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多くの人がそれを性格だと勘違いしている、とっても誤解されやすいADHD。

こんにちは! 

こしあんです。

あなたはリチャード・ブランソンという人物をご存知でしょうか?

ヴァージングループの会長で、鉄道、金融、携帯電話、旅行、飲料、通信、放送、宇宙旅行などの分野に進出し、世界34か国で事業を展開する一方で、エイズ撲滅や地球温暖化防止などの社会貢献活動も行っています。

しかも、2000年にはエリザベス女王より「ナイト」の称号を受けているそうです。

あなたはこの経歴からどんな人物を想像するでしょうか?

多くの会社を運営しているので、とてもバイタリティ溢れる人を想像するかもしれませんし、頭脳明晰で効率的に物事を進める人物を想像するかもしれせん。

でも、本人は著書「ライク・ア・ヴァージン」の中で、学校教育とは僕は相性が悪く、ひどい失読症で今で言う注意欠陥障害だったと書いています。

今ではADD(注意欠陥障害)と言わず、多動性も併せてADHD(注意欠如多動症/注意欠陥多動性障害)というのが一般的になっています。

そして、あなたはこのADHDにどのようなイメージを持っているでしょうか。

今回は、その人の「性格」のように誤解されてしまうADHDについての話をしていきます。



【それは欠陥なのか?】

ADHDは、「年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される」とあります。

また、青年期になるまでに、自尊感情の低下、抑うつ、不安、権威に対する反抗などが生じることがあり、治療には薬物療法と心理社会的治療が取り入れられています。

先ほども言いましたが、あなたはADHDの人の行動を見て、どのようなことを考えますか?

ひと昔前までは「落ち着きがない」「躾が悪い」「だらしがない」といった言葉で片づけられてきました。

多くのADHDの人がそうであるように、突飛な行動をとるせいで周囲から手に負えない、甘やかされ過ぎだといった間違った評価を受けることが多々あります。

実際、私の子供が通っていたフリースクールでも、落ち着きがない子を注意するだけで、「ルールに従えないのなら出て行ってくれ」というスタンスでした。

もちろん、その子がADHDかどうかはわかりません。

でも、今の学校のシステムでは合わない、また学習スタイルが合わない子を、その子に合った方法で学習させ能力を伸ばすことがフリースクールの目的だと思っていた私は、「結局、義務教育の延長線上でしかないのか」と残念に思ったことがあります。

さて、性格と一緒にされやすいADHDですが、これは脳の注意システムがうまく働いていない結果起こると言われています。

このシステムは、覚醒、やる気、報酬系の機能、遂行機能、そして動作を司る部位がニューロンでつながってできていて、ADHDの人たちの脳をfMRIで検査したところ、状況によって報酬中枢の活動がはっきり違っていることがわかるそうです。

この報酬中枢はドーパミン・ニューロンが束になった部分で、側坐核と呼ばれ、喜びや満足の信号を前頭前野に送って、集中するために必要な動機ややる気を生み出しています。

そして、報酬中枢を活性化させ集中させるために必要な刺激は人によって異なるようです。

ハーバード大学医学部臨床精神医学准教授ジョン・J・レイティによれば、勉強には集中できなくとも、ゲームに集中したり、運動に集中したりといった極端な集中力はADHDの人によく見られる性質で、故にしばしばその障害が見逃されるそうです。


また、プレッシャーが大きいほど集中力が研ぎ澄まされるといった性質の人もいます。

レイティは、「ADHDの注意システムの不具合は『欠陥』と呼ぶべきではない。むしろ思ったとおりには注意を向けられない、集中できないということなのだ。そこで患者にはADHDは「注意”変動”障害」だと考えたほうがわかりやすい」と話しています。

なぜかと言えば、それは欠陥と呼ぶほど一貫した障害ではないからです。

私たちは病名などを聞くとどうしても自分が知っている範囲で想像し、同じ病気なら辛さも同じだと考えてしまうことがありますが、たとえ同じ病気を患っていたとしても、人によって程度も違うし辛さも違うということです。



