したパフォーマンスの基盤となる「34種類の資質」で分類

◯研究方法
・クリフトンとその同僚(2001)(ギャラップ研究所)によって開発された。
・数十年にわたってさまざまな分野の卓越性を研究し、卓越したパフォーマンスの基盤となる34の才能を特定した。
・何百もの才能のテーマを特定し、それらを 34の主要なテーマに絞り込んだ (Buckingham and Clifton 2001; Clifton et al. 2002)。
 ストレングス・ファインダーは、質問票を通じて、個人が自分の主要な才能を特定できるように構築された(Buck-ingham and Clifton 2001)。その後、改訂版のストレングスファインダー2.0が開発された(Rath 2007)

◯信頼性について
・複数のサンプル(n = 2219)で実施された信頼性調査によると、クロンバックのアルファ(※)推定値は「0.52~0.78」の間であった。
(※クロンバックのアルファ(Cronbach's alpha)とは:テストやアンケートなどの一貫性や信頼性を評価するための統計的指標の一つです。ちなみにクロンバックのアルファの一般的な目安としては、「0.7以上であれば信頼が高い」という説明もあります。→「心理学用語の学習」より)

「強み」の定義

・強みとは「ある活動において常に完璧に近いパフォーマンスを発揮すること」と定義した。
・才能とは「自然に繰り返される思考、感情、行動のパターン」 と定義される。
・(強みに向けた)能力開発の鍵は、才能を特定し、知識(事実や経験)とスキル(活動のステップ)を開発することによって、才能を洗練させることにあるとした(Asplund et al.2014)。

「強み」の種類

ストレングス・ファインダーでは、「卓越したパフォーマンスの基盤となる34の才能(資質=強みのもと)」を、以下のように特定した。

論文からの引用です
日本語版(著者にて作成)

(2)VIA-IS

2つ目の学派が、2004年に発表された、ポジティブ心理学のセリグマン博士を含め55名の開発者が関わった「VIA」です。

ツールの特徴・研究方法・信頼性

◯ツールの特徴
・名称:VIA-IS(Value in Action Inventory of Strength)
・240問の質問で回答
人間的な美徳(Charactor Strength)の「24種類」で分類

◯研究方法
・ピーターソンとセリグマン(2004)(ペンシルバニア大学)
・人間が開花するための強みと美徳を説明し、分類している(Seligman et al. 2005)。この分類を確立するために、著者らは世界中の哲学的、宗教的、心理論理的な文献を研究した。
・性格的強みを「道徳的美徳を定義する中核的な心理的要素である」と定義した。

◯信頼性について
・クロンバックのアルファ推定値は.75から.90の範囲であった。
(※強みのアセスメントの中では、最も信頼性が高いアセスメントとされています)

「強み」の定義

・2つ目の学派における「性格の強み」を定義する基準は10項目とする(Peterson and Seligman 2004)
 (1)自分自身と他者の成長に貢献する
 (2)道徳的に評価されるものであること
 (3)その使用は他者を萎縮させないこと
 (4)その反対は否定的であること
 (5)認知、感情、行動の各レベルで現れるものであること
 (6)他の肯定的特質とは区別されるものであること
 (7)合意の範疇で具現化されるものであること
 (8)天才に見られるものであること
 (9)人によっては存在しないこともあること
 (10)異なる文化でも望まれ、培われるものであること

「強み」の種類

VIAでは、人間的な美徳すなわち、「性格特性的な強み(Charactor Strength)」という視点で24種類で分類をしました。

論文より
日本語版(著者にて作成)

(3)Strength Profile

3つ目の学派が、2008年、Linelyによって開発されたStrength Profileです。これは、「強み」だけではなく「弱み」なども含んで結果が出るのが特徴です(日本語での受検はなし)。

ツールの特徴・研究方法・信頼性

◯ツールの特徴
・名称:Strength Profile(旧:Realize2)
・180問の質問で回答
・エネルギー・パフォーマンス・使用頻度の3つの側面から「60の強み」を評価
・レポートは属性を「実現された強み」、「実現されていない強み」、「学習された行動」、「弱み」の4つのカテゴリーに分類して結果を提供する。

