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雨の日に開く扉

久しぶりに雨らしい雨が降った。
乾燥続きの大地を湿らせ、
空気を洗うように降った。
草木は緑を冴えた色に変え、
花はみずみずしさの色を取り戻した。

人間には休息の一日を与え、
ぼくは横になる。
静かなひと時に
開いた本の活字の隙間に入り込む。
一度訪れた世界なのに新しい。

今世界は閉じようとしている。
本の世界は開かれている。
巡り合わせはいつも機会を待っている。
人間の意思と行動に委ねられている。
向こうからはやってこない。

雨で出かけるのも億劫になる日。
ぼくらには開けば出会う世界があった。
ときどき天気は察して雨を降らす。
知っていたはずなのに
できていなかった世界の扉を開いた。


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