【混同されがちなADHDと性格】

アメリカでは、専門家によると成人のうちADHDを患っているのは4%前後(130万人ほど)だと推定しています。

では、残りの96%は人たちは注意力に問題がないのか?
といえばそういう訳でもありません。

しかも現代では、入ってくる情報量が多く、ほとんどの人が注意散漫になりやすい状況でもあります。

誰もが注意散漫になって、色んなことが手につかない状態を経験したことがあるためでしょうか、ADHDの人でも努力すれば集中できるはずだと考える人たちもいます。

そのため、誤解が生まれ怠惰、愚かさ、強情さ、乱暴さ、親の育て方などと一緒に性格も非難されることもあります。

脳の注意システムがうまく働いていないということを理解されず、大人になれば勝手に治る(症状が軽くなる場合もあるそうです)と考えられていることもあります。

現在では、ADHDは大人になってからも続くことや態度の問題ではないこと、遺伝することがわかっています。

2000組近いオーストラリアの一卵性双生児を調査したところ、片方がADHDだと、91%の確率でもう一方もADHDだったそうです。

また、1990年にはアメリカ国立精神衛生研究所のアラン・ザメトキンらが、陽電子放射断層撮影装置(PET)で成人の脳の活動を測定し、注意力テストを受けてもらうという実験をしました。

結果は、ADHDの人の脳はそうでない人の脳とはたらきが違うことがわかりました。

ADHDグループは対象グループと比べて脳のはたらきが10%低く、最も著しい違いは前頭前野に見られています。
(前頭前野は思考や創造性を担う部分とされています。)

脳のはたらきが10%低いと言われると不安になる人もいるかもしれませんが、様々な分野において活躍している人はたくさんいます。

また、障害というほどではない、個人的性格の傾向をシャドー・シンドローム(現代病症候群)というそうですが、ADHDのシャドー・シンドロームの人は恋愛関係で問題を起こしがちだと考えられています。

でも、その一方で緊張を強いられる勢いのある分野で成功を収める可能性が高いとも言われています。

起業家、株式のトレーダー、セールスマン、救急救命室の医師、消防士、法廷弁護人、映画界の大物、広告業界の重役になっている人も珍しくありません。

冒頭で紹介したリチャード・ブランソンも会長ですから。


でも、なんでこれらの業界で成功者が多いのか?

それは、多動性、型にとらわれない考え方、リスクを厭わない姿勢が大きな成功に結び付くからだと言われています。

また、ADHDのシャドー・シンドロームの人は、系統だったやり方が苦手で、物忘れがひどく、対人関係で問題を抱えるかもしれませんが、プレッシャーがかかる状況を上手くコントロールできるようになるそうです。

このような特徴のある子を、集団行動が大好きな学校のやり方を押し付けてもうまくいかないのではないでしょうか。



【ADHDの特徴】

私自身、ADHDの特徴は「落ち着きがない」といったイメージしか持っていませんでしたが、様々な症状があるようです。

そもそもこの「注意欠陥障害」という言葉が初めて登場したのはいまから40年前の1980年に出された「精神疾患の診断・統計マニュアル」第三版においてだそうです。

それ以来、その主な症状の注意欠陥と多動性を別々に診断すべきかどうか、議論が重ねられてきました。
ADHDの症状として、注意欠陥は出ますが、多動性の方はときどき見られる程度だそうです。

多動性は大人よりも子供に多く、絶対というわけではありませんが男の子に多いと言われています。
でも、長い間、暴れまわったりする乱暴な子どもだけがADHDと診断されてきました。

つまり、注意欠陥があっても多動性がなければADHDとされなかった歴史があったそうです。


今では多動性があってもなくてもこの症状はADHDと呼ばれています。
どちらにしても治療の仕方は同じです。

家でも学校でもそうですが、忘れ物が多い子どもより、教室や家の中でじっとしていられない子の方が目立ちます。
椅子に座らせると体のあちこちをいじったり、貧乏ゆすりをしたり、いたずら書きをしたり、手遊びをしたりします。

