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【新監督特集⑥】ナーゲルスマン監督について知っておくべき、10のポイントとは

—— 以下、翻訳 (『ブンデスリーガ』公式サイト 記事全文)

バイエルン・ミュンヘンの新監督、ユリアン・ナーゲルスマンは、指導者としてのキャリア初期では「ベイビー・モウリーニョ」というニックネームで呼ばれていたが、ホッフェンハイムやRBライプツィヒで印象的な結果を残し、彼自身の個性を発揮している。

さて、bundesliga.comでは、ここから、2021/22シーズンからミュンヘンで指揮を執ることになった天才監督にスポットライトを当てていきたいと思う...

1)数々の記録更新

2016年2月にホッフェンハイムの監督に就任したナーゲルスマンは、健康上の理由で辞任したベテラン戦術家フープ・ステーフェンス前監督の後任として、若干28歳の若さで就任した。ナーゲルスマンはすでにその夏の終わりに指揮を執る予定だったが、その穴を埋めるために着任を前倒ししたのだった。ナーゲルスマン監督は、就任当初は17位に沈んでいたクラブを、シーズンが終わる頃には、安全圏内へと引き上げたのである。

ナーゲルスマンはブンデスリーガ史上最年少の正式監督だが、ブンデスリーガの試合を指揮した最年少記録ではない。1976年10月23日、24歳のベルント・ステーバーがザールブリュッケンを暫定的に指揮し、ケルンに乗り込んだ。なお、その試合は5-1で負けている。

ナーゲルスマン監督は、33歳の誕生日を迎えた直後に、ライプツィヒを率いてUEFAチャンピオンズリーグの準決勝に進出し、ヨーロッパの歴史にその名を刻んだ。ディディエ・デシャン氏の35歳という記録を更新し、最年少でベスト4に進出した監督となったのだ。また、ナーゲルスマンが生まれた年に、選手としてアトレティコ・マドリードのトップチームデビューを果たしたディエゴ・シメオネ監督のチームを撃破しての快挙である。また、実はリオネル・メッシよりも1ヶ月若いという事実も忘れてはならない。

2) 怪我による絶望

バイエルン州のランツベルク・アム・レヒで生まれたナーゲルスマンは、1860ミュンヘンのユースでプレーした。かつてチームメイトだったクリスティアン・トレーシュやファビアン・ジョンソンがブンデスリーガで活躍していく一方で、彼はアウグスブルク入団直後に膝を痛めてしまい、わずか20歳で、ナーゲルスマン選手の夢は無残にも絶たれてしまったのだ。

現役時代はディフェンダーだったナーゲルスマンは、「最初はもうサッカーに関わりたくないと思っていた」と明かす。「こんな若くしてキャリアを終えなければならないのは、私にとって非常に悲しいことだったね。」

3)トレーニンググラウンドの革新者

ホッフェンハイムは、選手のタッチやコントロールを微調整するために「Footbonaut」を使用している世界でも数少ないクラブのひとつだが、当時のナーゲルスマン監督はトレーニングでのテクノロジーの使用をさらに推進した。ドローンを使って選手の動きを撮影するだけでなく、メイントレーニングピッチのハーフウェイラインに巨大なビデオウォールを設置したのだ。

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このシステムは、ハーフウェイライン上のタワーに設置された2台のカメラと、両ゴール裏に1台ずつ設置された計4台のカメラで構成される。それぞれのカメラの映像が常にスクリーンへと映し出され、カメラはトレーニングスタッフによって管理されているので、映像を止めたり、巻き戻したり、早送りしたりと、選手たちに特定のポイントを見せることができるのだ。ナーゲルスマンは、4つのアングルを駆使して、より詳細に状況を説明することができた。

4)有名なロールモデル

ナーゲルスマン監督は、バイエルン・ミュンヘンの元監督ペップ・グアルディオラ氏の影響を受けたと語っているが、最も大きな影響を受けたのは、ボルシア・ドルトムントの元監督トーマス・トゥヘル氏だと認めている。2007/08シーズンにアウクスブルクのリザーブチームの監督を務めていたトゥヘル氏は、ナーゲルスマンに対戦相手のスカウティングを任せた。「それが私のコーチングへ至る道となった」とナーゲルスマンは説明する。「彼からは多くのことを学んだ。」

トゥヘル監督は、若い弟子を同じように褒めた。ナーゲルスマンがホッフェンハイムの監督になったとき、トゥヘルは「彼は非常に好奇心があり、非常に勤勉な若い監督だ」と語っている。「彼はユースサッカーで素晴らしい成功を収めている。私は彼のことをとてもうれしく思うし、彼の能力を信じているよ。」

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5) 戦術の多様性

ナーゲルスマンのライプツィヒでの2シーズンは、ブンデスリーガ・ファンタジーマネージャーにとっては悪夢のようなものだった。ナーゲルスマン監督は、3バックや4バック、前線にターゲットマンを置く、あるいはセンターフォワードを置かないなど、あらゆるフォーメーションでプレーできるようにチームを指導しているのだ。

