ママリのデータで企業と共に社会を変革するー 小椋友季×亀山杏子対談
妊活、妊娠、出産、育児というライフステージに向き合う女性向けのコミュニティアプリ「アプリ」を運営するコネヒトで、アプリ内で蓄積されたデータがどのようにクライアントに活用されているのか、法人向けに分析して提供する「家族ノート」のPdMの小椋友季と亀山杏子に話してもらいました。
まずは2人の経歴をご紹介。
ーお二人は現在コネヒトでどのようなお仕事をしているのですか。
小椋:妊婦さんや小さなお子様がいる家庭に向けて商品やサービスを提供している企業を対象としたカスタマーサクセス業務を担当しています。我々の主軸事業である「ママリ」で得た妊活・妊娠・出産・育児というライフステージにおける様々なデータを効果的に活用していただける企業の開拓、活用サポートをしています。
亀山:私も小椋と同じ部署に所属しており、まだまだ小さな部署なのでリード獲得から営業、導入後のサポートまで幅広く担当しています。
我々が持っているデータは活用方法次第で非常に有意義なものになるのですが、導入していただき、活用してみて初めてメリットを実感してもらえるものでもあります。データの質と、活用方法がセットになって初めてクライアントの役に立つものなので、導入後はクライアントと密にコミュニケーションをとりながら伴走しています。
母親の関心の始まりと終わりがわかるのがコネヒトのデータ
ーどのようなデータをクライアントに提供しているのですか。
亀山:ユーザの属性データとアプリ内での行動データが主なものです。ママリのユーザの年齢や居住地、出産日などといった属性データと、ユーザがアプリ内で行う検索、質問投稿などといった行動データですね。属性データと行動データを掛け合わせることで、例えば生後4か月になると母親は離乳食の悩みを抱き出すというようなことがわかるようになります。
小椋:その掛け合わせが大事ですよね。子どもの月齢軸で母親が何を検索するか、どのような質問を投稿するかがわかるので、子どもの月齢軸で母親の関心事や悩み事の始まりと終わりがわかるんです。
亀山:もちろん子どもの月齢軸だけでなく、季節や居住地によって変動する関心事も同じです。ユーザ属性によって変化し続ける母親のマインドシェアが可視化できるデータをクライアントに活用していただいています。
ークライアントはコネヒトのデータをどのように活用しているのでしょうか。
小椋:我々の現在のクライアントは大きく小売とメーカーに分類できます。小売業界のクライアントの場合、商品ごとの年間の販売量を予測して仕入れるため、仕入れ量が売上を決めるんです。仕入れ量が多すぎると不良在庫を抱えてしまい損をすることになりますし、仕入れ量が少なすぎると販売機会の損失になります。なので、仕入れ量を想定するためのデータがとにかく大事なんです。
亀山:そうですよね。だからこそ小売業界のクライアントは年間の販売量をできるだけ的確に予測するために我々のデータを活用してくださっています。
一例を挙げると、コロナ禍の影響を含めたキャンプ人気で避暑地に出かける方が非常に増えており、例年に比べ長袖服の需要が高まっているんです。例年通りの販売量を仕入れてしまうと、高まっている長袖服の需要に応えられるだけの在庫がないという機会損失になるんです。
小椋:コネヒトのデータを活用していただくことで、例年では長袖服の需要が落ち着くはずのタイミングで「長袖」という言葉を含めた検索や投稿が増えていることに気づくことができ、具体的な投稿内容を見ることで需要が高まっていることを知ることができる。「この時期でも長袖服を売っているお店ってどこですか」というような投稿があったとしたら、ニーズに合わせて仕入れ量を調整することができますよね。
亀山:販促キャンペーンのタイミングを調整する上でもデータを活用していただいていますよね。今回の例で言うと、長袖需要が例年より長く続いているということがデータ上でわかるので、そこに合わせてキャンペーンを実施することができます。そういう意味では仕入れ量だけでなくマーケティングにも使えるデータであると思います。