また、いつも急かされているように感じ、人の話を先取りして言ってしまったり、相手の話に飽きるのもはやかったりします。

このような特徴から、だいたいはじっくり物事に取り組むのが苦手で、一人で遊ぶのに耐えられず、学校でうまくやれないとあえて道化を演じることも多いそうです。

社会性は持っていますが社会的な合図を見逃すため、行動に不器用なところがあるとも言われています。

また、残念なことに親や教師などの身近にいる大人たちから「お前はできそこないだ」とか「なぜ、当たり前のことができないんだ!」と劣等感を植え付けられ育つ場合もあります。
動いていないと気が済まないので、スポーツをするようになり、かなり活躍することもあります。

また、多動性の一部として、大人でも子どもでも衝動的なところがあり、待つことは苦手で、待たされると感情を爆発させることもあります。

ADHDの症状の1つである不注意や注意散漫は見ただけではわからないので、見逃すこともあるかもしれませんが、特徴としては、不意に話題に興味を失ったり、考えていたことや目標を忘れてしまったりします。

また、典型的な徴候で旋回(ピルエット)というものがあります。

これは、家を出たとたんにくるりと回って家に入り、忘れ物を取りに戻るという行動を指します。
もちろん、誰もが経験するようなことではありますが、ADHDの人は毎日これを繰り返すそうです。

注意欠陥障害の人は、仕事に取り掛かるのが大変で、先延ばしにしがちです。

追い込まれるまで仕事を片付けられず、整理整頓が苦手で部屋は散らかり放題です。
他の人はなぜこんな状態でもやっていけるのか不思議に思うそうです。
また、権威を嫌い、反抗する人もいます。

このような特徴を考えると「サラリーマンは無理かな」「独立するしかない」と考えてしまいますが、先ほども書いたように規律の厳しい消防士や難しい判断や作業を強いられる救命救急室の医師、膨大な知識や人との駆け引きが必要な法廷弁護人として活躍している人たちもいます。

先ほど紹介した特徴とは相反するような業種で働いている人たちが大勢いることも事実です。

では、彼らはいったいどのようにして自分の症状を改善してきたのでしょうか?


【1つの解決策】

ADHDのよく効く治療のひとつに厳しい組織にはめ込むというものがあるそうです(理不尽な組織という意味ではありませんよ)

注意すべき点は、体を動かせるものでなければなりません。

武術やバレエ、フィギュアスケート、体操などでもいいしロッククライミング、マウンテンバイク、急流でのパドリング、スケートボードなんかもいいそうです。

運動の最中に複雑な動きを要求し、脳と体の両方に負荷をかける運動が良いとされています。

これは、普通に有酸素運動をするよりも効果が高いそうです。

小規模ながらホフストラ大学の大学院生がADHDと運動について研究したものがあります。

8歳から11歳までのADHDの少年のうち、週2回武術の稽古に通っている子どもは普通の有酸素運動をしている子どもに比べ、行動と成績がいくつもの項目で改善したことがわかっています。

武術の稽古に参加している少年は、そうでない子よりきちんと宿題や予習をし、成績も上がり、規則もあまり破らなくなり、席を立って駆け回ることも減ったそうです。

でも、なぜ複雑な運動がこのような結果をもたらしたのか?

