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はたらくこと=生きること。自分の会社を10年育ててきた想い。|代表の話

Co-Satenを運営するオープンロード合同会社代表の小川起生さん(おがわ・たつお、以下、起生さん)のブラック企業に就職してから起業するまでを追った前編。

続く中編では、起業したものの、会社の方針などは一切決めていなかった(!)起生さんの起業してからの実際や、苦労、まちづくり事業にたどり着くまでの経緯について語ってもらいました。

仕事の遍歴 PART②

起業すれば、「なにか」が生まれると思っていた

ー起業したとき、どんな仕事をしようって、どうやって決めたんですか?
いや、全く決めてなかった(笑)本当にありえないけど、とにかく「起業する」と思って、起業したら何かが生まれるんじゃないかと考えてた。結果、何も生まれなかったよ?

今、現状までとらえるなら生まれてるけど、当時は何を商材にすればいいかもわからなかったから、とりあえず、LINEのユーザーが爆発的に増えていたのを使って、SNSを活用した集客をやったり、携帯を売ったり、クレジットカード契約の営業をしたり。

ーそんな仕事もあるんですね。
もともと営業もしてたから、経営者と話すときに、自然とその人が何を欲しているのかもいろいろ話すわけ。「携帯は何使ってるんですか?」とか、「今、クレジットカードは何使ってるんですか?」って話になるから。

そこが今の原点かな。

ーうーん、なるほど。
なんでもやりましたよ。テレホンカードも売ったしね。

ーテレホンカード!
知り合いがオフィス家具の代理店みたいなことをしてたから、ハマりそうな会社を紹介して手数料をもらったりしてて、そういうオフィス周りのことをやっていた流れでね。

テレホンカードって、固定電話の料金を払うのにも使えるから、中古のテレホンカードを安く仕入れて固定電話をたくさん契約している会社に卸すと、その差額が利益になる。

だから、最初は想いもへったくれもなく、「会社とはどういうことか」というのを、とにかくがむしゃらにやってたんだよね。でも、テレホンカードはそれこそ、どんどん市場がなくなっていて、いずれそのカードも無くなるじゃん。だから、半年ぐらいは結構儲かってたんだけど、これは続けられないなと思って止めちゃったけどね。

それで段々、ショッピングモールでイベントを企画したり、広告とか集客のコンサルティングをしたりする仕事がめっちゃ増えてきた。もともと、自分でもプライベートでイベントを企画するぐらい、そういうのを考えるのは好きだったし、LINE集客もやっていたから相性も良くて、徐々に企画屋みたいになっていって。

そういうことを35歳くらいからやり始めたかな。

オープンロードでは、イベント企画や広告、動画制作・配信を始め、クラウドファンディングの立ち上げやブランディング、コンサルのような案件も手がけています。


ビジョンよりも、「楽しそう!」という直感が指針

ーイベントや広告は今のオープンロードの事業にもつながりますけど、まちづくりが会社の軸になっていったのは、どういう経緯だったんですか?
まちづくりと出会ったのは、2016、2017年くらいかな。きっかけは、集客支援をしていたとき。一店舗の集客とイベントをその都度担当していたんだけど、一店舗の集客をしたり、イベントを開いたりしたくらいで、周辺のエリアは変わらない。それこそ施設全体が変わらないと意味がないし、もっと広い視野で見れば、エリアでとらえないと集客し、地域を再生できないということをなんとなく実感して。

そういう思いを周囲の人に話していたら、まちづくりの人に「それって、エリアリノベーションっていうんだよ」と教えてもらって、リノベーションスクールの清水義次さんの本を読んでみたらって渡されて。

ーそこが、まちづくりとの出会いなんですね。
清水さんの本が面白かったことをその人に伝えたら、リノベーションスクールをオススメされて。それで、すぐに北九州のリノベーションスクールに参加して、まちづくりに足を踏み入れたんだよね。

2017年開催のさよならリノベーションスクール@北九州にて

だから流れ的には、一店舗の集客支援から、もうちょっとエリアでとらえる必要性を感じて、それを地元で実践できるかもと思って市原に戻ってきて、五井の廃れ具合にヤバさを感じてCo-Satenをオープンしたという経緯かな。

