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悪魔の恋

___紅葉散る夕暮れ。

「…ねぇ、ラーメン食べ行こ。」

「…いや、いい。来週、テストだしさ。」

「…待ってんの?あいつからのメール。」

「…うん。」

「___もうほっとけよ。…なぁ、ラーメン食いに行こ。」

「ほっとけないでしょ。なんも連絡こない。」

「もう連絡こねぇって。…いいじゃんあいつのこと。忘れろよ。」

「…でも。…返事もらってない。」

「返事ないのが…返事だろ。」

「___なんでそんなこと言えるの?…ひどいよ。」

「俺、あいつと幼稚園の時から一緒だからさ、知ってるからさ___。…分かるよ。」

「そんなこと言われても…あぁ、なんで好きって言っちゃたんだろう…。」

「………まぁ、いいんじゃない。ちゃんと伝えたんだから。」

「でも…そのせいで…。いつも3人一緒だったのに。」

「もういいって。メールはもうこねぇから。早く行くぞ。」

「はぁ…。…もう嫌だ。」

「俺らはなんもかわらねぇよ。早く行くぞ。」

「…うん。」

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___蝉泣く正午。
遠くから男の子を見つめる男がいた。

「すみません、道に迷ってしまって…ここってどの辺ですか?」

「あ…えーっと…このへんですかね。」

「…ありがとうございます。すみません急に、今お一人なんですか?」

「あぁ、はい。けど…今待ち合わせしていて…あと2人来る予定なんですよ。」

「…そうなんですね。この街いい街ですよね~。…初めて来たんですけど、すごくいいところだなぁと。」

「ありがとうございます。といっても、まだ高校生なんで他の街とか知らないんですけどね。」

「あ…学生なんですね。後から来るのは…お友達?彼女とか?」

「友達ですよ。同級生なんですけどね、一人は男で幼稚園から、もう一人は女なんですけど高校から出会って、すごく仲良くて…その子からこの前好きって言われちゃったんですよね。」

「…へぇ、そうなんだ。…返事は?」

「それがまだ迷ってて…実は、もう一人の男もその子のこと好きなんですよ。3人の関係がくずれないか心配で。」

「…なら、よかった…そうなんだね、おじさんから一つアドバイスしてもいいかな。」

「あ、はい。」

「…想いってね、早く伝えられるときに伝えた方がいいよ。伝えたいと思ったときに…。」

「なるほど___。自分に正直になった方がいいですよね。」

「…うん…正直に。___あ、そこのさ、草むら___。」

「え…。」

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___雪降る夕方。


「なんであんな人を好きになっちゃたんだろう。」

「…バカだから、お前も。」

「お前もって、あいつの方がもっとバカだよね。」

「…ほんと、どうしようもないよな___。…大丈夫か?」

「うん、もう連絡ないのはなれた。」

「おせぇよ。じゃぁ、ラーメン行くか。」

「また?あんたと会うとほんとラーメンばっかだよね。」

「いいじゃん、うまいし。」

「もっと居酒屋とかさ、子供じゃないんだから、広いテーブルでさ、いつまでカウンター誘うわけよ。」

「じゃぁ、今度そういうとこ行こ。とりあえず、ラーメン。」

「あっそう。…あたし一応女なんだけど。分かってるよね。」

「___分かってるよ。守ってやるから。決めてるから。」

「…なにそれ。」

「あいつが死んだ時…約束したから、変わりにちゃんと守るからって。
高校の時、メール待ってた時のお前も…。
あれから何年も経ったのにまだあいつのこと想ってるお前も。
俺さ…親友が殺されて、どうしていいか分からなかったけどさ、近くにお前がいたから俺も普通を装えたんだよ。
俺らの関係はずっと変わらない。この先何があっても。そう約束したから…。」

「………。なんで、今そんなこと…。」

「___今日で10年。…ね、キリいいじゃん。」

「___まだ犯人捕まんないね。」

「___捕まるよ。…よし、行くか。」

「うん…ラーメン、だよね。」


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「___その草むら何かあるんですか?」

「…うん。おもしろいものがね…ちょっと来てみてよ。」

_________

「…すみません、今から3人でラーメン食べに行くんで___。」

「…。」

「いろいろ話せてよかったです。観光楽しんでくださいね。それでは。」

「あ…。…行くの。」

「はい。では。」


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「…待って…。…どこのラーメン屋?」

「あ…駅前にあるラーメン屋ですよ。多分行けばすぐ分かります。では。」

「…駅前…。」

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「うわぁ、混んでるな。」

「あったかーい、やっぱり寒い時はラーメンだよね。」

「なんだよそれ、居酒屋とか言ってたくせに。」

「いいのいいの。…あ、大将、お久しぶりです。」


「…あぁ、来てくれたの。嬉しいなぁ。」

「もちろんですよ。命日は絶対ここって決めてるもんな。」

「うん。でも、すごいよね。バイトから今では大将だなんて。」

「ほんとだよな。尊敬します。」

「…会えるのを楽しみにしてたからね。…ずっとここで…。」

__________

___12年前。

「あの…ハンカチ、落とし物ですよ。」

「…あ…ありがとう。…えっと、何かお礼を…。」

「いえ、ただの中学生なので。ね。」

「うん。俺たちただ拾っただけなんで。」

「…あ…君たちは付き合ってるの?」

「いえ、あと1人友達を待ってるんです。幼稚園からの友達なんですよ。」

「…そう。…あの…君は彼氏…いるの?」

「え?」

「…あ…なんでもない…。」

「さ、行こ。もうあいつ来てるだろうし。」」

「うん、そうだね。それじゃ、失礼します。」

「…あ…うん…拾ってくれてありがとうね。」










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「…また…あおうね…。」


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