小椋:そうそう。小売以外では、ものづくり屋さんであるメーカーも我々のクライアントなのですが、メーカーさんの方がマーケティングにデータを活用してくださっているイメージがありますね。
商品開発を行うメーカーは、新しいものを作り、その価値を販売価格に乗せることで売上が成り立つ業界です。特に子育て家庭に向けた商材を開発するメーカーにとっては、子どもの数が減っているので新商品の新たな価値で単価を上げることが大事なんです。
亀山:だからこそ、子育て家庭向けの商材に新たに求められている価値は何なのかという情報が大事になるんですよね。どのメーカーもその情報を得るために市場調査やユーザインタビューを行っているのですが、アンケートやユーザインタビューで得られる情報には偏りがあるんです。
小椋:そう、そこの課題は大きいしメーカーの担当者も肌で感じていると思うんですよね。理由は色々とあるのですが、ひとつはアンケートもユーザインタビューも回答者がそういう場であることを意識した答えしかできないということ。そもそも記憶に残っていることしか回答してもらえないですし、自分の過去の決断を否定するような回答をするユーザは少ないはず。偏りのないフラットなユーザの本音をどれくらい拾えているのかがわからないのは、商品開発に多額の投資をする上で大きな不安要素だと思います。
もうひとつは、メーカー側の性質です。ネガティブに捉えてほしくないのですが、ものづくりをしたい人たちってやっぱりものづくりがしたいんです。だからこそ、新商品を作るために好都合なアンケートやユーザインタビューを設計したり、都合のよい分析を無意識にしてしまう。
亀山:メーカーの担当者のものづくりに対する熱量って本当にすごくて、その熱量とユーザのニーズを上手にマッチングしたい。開発者の熱量が空回りするのはメーカーにとっても購入者にとってもメリットがない。ユーザに喜んでもらえるものを作りたいという開発担当者たちにとってもメリットがない。だからこそその熱量をデータで商品に繋げたいんですよね。
小椋:我々のデータ活用という文脈で話すと、一番印象に残っている事例は検討していた商品開発の方向性を一度見直すという意思決定をしてくれたクライアントですね。そのメーカーさんの担当者間では新たな商品開発に非常に前向きで、みなさんがワクワクしており、方向性もある程度決まっていたタイミングで我々のデータを分析した結果を報告させていただいたんです。
結果的には今その商品開発に投資するタイミングじゃないという判断をされたのですが、そこに感動したんです。新商材の開発って会社にとっては非常に大きな投資なので、我々のデータが投資に対する回収の難易度が高すぎるという理解を促し、大きな意思決定に繋がったことが素直に嬉しかったです。
亀山:そうですね、投資を後押しできることもあれば、投資を踏みとどまらせることもできる。意思決定はもちろんクライアントに任せていますが、意思決定をする重要な要素を提供できているという感覚はすごく喜ばしいですよね。
データを通じて得た知見を社会に実装してくれる企業と仕事がしたい
ーコネヒトのデータが小売業界やメーカーの意思決定に影響を与えているんですね。もう少し広く、社会全体に与えうる影響を想像してワクワクすることはありますか。
小椋:我々が向き合っているのは小売やメーカーといった企業群なのですが、どの企業担当者と話しても購入者の生活にインパクトを与えたいという想いが強いんです。ママリのユーザを通じて家族に向き合っている我々からすると、それがすごく嬉しい。
そういった企業さんが、我々のデータを通じて行う意思決定のひとつひとつが家族に還元できていると私が信じられているのは、我々が提供できるデータが家族の生活そのものを物語っているからだと思うんです。それが私たちが携わっている事業の社会貢献かな。
亀山:そうですよね。だからこそ、小売やメーカー以外の業界にも我々のデータを活用してもらえるような環境を作りたい。すごく雑な言い方かもしれませんが、コネヒトのデータって子育て家庭の「今」を表現しているものなので、上手に使ってもらいたい。我々はあくまでもデータ提供者なので、データを通じて得た知見を社会に実装してくれる企業さんとの新たな取り組みにはずっとワクワクし続けられると思います。
ーありがとうございました。