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ディレクション業務は細分化して仲間を頼ってみてね

今回はディレクションの話題です。例としてUIデザイナーとりあげていますが、3Dアセットでも2Dイラストであろうと置き換えが出来るので参考になれば幸いです。

前置き

クリエイティブ現場においてはよくある葛藤ですが、どこまで厳格に仕様やルール化が必要で、どこからがルーティン化出来る量産か、ケースバイケースなので明確な正解があるものではないと考えています。

インターネットの世界中で散々言語化がされているので、私もそれなりに書籍やWeb記事を読み漁りましたが、自身で経験を積んでも積んでも、結局のところ定形や正解は無いのです。

ただ、スキームやフレームといった考え方や検討を進める型は存在するのでご紹介します。

まず、今回お話する上で、私が述べる【ディレクター】と【担当者】役割の定義をすると、それぞれ以下のようなイメージです。

業務範囲と言葉の定義

〇〇ディレクター

その担当領域を指揮統括し、対コストにおける最高品質を担保する人


知識と経験量… 過去のプロジェクト、現場経験、担当領域の知見

権力や統率力… チーム内での発言力、他者に伝え率いる力

意思決定力 … 明快な判断軸をもとに、都度適正な判断をする力

伝達、指導力… 制作に必要な仕様や意思を言語化し伝える力

担当者
スキル      … 与えられた業務遂行のための必要な能力全般
作業スピード   … 時間単位あたりの制作出来る物量
確保出来る作業時間… 業務を行える総作業時間
仕様への理解力  … 受けた伝達に対し、正しく読み解ける力

チームは生き物

このそれぞれの力量に、更に双方の信頼や関係値、モチベーション、
プロジェクトのおかれている状況や、
クリエイターであれば特に価値観の差が大きく影響してきます。

更にパーソナリティとして、伝え方がそれぞれ合う合わない、言語化能力の差、おかれてきた経験や、雇用形態、立場が全く異なります。

また、制作現場にはその時々のゆらぎが必要で、進行速度を機械的に一定にすることは出来ず、時間軸上のタイミングの抜き差しも非常に重要です。

つまるところ、視座を上げて全体感を意識すればするほど、
物事の進行は非常に有機的で、プロジェクトは生き物そのものです。

なので、ディレクションというものには定形が存在しないのです。

ではどうチームをまとめるか

今の私のチーム運営方針まとめ方

・コアとなるものは明快に指標を作り【徹底的に可視化】
・【超えては駄目なラインや最低限の仕様】をルールにする
・ゴールや目的地は【定点で観測し続けて】進捗を周知する

あとはあいまいなで良いものはあいまいに、組織の揺らぎ、遊びとしておおらかに許容する。というスタンスです。

この上で大事なことが物事のコアという考え方です。前述のようにチームは生き物なので、トップダウンで定形の進め方を押し付けたところで、多くの場合どこかに歪が生まれます。

多くの意思決定は有機的なつながりでに行われるべきなのです。
(トップダウンが良い場合もあるのでこれはまた別の機会にまとめます)

ディレクターと担当者の信頼関係が不足していた実例

とあるゲームのUIデザイナーのチームの体制改善に介入させて頂いた際、どうしてもディレクターが自分一人で決めきるスタンスを崩せず、ボトルネックとなっている状態でした。

「スキルと仕様理解力が信頼できる水準を超えておらず、任せられない」というのが言い分のようですが、対となるルールや明快な仕様があるか?正しく適量の伝達が出来ているかを冷静に調査すると、事実としてやはり不足している状態でした。

先に述べたようにチームは生き物なので、時間の流れと共に適正な意思決定や明確な指揮が都度されていないと、小さな遅れが雪だるまのように膨れ上がっていくものです。それにともなって、信頼関係も損なわれていき、取り返しのつかないケースに発展することがしばしば起こります。

ですので、特に日々の小規模な意思決定においてはウォーターフォールだけにこだわらず、ある程度は裁量や権限を担当に委任していくこと自体が信頼関係を気づいていく上でも重要であると強く意識しています。

