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福祉とアートの交差点「カプカプ新井一座」という実験


イラスト:小日山拓也

 先週6月21日夏至の日に、久しぶりに横浜の生活介護事業所カプカプでのワークショップ「音とカラダのジッケン室」が実施されました。すでにこのワークショップにも8年間関わっています。

 ご存知の方も多いかと思いますが、現在ALSを罹患している体奏家・新井英夫さんの今後の”スタイル”もジッケンしようと、今回は新井さんだけがオンライン、カプカプ新井一座(板坂記代子、ササマユウコ、小日山拓也)は現地集合となりました。その間をつなぐメディアとして、カプカプの素晴らしいテクニカルチーム(千葉さん、飯塚さん)、そしてアナログ力全開の「アライちゃん人形」が登場しました。団地のピロティや商店街の空きスペースが自由に使えるのは、今年で開店25周年となるカプカプが積み重ねてきた地域コミュニティだからこそ。この日は、秋のカプカプ祭りを見据えたなんちゃって炊飯器ガムラン舞踊体験が繰り広げられました。
 個人的には、カプカプ新井一座にはいつもフルクサスやハプニングやダダイズム、そして新井さんが大事にしている「あそび」のエッセンスを忘れないように、この8年間臨んできました(専門のサウンドスケープ思想は言うまでもなく)。新井さんの精神は身体が変化してもやっぱり変わらないし、それはダンスや美術や音楽や福祉がひとつにあった洞窟時代の人間たちとも変わらないだろうとも思うのです。そこにはいつも最新テクノロジー(火とか)もあっただろうし、基本的にはこの日のように「なんだかわからないけれどオモシロイからやってみよう!」の積み重ねだったと思います。そこからアートや福祉の概念も立ち現れていったでしょう。それがつまり「生きる」ことでもある。
 この日も、新井さんの「声」がカプカプーズの想像力を触発し、いつも以上に唯一無二の場を生みだしていました。そして偶然にも、この日は世界ALSデーでもあったのでした。

横浜市旭区西ひかりが丘団地の商店街をフル活用

捕捉:下の写真は、この日の新井さんのPC画面です。カプカプと自宅のPCをZOOMでつなぎ、新井さん宅には全体の画面切り替えや音響ミキサー役として、サポーター(石川清隆さん)に同席して頂きました。
 例えば病によって障害を抱えたとしても、サポートする人やテクノロジーを駆使することで就労(社会参画)も可能の時代となりました。周囲も新井さんの身体変化に合わせて柔らかに対応できるのは、そこにアートとケアの意識があるからです。その力をあらためて実感する一日でもありました。

〇クラウド・ファウンディングのご案内
 現在、ARDA代表・三ツ木紀英さんを世話人に、7月17日(海の日)に体奏家・新井英夫さんと彫刻家・安藤榮作さんによる素敵なイベントが予定されています。目標金額には2日で達成しましたが、新井さんが活動を続けるための補助機器(高精度の視線入力装置等)の購入費の一部充当を目指したストレッチゴールが設けられました。
締め切りまでまだ1か月ありますので、是非リンクをご一読の上、応援よろしくお願いいたします。

〇カプカプ新井一座の「舞台芸術と福祉をつなぐファシリテーター養成講座」受講生募集中!今年度も9月から3月にかけて、カプカプを学びの場に変えて、新井さんの病状に合わせた即興力マックスの講座が開催されます。前回から有料講座へと変わりましたが、唯一無二の伝承の場ですのでご興味のある方は是非こちらをご覧ください

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