そのため、彼のチームは観客にとっても対戦相手にとっても、予想するのが非常に難しい。ラインアップが発表されても、彼が11人の選手を使って何をしようとしているのか、はっきりしないこともある。そして、当初の作戦が思ったほど機能しないと判断すると、試合の早い段階で戦術やメンバーに修正を加えることを恐れない。これほど流動的で多彩なチームを作ることができる監督は、他にはいないだろう。

6)明晰な頭脳

当然のことながら、ナーゲルスマン監督のサッカー哲学には、とりわけトゥヘルの影響が見られる。「私は敵陣のゴール付近で相手を攻めるのが好きだ。というのも、高い位置でボールを奪えば、ゴールまでの道のりはそれほど長くはないからだ。ビジャレアルのプレースタイルは好きだし、若い選手への指導方法も素晴らしい。また、バルセロナやアーセナルも、アーセン・ヴェンゲル元監督の仕事ぶりが好きだよ。」

ナーゲルスマン監督は昔から深い洞察力の持ち主だった。最初は経営学の勉強をしていたが、中退し、代わりにスポーツ・トレーニング科学の学士号を取得した。さらに、プロのコーチングライセンスを取得した際には、元シャルケ監督のドメニコ・テデスコに次ぐ、クラス2位という優秀な成績を収めた。

さらに、ホッフェンハイムでのナーゲルスマン監督のノウハウは、ドイツのサッカー界に衝撃を与え、2016年の最優秀監督に選ばれた。また、これは、元ライプツィヒのボスであるラルフ・ラングニック氏が、2019/20シーズンの開幕に合わせて彼を "赤い雄牛" (RBライプツィヒの愛称)に雇い入れることにも繋がった。

7)「Du」か「Sie」か?

ドイツ語では、タメ語のような「Du」と、敬語のような「Sie」のどちらで相手を呼ぶか、という社会的に難しい問いが存在する。ナーゲルスマン監督は、強い団結力と親密なチーム精神を育むために、また自分が選手たちと同世代であることを意識して、選手たちに前者を使うように指示している。また、キャプテンの選出やクラブの目標設定をチームに任せるなど、選手たちに責任感を持たせるような仕掛けを行う。

バイエルンの元監督ユップ・ハインケス氏は、2018年1月、アリアンツ・アレーナでのホッフェンハイム戦で5-2と勝利した後、当時のナーゲルスマン監督に「Du」で呼び合う許可を与えた。これは、43歳年上の普段控えめなベテラン戦略家が、彼を実に称賛していることをよく表すエピソードだ。

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8)ナーゲルスマンの表

就任1年目の若き新人監督に魅了され、ドイツの各メディアは「ナーゲルスマンの表」を作成し、他のクラブとの比較で、彼の記録を強調するようになった。今ではほとんどのメディアがそうした記録を残すのをやめてしまったが、それでも印象的な読み物となっている。

2016年2月のブンデスリーガ第21節でデビューし、2018/19シーズン終了を以てホッフェンハイムでの活動を終えるまでの116試合で、ホッフェンハイムは合計191ポイントの勝ち点を獲得した。同じ期間内でこれを上回るのは、バイエルン(同279)とドルトムント(同228)の2チームだけで、バイヤー・レバークーゼン(同182)や、ボルシア・メンヒェングラッドバッハ(同170)、シャルケ(同158)といったビッグチームをも抑えている。

9) オシャレすぎる?

観客のいないスタジアムでは、試合中に選手やコーチがピッチ上で何を話しているかをサッカーファンは知ることができる。ライプツィヒの試合を観戦したことのある人なら、タッチラインから、妥協なきファッションを身に纏ったナーゲルスマン監督がチームに目立つ声で指示を出すのを聞いたことがあるだろう。

同様に、ナーゲルスマン監督の服装も "目立つ" と言われている。ライプツィヒをチャンピオンズリーグの決勝トーナメントに2季連続で導いてきた彼の服装は、特にヨーロッパの舞台で注目を集めてきた。彼の指導方法に文句の余地はないが、そのファッションに質問がある人はいるかもしれない。

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10) コモン・ゴールに参加

しかし、ナーゲルスマン監督は、その成功により慢心してしまったわけではない。実際にはその逆だ。2017年10月、ナーゲルスマン監督は、世界のサッカー界で初めて『コモン・ゴール』の活動に署名した監督となった。この『コモン・ゴール』とは、サッカー選手が給与の1%以上を、ベルリンに拠点を置くNGO団体「ストリート・フットボール・ワールド」が運営する共同基金に寄付するプロジェクトのことである。

マッツ・フンメルス、セルジュ・ニャブリ、ダニ・オルモなど、ブンデスリーガを代表する選手らとともに、この価値ある活動に参加しているのだ。

▼元記事
https://www.bundesliga.com/en/bundesliga/news/julian-nagelsmann-10-things-on-bayern-munich-s-coach-rb-leipzig-baby-mourinho-5300


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