全てにおいてコアを明確にし裁量の委任を意識する

これが出来ているコアのしっかりしている組織は本当に強いものです。
何が起きても多少のことなら柔らかく受け止め、不要なものは受け流すことが出来て事業としても無駄がなく長く安定しています。
組織の新陳代謝も活性で、育成環境としても適しています。

クリエイティブのコア明確化のメソッド

2〜3名のチームでも、以下のメソッドはシンプルでとても有効です。

クリエイティブ制作現場レベルに落とし込むと以下のようになります。

①コアとノンコアを見極める

コア  … コンセプトデザインなど、後工程の指針となるもの
ノンコア… 指針の形成には直接関わらない、量産アセットやデータ仕様

②専門性と標準化に区分ける

専門性 … 定形が無く難易度の高い専門的な判断を必要とするもの
標準化 … 型が決まっているそのアセット以外の判断は必要としないもの

クリエイティブのコアノンコア、専門性と標準化マトリクス

③アウトソーシング量産と仕組化を模索する

量産  … 制作仕様まで明確になっていて切り離し外注化のできるもの
仕組化 … アドリブが不要で、定期的に同等の作業を繰り返せるもの

ノンコアで標準化が出来ている業務は量産や仕組化が出来る

前述のゲームのUIデザイナーチームの参考例をあてはめる

前述の「スキルと仕様理解力が信頼できる水準を超えておらず、任せられない」というのも、言葉の意味としては決して間違いではなく、任せられないディレクターが悪いわけではないのです。

ひとくくりに「全てが任せられない」だけであって、以下のように切り分けることが可能でした。

・コンセプトデザイン
・デザインルール
・企画要件
・データ仕様
・アセット量産

前述の考え方にあてはめると、以下のようになります。

業務を明確に区分けする

ディレクターが専門性の高いコアさえ抑えることができれば、本質的にはそれ以外はサブディレクターであったり、現場担当が直接企画や組み込み側とやり取りをして業務を遂行させることが出来ます。

なんでも出来る万能の天才が一人で全部抱え込まなくても良い

そもそも座組を検討するうえで、専門性の高いコア業務を一人のディレクターが一人で担当することが難しいケースは多いかと思います。経験やスキルなどなにか不足する要素であったとしても、コア自体は分担して連携し業務遂行自体は可能です。

連携コストを鑑みるともちろん最適ではないものの、現実問題として、全てを一人で実行しきれるクリエイターもどの職種においてもなかなか居ないものです。実行可能なアイデアとして、コア業務に対しての抜け漏れが無ければ問題はないというのが私の見解です。

デザインコンセプトは当然サンプルを作りながら検討する側面もあるのでディレクター自身で手を動かしながら進めたほうが早いケースも多いかと思います。

ただ、コンセプトというもの自体は、そもそも複数人数でテーマ実現の為の一貫性を保つための手段でしかないと考えると、デザイナーの中で専門性が更に細分化され特化した傾向をもつメンバーで補い合うことができます。

なにも天才が一人で実行する必要は無いのです。

テーマとコンセプト、デザインルール、企画仕様、データ仕様を混在させずに、抜け漏れなく分担すれば問題ないということです。

まとめ

昨今の商業エンターテイメントは、大規模か極端に小規模か、二極化が進んでいます。優秀なディレクターとして知見やスキルの高さは当然必要ですが、それ以上に横の連携力や人を巻き込む力がとても重要です。裏を返せば一人で抱え込まずボトルネックになって苦しむぐらいなら、肩の力を抜いて仲間に頼るほうが全体視点で見たときでも、個人としても、楽しくクリエイティブが出来るというものです。

そんな私も天才ではないクリエイターの一人です。
同じようにクリエイティブのディレクションやマネージメントに悪戦苦闘している方の考えるきっかけや、発想の糸口になることができればとても嬉しいです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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