「こういうビジョンがあるから、こういう道のりで行こう」という点を打ってきたわけでは全くなくて、出会って、出会って、これ楽しそう!みたいな感じで進んできた。最初は、「儲かりそうだし、稼げそう」というところからだったけど、今はお金とやりたいことのバランスが結構取れていると思ってる。


会社の経営とお金とのつきあい方

ーまちづくりに取り組んでいる起生さんしか知らなくて、最初からそこを目指して起業したのかと思っていたので意外でした。実際、今のオープンロードはどんな事業がメインなんでしょう?
仕事を一緒にさせていただいているのは、民間の企業や市役所なんだけど、なかでも行政のウェイトは年々高まっているかな。

市民主導のまちづくりを根付かせていくために、市役所と共同で取り組んでいる「対話の場」や「いちはら地域魅力向上塾」では、まちづくりのプロジェクトが生まれています。写真は、青葉台にカフェを開いた姉崎高校のメンバー。

ー確かにCo-Satenやオープンロードで仕事をしていると、市役所の方と仕事で関わらせていただく機会が多いのは実感しています。ではここで、そんな仕事についての本音をどうぞ。

そうだなぁ。本当はもっとペースを上げたいなと思ってるけど、ペースを上げた途端にいろんなバランスが悪くなっちゃうから、そこはちょっと歯がゆいなと感じているところかな。

もっとフルコミットしてやれるとは思うんだけど、それをやったら全員がたぶんキツイし(笑)あと、仕事は楽しいし、だいぶ慣れてはきたけど、やっぱりお金と不安は常につきまとう。でも、規模に応じてお金の大きさは変わるから、常に割合は変わってないな。

ー割合?
「自分が得たものを投資して、何かをして収入を得る」という割合、比率。収入が増えれば、その分入ってきたものを大きいお金で投資していくし、使う額は大きくなっていくから。あんまりそこの比率が変わらないから、扱う額が大きくなって怖くなるところはあるけど、そこは麻痺していく。

普通に給料をもらって働いていたら、「今月末200万円払わないとなぁ」っていう請求が来たら焦るじゃん。でも会社を経営していると、クレジットの請求で毎月180万円とかいう単位がくるわけ。結局、いまだに請求を見て「えぇ!?」ってなってるけど(笑)

でも、そこらへんを支えられる収支状況にはなっているから、割合としては変わらないと思う。年収300〜400万円くらいの人で考えたら、クレジットカードの請求が生活費も含めて10万円くらいの感覚かな。

ークレジットの請求が毎月200万円と聞くと、想像もつかない額のように思っちゃいますが、確かに毎月の請求が10万円くらいの割合なら、「払える額だけど、めちゃくちゃ無駄遣いできるわけじゃない」という感覚がわかりやすいです。


「はたらくこと」が、やりたいことであり、生きること。

ーそんなプレッシャーを感じつつ、会社を10年以上経営し続けてきた起生さんにとって「はたらく」ってなんでしょう?

家族からは怒られちゃうけど、僕は多分はたらくことのほうが意識としてメインになりがち。結婚するよりずっと前に起業して会社を続けてきたから、はたらくことが自分の「やりたいこと」になっている。

ただ、全部がはたらくことに振り切っているというよりは、将来、家族で世界旅行に行く計画とか、そういうことは考えてて。とはいえ、仕事の方に意識が偏ってしまうことが多くて、そのバランスが悪いせいで、よく家族とケンカするんですけど(苦笑)

起業した10年前の頃の一枚

自分の場合、生きることとはたらくことは一緒だよね。仕事=生きること。

自分がやってきていることだから、一緒に働いてるスタッフに対しても、何かあったら守りたいと思ってるし、家族と仕事どっちが大事なの?と問われることがあるとしたら、どっちも大事だと俺は思っているから。

ー大切の質が違うってことですね。
家族も大事だし、自分が育ててきた会社も大事。それを切り替えて自分の会社を手放して、また新しいことをするという考え方もあるけど、でも、今はこの仕事が楽しくて、このまま進みたいと思っているから。

ーそれだけ、起生さんが時間と手間をかけて育ててきた会社ですもんね。
もう10年くらいやっていて、起業して1、2年目は、苦労して泥水すすって売上をつくってきたからから、その分思い入れも深いなぁ。

(後編へ続く)

文・写真:Mizuno Atsumi

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