レイティによれば、「このようなスポーツに特有の型にはまった動きは、脳の幅広い部分(バランス、タイミング、動きのつながり、結果の予測、切り替え、エラーの是正、運動の微調整、活動抑制、過剰な集中をコントロールする部位)を活性化するためだ」と言っています。

このような危険を伴うスポーツは一歩間違えれば命の危険があります。

そのため闘争・逃走反応が起こり、集中力が高まります。

そして、そのスポーツをやっている時間は有酸素運動をしているので、認知能力は高まり、新しい動きや戦略を体得しやすくなるそうです。

「宿題はしないし、怒りっぽいし、気難しく、問題ばかり起こすけど武術をやっているときはとってもいい子なんです」といった保護者の人たちもいるそうです。


最後に、

すべてのADHDの人に運動による効果があるのかどうかはわかりません。

同じ運動をしても体にかかる負荷が違うように、症状は人によって異なりますし、効果は変わってくるでしょう。

また、男女差もあり、男子は酸素摂取量が最大となる運動が効果的だとわかっていますが、女子はそれよりも軽い運動(最大心拍数の65%~75%の負荷)がいいそうです。

もちろん、薬による治療法もあり、薬と運動を合わせてする場合もあります。

冒頭で紹介したリチャード・ブランソンもウォーキング、水泳、テニス、ランニングと毎日の運動を欠かさないそうです。

ADHDの症状を抑えるために運動をするという考え方もできますが、自分の精神安定と健康維持のために運動をするという気持ちでもいいような気がします。

自分が楽しめて、運動した後スッキリできるものであればなおいいかもしれません。 

また最近では「障害」ではなく、1つの個性としてとらえた方がいいのではないか?という考え方も出てきています。

みんなを平等に扱うのではなく、その子に合った学習法を考える必要性があるのではないでしょうか。 

私の個人的な意見ではありますが、大人たちはその子を落ち着かせようとなだめたり、上からの圧力で押さえつけようとする場合があります。

でも、私たちの目的とは、その子をおとなしくさせて、日常生活や学校生活をトラブルなく過ごさせるために教育しているのでしょうか?

もちろん、そういう考え方もあると思いますが、私たちは子供たちが能力や創造性を発揮するためにはどうしたらいいのか?と問うべきではないでしょうか。

子供たちのエネルギーを抑え込むのではなく、”どこに向かって伸ばすことができるのか”を考えることが、必要なのだと感じます。

もちろん、そのためには適切な治療も必要です。

しかし、時に「障害」という言葉がこの症候群を病的なものにしてしまいます。
たくさんの問題を引き起こすこともありますが、エネルギーや直感力、創造性、情熱といった強みを持っています。

心理学の分野でも、1998年以前の心理学者たちの考え方は、精神疾患や知能障害の問題に取り組むにあたって、それらのネガティブな特質がないことが健康で幸せな状態であるという前提に立っていました。

しかし、マーティン・セリグマンが心理学会の会長に就任したとき、問いの転換が行われました。

セリグマンは講演で、「健康で幸せな状態とは、なんらかのポジティブな要素があることにより促進されるのではないか。それらの幸せの鍵を握る要素は具体的に把握でき、計測でき、育めるのではないか。言い換えるなら、心理学者たちは研究の対象を「弱点」から「長所」へと切り替えるべきではないか」と言っています。

もちろん弱点の克服も課題にはなるでしょう。

抑えられない衝動や移り気な自分に苦しんでいる人たちもいます。

そして、ADHDの人はそんな自分を「情けない」とか「集中力がない」と考えてしまいます。

でもこれは脳の注意システムの働きのせいなんです。

あなたの性格に問題があるわけではありません。


それに、治療により症状が改善している人はたくさんいます。

「乱暴者」「手に負えない子」というレッテルを貼る前に、脳の注意システムがうまく働いてないのかな?
と考えることも大切です。

大人たちが貼ったレッテルや様々な誤解からその子の才能が殺されないことを切に願います。


今回はここまで。

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最後までお読みいただきありがとうございます。

それではまた次回お会いしましょう。

※この記事は読んだ本をもとに考察し、私の経験したことなども踏まえて書いています。
そのため、参考にした本とは結論が異なる場合があります。
あくまで、一つの意見として見るようにお願い致します。
※書いてある文章は予告なく変更する場合があります。ご了承ください。

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