カエル、連れて帰る?
「待ってー!ピーターっ!!」
後ろから、さくらの甘えたような声が聞こえてきて、僕は悪い気がしない。
「おう!」と言って振り返る。
さくらが、姉貴のおさがりの自転車を、ぎこちなく漕ぎながら、田んぼ道を追いかけてきていた。
僕、ピーターは10歳。この辺じゃ一番大人の子どもだ。遊びまわるのが大好きで、今日はオタマジャクシを採りに行くんだ。
山のふもとのこの辺りの小川や水路には、メダカやタニシ、どじょうなどがたくさん棲んでいる。
水の張られた田んぼにはオタマジャクシがたくさんいるだろう。「探検」だ。
さくらは、僕と同じハウスに住み、同じスクールに通う7歳だ。
ピンクのバッグを持った男の子で、それが可愛いから「さくら」というニックネームを僕がつけた。さくらはそれを喜んでくれて、僕にも「ピーター」というハイカラなニックネームをつけてくれた。僕らのスクールやハウスでは、ニックネームはお互い「OKマーク」をつけることで有効なんだよ。
そして、さくらは、とっても優しく賢い子なんだ。
「ねえ、ピーター。オタマジャクシさん、連れて帰るの?」
「当たり前だろ、この水槽に入れて、持って帰る。」
「おおきなオタマジャクシだもの。きっと大きなカエルさんになっちゃうよ、大丈夫なの?」
「あ、ああ。だ、大丈夫だ。当たり前だろ。」
「でも、いきなりカエルじゃないよ。途中、でかいオタマジャクシにデカい脚が生えたデカ足ジャクシになるよ。」
「なんだよ、デカ足ジャクシって!」
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