◯研究方法
・アレックス・リンレイ(Linley)(応用ポジティブ心理学センター)
・研究方法については記載がありませんでした。

◯信頼性について
・クロンバックのアルファ推定値は.68から.90の範囲であった。

「強み」の定義

・強みを「特定の行動様式、思考様式、感情様式に対する既存の能力であり、その使用者にとって本物であり、活力を与えるものであり、最適な機能、発達、パフォーマンスを可能にするもの」と定義(Linley 2008)。

・強みのアプローチの5つの基本原則がある
(1)強みアプローチは、人間の中で何が機能しているかに焦点を当てる
(2)強みは人間の本質の一部であり、誰もがいくつか持っている
(3)個人の潜在的な能力開発の最大の領域は、その人の強みにある
(4)成功は、強みも最大限に活用した場合にのみ、弱みを修正することによって達成される
(5)個人の強みに焦点を当てることは、最大の違いを生み出すために行う最小のことである

「強み」の種類

Strength Profileでは、以下60種類の強みが紹介されています。
「勇気」や「好奇心」など、性格特性的に似た強みに加えて、「時間の有効活用」「書く力」「フィードバック」「傾聴」など具体的な行動項目も入っているのが特徴のように感じられます。

・アクション(Action)・熟考力(Incubator)
・順守(Adherence)・革新者(Innovation)
・冒険(Adventure)・本来感(Authenticity)
・立ち直り(Bounce back)・促進者(触媒)(Catalyst)
・平常心(Centered)・変化者(Change Agent)
・思いやり(Compassion)・競争力(Competitive)
・繋ぐ力(Connector)・逆転の発想力(Counterpoint)
・勇気(Courage)・創造性(Creativity)
・好奇心(Curiosity)・詳細(Detail)
・向上心(Drive)・自信(Efficacy)
・感情的な認識(Emotional Awareness)・共感(Empathic Connection)
・成功要因(Enabler)・平等(Equality)
・肯定者(Esteem Builder)・伝達力(Explainer)
・フィードバック(Feedback)・感謝(Gratitude)
・成長(Growth)・謙虚さ(Humility)
・ユーモア(Humor)・改善者(Improver)
・決断力(Judgement)・持続させる力(Legacy)
・傾聴(Listener)・ミッション(Mission)
・倫理基準(Moral Compass)・物語力(Narrator)
・楽観主義(Optimism)・整理(Order)
・粘り強さ(Persistence)・責任感(Personal Responsibility)
・ユニークさ(Personalization)・説得力(Persuasion)
・計画力(Planful)・問題予防力(Prevention)
・プライド(Pride)・関係作り力(Rapport Builder)
・再構築(Reconfiguration)・関係深化力(Relationship Deepener)
・回復力(Resilience)・問題解決力(Resolver)
・書く力(Scribe)・自己理解(Self-awareness)
・サービス精神(Service)・注目(Spotlight)
・全体視(Strategic Awareness)・時間の有効活用(Time Optimizer)
・無条件の受容(Unconditionality)・労働倫理観(Work Ethic)

まとめ

本日は、「科学文献による強みの学派」ということで、ストレングス・ファインダー、VIA、Strength Profileをご紹介いたしました。

まず、こうしたアセスメントは「占いと何が違うの?」とツッコミをもらうこともしばしばありますが、”科学文献による”ということで、その開発背景や信頼性などが明確に言葉にされることで、組織でも活用しやすくなると感じます。

また、特定のツールに詳しくなるとそれ以外の選択肢が見えなくなる、ということも起こりがちです。「ストレングス・ファインダー大好き!」と盛り上がりすぎると、好きな人とそうでもない人の間にフォルトライン(断層)ができてしまいます。結果的に「強みを活用を拡げていく」というゴールに到達しづらくなる可能性もあるでしょう。

そうした中で「3つの研究の流れや目指すものを統合することで、強みの分野をより理解し、包括的な視点から、アプローチできる」というのは納得であり、強みの代表的なアセスメントを概観できる論文だな、と思いました。

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