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劇潜サブマリン 第6号作戦「Vの果て」観劇(7/13 14:00)

劇潜サブマリン 第6号作戦「Vの果て」についての雑記・感想です。劇団公式サイトはこちら。ストーリーに関するネタバレは含みません。(※Twitterなどに既出のポイントについては多少お話ししています。)

ツクリモノとリアルのこと、持論。

演劇が好きという割に、なかなかどうして観劇のチャンスも少なくてアレなんですが。

最近は観る舞台がことごとく「ものをつくる人間が出てくる舞台ばっかり」です。先日の少年社中「MAPS」にせよ今回の劇潜サブマリン「Vの果て」にせよ。不思議。なんかその手の組織に狙われているんじゃないかというくらいピンポイントで作家・クリエイター系が絡む話。エンタメ劇団にそれやられるとほぼ確実にギーリギリ来るよね、と。

ファンタジーとかエンタメの「ちょっと浮世離れした世界」を描く人は作家の中でも群を抜いてリアリスト。そういう人が描く世界はツクリモノに見えてどこまでも現実を突き付けてくる。

はい、持論です。

関西の!芸大の!舞台だ!(たぶん)

作家が作家・クリエイター系の話を書く時点でグッサグッサ来る作品になること、今回も例にもれず。それから「関西の!芸大の!舞台だ!」と思いました。関西も芸大もあんまりよく分かっていないけど。分かろうともしていないけれど。

軽快でハイテンション、造形的で、湿度低めのエンタメとリアルでございました。

ジメジメした東京の夏にガッと一発食らわして、だけど何かしらザラッとしたものが残るよ?みたいな。それが劇団のカラーらしく今作だけの話じゃないのですけれど。

劇団のカラーと言えば

劇潜サブマリンさん、常に2つの柱で構成されている。ひとつがツクリモノであるストーリーの部分、もうひとつがリアルである人間についての考察と描写。

この2つが明確に分けて描かれるのだけれど、後半・ラストシーンに向けての要素の差し込み方、一般に「伏線の回収」と言う部分がおもしろい。それまでに語られた様々な要素が糸のように撚り上げられていくのではなく、差し合うように畳み掛ける。

一つにまとまるのではなくて、ツクリモノとリアルはそのままに最後まで駆け抜ける。なので、設定や伏線など「観ながら追いかけ理解しなければならない要素」が多い割にはすんなりと苦なく観られる。それは作家の技量であり演出家の技量であり役者の技量であるなと思う。

まぁ毎度、上演時間、長いけど。

これ、この劇団に対して私が思う唯一の欠点かもしれぬ。長い。要素が多いので個人的には90分くらいの尺で観たい。厳密に言うと、集中して見られるのは私の場合せいぜい60分。そこから先は集中しつつもある部分ではついうっかり他のことを考えちゃったりもする咀嚼タイム。90分を過ぎるとそこから先は一気に印象が薄れます。集中力が続かない。

観客はすんごい情報量を追い、考え、繋ぎ、補い、咀嚼することを初見でやらねばならぬので、そういう意味では情報が多過ぎると思うのよね。おもしろいから観るのは観られるんだけど。気持ちイイところで終わる、ではない。

とはいえ、今回はスピードとか緩急とか脚本とか、諸々理解しやすかったのでしんどくはなかったなと。(前回公演「ファミリィゲーム」の時は情報多いのにラスト捲し立てるように一気に詰め込まれ「え?ここでその話を出す?これ持ち出す?」ってなんだか納得がいかなかった記憶。時間・ペース配分も悪かったし。)

ほんでもって感想

で、ここから先は個人的なメモ兼ねたザッとした感想。Twitterを見たらビジュアルに関しては壮大にネタバレているね。あと、ステージの作り方も出てた。と、言うことで、その辺りまでは書きます。

いやんという方はこの先読まないでね。

今回も例のごとくリサーチなしで臨む。チラシ読んだくらい。だので劇場に入って「おっ」と。3面舞台とな。この劇場で奥行きいかして3面って贅沢だわ!と思ったけど、逆に座席数ミニマムだしステージ近すぎて客である私の方がちょっと緊張するワ!って。始まってしまえば関係ないのですけれど。舞台美術は布の加工を観察。照明と相まってグラデがナイス。場内キョロキョロしているうちに開演。

オープニングに歌とダンスがあってだね…すんごいたのしかったけど…、ごめん私は造形に夢中だった。見たいところいっぱいあったんだけど、観察したい欲がまさってしまった。いや、ほら、あの、元々衣裳の仕事をしていたもので。造形というか、まぁ衣裳のパーツなんですけどね。凝視したよね。「お?これどうやってるの?あー!それか!」って。たのしい。個人的にはあの、ズルズルズル~ってヤツは輪ゴムなり糸なりでもうちょっと凹凸付けた方がたのしいかなーとか考えながら。余計なお世話ですね。あと、傷メイクをガン見。これはもしかすると贔屓の役者がレクチャーした?って話なので公演が終わったら聞いてみよう。すんごい気になる!やってみたい!デイリーメイクには使えないけど。

あとはまぁ、音楽がね…記憶を揺さぶる感じでね…世代なんですかね…。曲名がわからなかったり思い出せなかったりするんだけど、アレとかアレとかアレとか。あと「あー!あれ?これ誰だっけ?」って。いらんところで現実に引き戻されるのは初めてでした。そのくらい「通ってきた道スレスレ」な感じだった。

どれもゾンビ関係ないけど。

いやしかし、私はビジュアルのイメージがとにかく残るから映画のサントラとか結構扱いが難しいのかもと思いました。元の作品を思い出してそっちに引っ張られたりしがち。難しい。

とはいえ記憶を刺激されるような音楽が採用されているということはストーリーそのものとの親和性だって高いはずで。

やっぱりゾンビ関係ないけど。

今まで3作見た中で一番おもしろかったです。それは私自身がつくる側の人間だからというのも大いにあるとは思うんですが。

あと、贔屓の役者の芝居を間近で見られたのも大きかった。今までは結構ガッツリベッタリ出ている割に、じっくりとは見る機会がなかったのだけれど。今回は舞台に近いかつ舞台の奥行きがあるということでじっくり見られました。目元の芝居とかね、やっぱり見たいじゃない。しかもすんごいオイシイ役だったもんでな、嫉妬したよね。

わし、プレイヤーじゃないんだけどね。

ズルいって思ったよね、オイシイのズルい!あと、ご本人的にはきっと「もっと、まだまだできるよ?」って感じだと思うんだけども、本人が得意とする部分を垣間見れるのはたのしい。本当はもっとそういう部分を見たかったなと思います。なかなか難しいことはわかっているけれど。作・演出家様、次はぜひよろしくと。客演だけど。

そして繰り返しになるけれど、作・演出であるちば悠平さんは、人間のエグみの抽出の仕方がお上手だなって毎度思う。抽出と言ったのはつまり掘り下げて作中で深く描くではないからなのだけれど、演劇、特に小劇場が好きで観にゆかれる方の中には「おもしろかった!おもしろかったけど……なんか引っ掛かる……」が好きな人って多いと思うんだ。

そういう「カラッとハイテンションで爽快だけど、心のどこかにザラっとした何かを残す演劇が好き」そんな方におすすめします、劇潜サブマリン。

7/15 23:00 追記

この公演、Twitterで大変盛り上がっていた。が。閃光や毒ガスからのゾンビという話に触れるような記述が見当たらなくてややモヤ。歌とダンスを絶賛するのはわかる。けども。「野戦病院」と出てきても特にそこに触れなかったのはネタバレへの配慮か否か。これいかに。

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