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世界は、いつでも音楽に溢れている。

2021/6/20 映画記録no.37「蜜蜂と遠雷」

圧倒されました。
私は音楽をやったことがないので、ピアノの世界なんて何も知りませんが、素人でも、その熱量というか、温度というか、そういうものに圧倒されて、呼吸をするのも忘れるくらいでした。

今日は、この作品について書いていきます。


作品について。

直木賞と本屋大賞をダブル受賞した恩田陸の同名小説を、松岡茉優、松坂桃李、森崎ウィンら共演で実写映画化。

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ピアノの天才たちが集う芳ヶ江国際ピアノコンクールの予選会に参加する若き4人のピアニストたち。
母の死をきっかけに、ピアノが弾けなくなったかつての天才少女・栄伝亜夜は、7年の時を経て再びコンクールへの出場を決意する。
音大出身だが、現在は楽器店で働くコンクール年齢制限ギリギリの高島明石は、家族の応援を背に最後の挑戦に臨む。
名門ジュリアード音楽院在籍中で完璧な演奏技術と感性を併せ持つマサル・C・レビ=アナトールは、優勝候補として注目されている。
そして、パリで行われたオーディションに突如現れた謎の少年・風間塵は、先ごろ亡くなった世界最高峰のピアニストからの「推薦状」を持っており、そのすさまじい演奏で見る者すべてを圧倒していく。
熱い戦いの中で互いに刺激しあい、それぞれ葛藤しながらも成長していく4人だったが……。

松岡が亜夜を演じるほか、松坂桃李が明石、森崎がマサルに扮し、映画初出演の新星・鈴鹿央士が塵に抜てきされた。
監督・脚本は「愚行録」の石川慶。


印象的な言葉。

音楽は、生活の中にこそあるものだし、演奏者も、普通の生活があるところにいて良いはずでしょ?
生活者の音楽っていうのかな。
音楽だけを生業にしている奴らには、絶対辿り着けない領域があるはずだから。
世界中にたった1人でも、野原にピアノが転がっていたら、いつまでも弾き続けていたい。

誰も聞く人がいなくても?

音楽って、そういうものでしょ?
音楽とは、つくづく不思議なものだと思わされます。
演奏するのは、そこにいる小さな個人であり、指先から生まれるのは、刹那刹那に消えていく音符です。
でも、同時にそこにあるのは永遠とほぼ同意のものなのです。
音楽というその場限りで儚い、一過性のものを通して、我々は永遠に触れているのです。


好きなシーン。

かつての天才少女・亜夜を演じた松岡茉優さんと、謎の少年・塵を演じた鈴鹿央士さんが、連弾をするシーンがあります。

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月明かりの下で、2人並んで体を揺らしながら、軽やかに鍵盤の上を指先が踊る、楽しそうに微笑みあって、静かなリズムも賑やかなリズムも、1曲のはずなのに、何曲も聞いているかのような、そんな演奏シーン。

このシーンが1番好きでした。

大舞台であるコンクールから離れて、ただ「音楽が好き、ピアノが好き」という根っこの部分に、塵が亜夜に優しく訴えているような、大切な場面だと思います。


約7分のクライマックス、圧巻の演奏シーン。

最後、亜夜の演奏シーン。
出番になっても姿を現さず、1回会場を出た亜夜でしたが、自分の中で葛藤を繰り返し、再び舞台に戻ってきました。

ここでの演奏シーンは、圧巻でした。
息をするのも忘れてしまうくらい、本当に凄すぎた。

私は、音楽のセンスがありません。
自分がどのくらいやれるのかも分からないけど、素人の私から観ていたら、その姿は本当に、同じ人間とは思えない。
鍵盤の上を、指が踊るというより、狂う感じ。
踊るなんて、そんな可憐なものでなく、もっと強くて激しい、本当「狂う」という言葉が丁度良いです。

母親を亡くしてからピアノが弾けなくなった亜夜。
いろんなものを考えて、葛藤して、逃げずに、あの時弾けなかった音楽を、7年越しに弾き切った、その姿。

弾き終わって、観客の前で一例をした亜夜の笑顔は輝いていました。

とんでもない領域にたどり着いた、1人の強くて美しいピアニストが、その舞台に、しっかりと自分の足で立っているのを見て、安堵の気持ちになりました。

クライマックス、7分の演奏シーン、ここは圧巻でしかないです。

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観終わって。

無音の中で馬が走っている映像や、突然、謎に廃墟みたいなところに立っていたりして、どこだ、ここ?という気持ちになりましたが、きっとこれは、原作を読んだら解ける謎だと思うので、これから原作を読みたいと思います。
(この前、買ってもう手元にあるんです。ふふふ、準備がいい。笑)


母親が亡くなる前、一緒に連弾をしているシーンがありますが、音楽家だからこそ感じるんだろうなって思う感性が、垣間見えた言葉がありました。

「世界が鳴ってる。あなたが世界を、鳴らすのよ」

雨の音、小鳥が鳴く声、やかんのお湯が沸く音、風の音、私たちが何気ない聞いている、聞こえている音全てに耳を傾けて、「あなたが鳴らすのよ」と亜夜に語りかける母親。

このシーンは、きっと音楽をやっている人なら、共感するところなのかな、とも思いました。

それにしても「あなたが鳴らす」なんて、素敵な言葉ですね。

音楽のことなんて何も知らないけど、ましてや「天才」の領域にまで達した人たちが集まった世界なんて、想像すらできない。
でも、何かをとことん極めて、過去と向き合いトラウマを克服して、強くなって、勝ち取っていく、そんなピアニストらの姿は、カッコ良かったです。

次は、小説を読んで、映画よりも深い世界に没頭したいと思います。
天才同士が競い合い、手を差し伸べ合う、素敵な作品でした。


おりょう☺︎

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