春の宅配便

  春をお届けにまいりました

冷たい雨が降る中 
玄関の向こうで声がした
はい とドアを開けてみると小包を
大切に抱えた配達員のお兄さんが立っていた

春の使いにしてはやや寒い空気のマントを身につけて
表情はにこっとして 受取人のぼくを確認したら
  こちらに印鑑かサインをお願いします
と伝票を差し出した

今日がぽかぽかの陽気だったらよかったのにと
少し思いながら印鑑を押すと にこっと笑って
  ありがとうございます
とお辞儀をした

ぼくはあわてて ご苦労様ですと応えたら
風のように階段を駆けおりて
次の配達先へ飛んでいった
春の使いは雨の日もいそがしいらしい

部屋に戻り 小包の封を開けてみると
にぎやかな春の詰め合わせが入っていた
わいわい声が聞こえるような気がして
一つひとつ見ていれたら、気持ちが温かくなった

ありがとうね
大切にするよ


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