〈耳の哲学〉『存在と睡眠』
ある高齢者施設のドキュメンタリーで、ソファに眠ったまま静かに亡くなっていく男性の最期を見た。それは〈老衰〉であり、ひとつの〈オンガク〉の終わりである。カメラはまるで自然の風景を眺めるように、その〈死の瞬間〉を定点で静かに捉えていた。周囲のスタッフさんにとっては日常の風景なのだろう、彼らはまったく慌てていない。同じ部屋で思い思いに過ごす高齢者たちには事態が正しく認知できない人もいるのだろう。やはり特別に驚いた様子もなく、みんなで静かにお別れを告げている。高齢者たちが暮らすその