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無音の道・・熊野古道大雲取越、小雲取越 ーcoolなkumano4ー

「音がない」って感じたことありますか。ほとんどの人は経験ないかな。
この道を歩くと音がない時間があるのです。長い時間です。何も聞こえない。何も聞こえない時は、何をしたらいいかわかりません。新鮮で恐怖で貴重な時間。
 私は、最初は怖かったのでしょう。声を出して無音を消してました。(変な言い方ですが。)二回目以降は無音を楽しめたのです。自分の世界に入っているような気がしました。そんな道です。

幽妖な空気が漂う音がない道

 いにしえの熊野詣(熊野とは③)や西国三十三所観音巡礼(熊野とは⑤)で、熊野那智大社・那智山青岸渡寺から熊野本宮大社に向かうルートが熊野古道大雲取越、小雲取越です。

 熊野古道のなかでも、ハードなルートの一つ。一日でも歩けますが、2日にわけてゆっくりと楽しむ方がいいでしょう。


大雲取越

 大雲取越は、那智山青岸渡寺の境内に登り口があります。いきなりの登りは延々とつづき那智高原へ。途中、かけぬけ道と分岐しますが、かけぬけ道を進めば妙法山阿弥陀寺があります。ここは黄泉の国の入口とされ、黄泉の国を覗くことによりよみがえるのです。よみがえりの聖地でもある熊野の真髄たるところです。

妙法山阿弥陀寺は絶景
那智勝浦の朝

 那智高原からはいくつかの峠を越えます。なかでも地蔵茶屋から石倉峠、最高点の越前峠をこえて、楠の久保旅籠跡あたりの間は音がないのです。時折、聞こえるのは風、鳥、木の音だけ。ここは無音の世界
 無音を感じる貴重な時のなかをひたすら歩きます。

大雲取は丸石がゴロゴロあります
丸い石が山の上にある!
不思議な光景です

 越前峠からは急坂の胴切坂(胴が切られるほどつらい??)をくだります。つらいつらいポイントです。

無心で無音の中を下る
胴切坂

 胴切坂の下りは、すべるのでつらい。集中が必要。雨の日は特に。
無音のことなど忘れて知らない間に無心になって歩いています。

熊野古道の代表的なカット

 胴切り坂を突破するとお地蔵さんや念仏が刻まれた石が多く、旅人を歓迎してくれます。この道は、修験道の道でもあります。

念仏が多く岩にほられているので
ダルにとりつかれることは
今はありません笑
ダル:悪霊の一種。とりつかれると意識が朦朧とし歩けなくなる。
熊野のダルは空腹のときに取り憑かれやすい。ちゃんと食べて歩けばさらに大丈夫。

 熊野古道にはシダも多く群生しています。ほっとする時間。ずっとスギ、ヒノキの中を歩いてきてシダが癒やしてくれます

早春はシダも若葉色で
気持ちよくなります

 さらに下ると熊野の神々が談笑した苔むした円座石(わろうだいし)があります。三つの梵字は左から熊野権現の阿弥陀如来、薬師如来、観音菩薩(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社の本地仏)を表しています。
大雲取越のシンボルの一つです。

円座石(わろうだ石)
苔を持って帰る馬鹿がときどきいます怒

 まもなく清流が待つ小口に到着します。

大雲取越を越えると清流が
迎えてくれます
熊野古道最大の難関を突破!

 小口には、自然の家や民宿があります。ちょうど降りたところに熊野とは⑥で紹介したエムアファブリーの「熊野の香り」抽出所があり、ちょうどやっていれば「熊野」 「天然」にこだわるおねえさんが、香りを抽出しています。


小雲取越

 小口からは少し舗装路を歩き、小和瀬の渡しから小雲取越です。大雲取越と違って自然林が多く残っており明るい道です。

大雲取越は、
スギ・ヒノキのなかを歩きますが
小雲取越は照葉樹が多く
明るくて楽しくなる道です

 熊野古道一の絶景である「百間ぐら」で記念撮影です。お地蔵さんと熊野の山並みが最高のスポット。夕陽があればさらに絶景。

熊野古道では数少ないビュースポット
「百間ぐら」の夕景

 百間ぐらからはほぼ下りで、熊野川が眼下になり熊野本宮(請川)に到着します。熊野本宮大社にお参りして最も熊野古道らしい熊野古道を踏破。おめでとう!!

歩きやすい小雲取越

熊野が詰まっている道

 大雲取越、小雲取越は霊魂が辿る「死出の山路」ともいわれており、死に別れた血縁、知人が白装束で現れる「亡者の出会い」や「賽の河原」といわれるところがあり丸石、苔むした石畳、磨崖仏、石仏の存在と相まって、幽妖な雰囲気が漂っています。熊野は霊魂が籠もる地であることが実感できます。  
生きながらの難行苦行により「黄泉(よみ)の国」である熊野で生まれ変わってよみがえる(黄泉(よみ)の国から帰る)ことができる。この道はそういう道なのです。

 無音を感じるのはこういう道だからかもしれません。

熊野の山並みの夕景
野竹法師(971m)
ピーク直近は急登でした

 私もこの道を幾度となく歩いていますが、ここは、自分を見つめ直し、いつのまにか無心で歩いている。そんな印象です。

 まだ大雲取越、小雲取越を歩いていない方は、是非歩いてみてください。
 ただし、空腹禁止!!空腹で歩けばダルにとりつかれます笑

マップ:熊野古道大雲取越
マップ:熊野古道小雲取越

私の中の熊野古道ベスト5

熊野とは④で書き忘れましたのでここで紹介します。
第1位 中辺路 滝尻王子~継桜王子
 今回の大雲取越、小雲取越と甲乙つけがたいですが、熊野古道のほぼすべてがある区間です。王子、アイドル(牛馬童子)、自然林、絶景、由緒ある岩・木、石仏、石畳、紅葉、霧、川・谷・池、難行苦行、水垢離、温泉。今のもので世界遺産、宿、カフェ、路線バス、案内所(熊野古道館)、道の駅・・。楽しくてしんどい道。そのうち特集します。
第2位 大雲取越、小雲取越
 上記のとおり
第3位 世界遺産周回 大日越~赤木越~中辺路
 熊野本宮で世界遺産に登録された古道を周回します。出発地点に戻ってくるので動きやすいですね。
 世界遺産センター→大日越→湯の峰温泉でゆで卵→赤木越→三越峠→発心門王子→熊野本宮大社→世界遺産センター。湯の峰温泉スタート&ゴールもありです。ゆで卵でビールを飲み過ぎないように。
第4位 紀伊路 八軒屋船着場(大阪市)~大鳥大社(堺市)
 都から舟で淀川を下って大阪の八軒屋に着きいよいよ熊野を目指す。都会の中で熊野を感じることができ、ここを歩くのが好きです。私が熊野古道を知るきっかけになったところ。たこ焼き買いながら歩くの楽しいですよ。
第5位 紀伊路 藤白神社(藤代王子)~橘本神社(橘本王子)
 ここに熊野の一の鳥居があった(今はないです)。実はここから熊野なんです。(住所も海南市鳥居)私の地元であり、藤白神社には本地仏(熊野とは③)をお祀りしており熊野の神仏にお参りできます。今も古道からは海が眼下に見渡せ、峠には絶景が待っています。峠からはみかん畑の中をいきますが、橘といわれる柑橘の発祥の地で、菓子業の祖でもある橘本神社があります。
次点は 小辺路 十津川温泉~熊野本宮大社です。路線バスを活用でき、登っぱで下りっぱです。

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