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最前線で戦っている人の孤独感

朝、家を出ると夏の激しい太陽の主張が和らぎ、鳥のさえずりと共に柔らかな空気が漂う。
この空気を秋の訪れとして歓迎している人、夏が終わってしまったなと哀愁を感じる人、さあ、収穫の秋だ、忙しくなるぞと仕事の号令にしている人、それぞれ捉え方が違うだろう。

3週間ほど前、1年以上連絡を取っていなかった人からLINEが入って来た。
「相談したいことがあるのですがお時間いただけますか?」

彼は医療介護業界、とくにPTOT界隈では有名、本も執筆しているし、会社も複数経営&コンサルしている。
外見も風格があり、絶対に私よりも5歳くらい上だろ、と思うが4歳くらい歳下である。

彼とは3年ほど前に知人の紹介で食事をした。
その時、彼は医療介護業界大手のシステム会社にいた。
その2か月後に2人でランチをし、セミナーを私がやる?みたいな話になったのだが、何となくふわっと流れた。

その2年後、介護系で300人ほど集まるコミュニティで偶然一緒になった。
「久しぶりですね、しみずの兄貴」
兄弟の盃を交わした覚えは全くないが、強面の弟を持てて光栄です。
その場でもひと言、ふた言程度会話を交わしただけ。

そして冒頭のLINEだ。
何を相談するのだ、私に。
弊社が入っているクライアントでこの彼が関わりたいと言ってきているというのを話に聞いたけど…その話かなあ?

ちょっと身構え、警戒しながら電話。
「しみずさんひさしぶりです。お忙しい所ありがとうございます」
元気な声。
相談の内容は彼が提携しているシステム屋の話を聞いてもらえないか、という身構えていたけれど大したことのない話。
そんな話で電話かけてくるわけがない。
「久しぶりに飲みましょうよ!」
という彼からの提案を受け、身構えながら先週2人で食事に行く。

店は個室。
ちょっと悪い人同士がちょっと悪い話をするのにはちょうど良いスケール感とサイズ感。
乾杯をしてから彼の話を聞く。
最近は年下のベンチャー社長の右腕として、銀行回ったり、VCにプレゼンしたり、メンバーまとめたりしていること、個人でいくつもの会社に出資したり、自分でも3店舗ほどデイサービスを経営したりしていること、業界団体設立の為に経産省や厚労省のかたと協議している事などをひたすら聴いていた。

私の話をする余地もないほどのスケール感、また話をスピードが速い、さらには食事を食べるスピードが速い。
急いで私も食べないと追いつかない。
しゃべっている暇がない。

「しみずさん、めちゃ話しやすいですよね、めちゃ聞いてくれるし」
そうだよ聴くよ、なぜなら間に合わないからね、食事。

「趣味はあるの?」
「自分は本当に根暗で暇な時間あれば本読むことくらいですかね。ギャンブルもやらないしお酒もそんなに好きじゃないし。月の半分くらい出張ですが飲むこともなくホテルに戻って本読んでいます」

結局何か毒まんじゅうを食べさせられることもなく会食が終わった。
たくさんの会社に関わり、周りから凄い人と思われているがどこか孤独、何となく話を聞いてほしかった、後輩だと自慢になっちゃうのでちょっと年上の私に。
「しみずさん、めちゃ話しやすいですよね、めちゃ聞いてくれるし」
この言葉をもう一度噛みしめると、本当に彼が今求めていたことだったのだろうな、と秋風漂う夜風を感じながら思った。

「身体だけは気をつけてね」
去り際に彼にかけた私の言葉は自然とお兄ちゃんのようなフレーズだった。

これから秋になります、皆様も身体を壊さぬようご自愛ください。

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