【イケてる企業のC.I.(コーポレートアイデンティティ)を切る!】◆第18回:株式会社 スターフライヤー
福岡県(北九州)に拠点を置く、"顧客満足度"11年連続 第1位の「航空会社」があります。
第18回は、「ライト兄弟」フライヤー号の初飛行から"100年目"にあたる2002年12月17日に設立された"黒い機体"で知られる航空会社で、唯一福岡県に本社を置く「株式会社 スターフライヤー(SFJ)」です。
スターフライヤーは、北九州市を拠点とする航空会社として、TOTO・安川電機・九州電力など、福岡県・北九州市の地場企業からの出資を受けてスタートしました。
創業以来 独自の「豪華すぎないプチプレミアム」路線で、順調に業績を伸ばしてきましたが、2013年度決算では、30億円の赤字に転落し 国際路線からも撤退しました。
しかし、運航路線を組み換えたり、ANA全日空と業務提携し再建に成功しています。旅客数も、2015年度を底に復調しました。
スターフライヤーは、飛行機の機体も、機内も、そして客室乗務員の制服も全て「黒」です。
このスタイリッシュな「黒」が特徴ですが、それ以外にも「充実したサービス」や「格安航空券」など、価格面でも魅力です。
ここで、スターフライヤーに「また乗りたくなる!3つの魅力!」を紹介します。
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【スターフライヤー3つの魅力】
◆SFJの魅力1:「ゆったりとしたシート!くつろげる客室空間」
〇飛行機に乗る際は、基本的に長時間同じ場所に座り続けることになります。その為、座席次第で快適に過ごせるかどうかが決まります。スターフライヤーは、シートピッチ(前後の座席間隔)の広さで定評がある航空会社です。
同じ機体でも他社が最大「180座席」を配置するのに対し、スターフライヤーは「150座席」に設定しています。
「飛行機は座席が窮屈」と感じる人でも、スターフライヤーなら快適に過ごせます。
また その他の機能も、座席周りに必要なものが一通り揃っているのも魅力(詳細は後半で)です。
◆SFJの魅力2:「あのコーヒーショップの味も!充実の機内サービス」
〇一般的なLCCの場合、コスト削減の為に、機内サービスを最低限にしています。
スターフライヤーは、フライト中に出す飲み物が、充実していることで有名です。コーヒーは、人気コーヒーショップの「タリーズ」と提携したオリジナルブレンドが提供されています。
コーヒーへのこだわりは、開業時から変わっていません。
1人分のコーヒーは、「150ミリリットル」という絶妙な量であり、「温かい飲み物が冷める前に飲み終えられる量」に設定されています。
他にも、日本茶・オニオンスープ・ミネストローネ・アップルジュース・ミネラルウォーターなど、様々な嗜好に合わせて飲み物が提供されています。
また、子どもに対しては、絵本の貸し出しは、勿論 客室乗務員が赤ちゃん用のミルク作りを手伝ったり、全ての化粧室におむつ交換台を設置したり、小さな子どもとの旅行にもうれしいサービスが充実しています。
◆SFJの魅力3:「縁とタイミング次第!豊富な割引運賃」
〇「予定があらかじめ決まっていて、早く航空券を確保したい人」にとって、スターフライヤーはおすすめです。
所謂「早く予約すれば、するほど料金が割安になる」タイプの運賃だけでも…
「そら旅75」「そら旅55」「そら旅45」「そら旅28」「そら旅21」と5種類あります。
80日前までに予約・購入する場合の「そら旅80」は、北九州~羽田間の運賃の最安値は「9.500円」です。
同区間の大人普通運賃は通常期で、「3万6.500円」ですから、かなりお得です。
また、北九州を本拠地とするスターフライヤーならではの割引運賃が「スターQ割」です。これは、福岡県・大分県・佐賀県・熊本県・山口県に在住、もしくは本籍を有する人、この県に、2親等以内の親族が在住している人、勤務地が、この県であれば受けられる割引です。
スターフライヤーは、九州に強い、大手航空会社並みの充実したサービスを提供しながらも、多くの割引制度を設けている航空会社です。
【航空業界シェア&ランキング】(2018年-2019年)
各々のランキングを比較することで航空市場内のシェアや現状、動向を知ることができます。
◆1位:ANA HD 20,583億円 56.1%
◆2位:日本航空 14,872億円 40.5%
◆3位:AIRDO 448 億円 1.2%
◆4位:ソラシドエア 419億円 1.1%
◆5位:スターフライヤー 399億円 1.1%
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では、「スターフライヤー」の「イケてるC.I.」の一部を紹介します。
【企業理念】
「私たちは、安全運航のもと、人とその心を大切に、
個性、創造性、ホスピタリティをもって、『感動のあるエアライン』であり続けます。」
【ブランドコンセプト】
「Mother Comet ~blaze through the world~」
Mother Cometは、空を飛びながら何万個もの光輝く流星群を生み出す。同じようにSTAR FLYERは、快適なフライトと共にお客様の夢や希望に輝きを与える。
ライト兄弟が生み出した航空産業の情熱と哲学を今なお受け継ぎ、無償の愛から喚起されるホスピタリティをお客様に提供する。
お客様が輝くための移動体であること
お客様が輝くための宿であること
お客様が輝くためのホスピタリティであること
~blaze through the world like a comet~
彗星のように、輝きを生み出し世界を駆け巡る航空会社、STAR FLYER。
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【再建&成長の理由分析】
「スターフライヤーさん」が 経営危機を乗り越えて安定した営業利益を上げられる態勢が整い、2018年に4年半ぶりに国際便(台湾)を再開できたのは、大きく2つ。
「SFJ"らしさ”」と「ANAとの提携」だと思います。
そして 社員さんひとりひとりが、「感動のあるエアライン」という理念の基、自分たちがやれる事を「プロジェクト化」したことです。本当に素晴らしいと思います。
◎C.I.については、流石に創業時、一流のコンサル会社や、トップクリエイターが入られて制作されたとあって、凄く整理された完成度の高いモノです。
しかし、一言いわせて頂くとしたら…
◎「企業理念」の具体的な目標=成し遂げたいことは、見えるのですが、「理念」として最も重要な「航空事業」を通して世の中に、何を残すのか? 何を齎すのか?=具体的なゴールが見えないと感じています。そして企業理念の説明文が、ちょっと長く具体性が欲しいと思いました。
それから、創業時の「C.I.」なので、この「Philosophy」が社内外に本当の意味で、浸透したのかが気になる所です。
*concanの考えるC.I.は…
◆企業理念(不変の想い/存在意義=成し遂げたい想い)→◆コーポレートメッセージ(企業理念を短くしたもの)→◆事業ビジョン(売上・数値目標)→◆経営理念(左記を達成する為の指針&社員への約束)→◆行動指針(社員がとるべき行動)→◆行動規範(左記を達成する為の具体的な詳細行動)
参考までに照らし合わせて貰えるとありがたいです。
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それでは「SFJ"らしさ”」と「ANAとの提携」について、もう少し仮説ですが分析してみます。5つに分けて説明します。
■1.「24時間運用可能な北九州空港に拠点を置いた点!」
*スターフライヤーが、成長できたのは「24時間運用が出来る北九州空港」を本社にしたからです。
機材の稼働率を高められ、価格競争力が出せました。
地元自治体の支援も厚く、福岡空港よりも柔軟なスケジュールを設定でき、北九州から羽田への「早朝便」や「深夜到着」の復路便は、国内線では他に例がありません。
■2.「航空業界では異端な"黒"を基調に、スタイリッシュな機体デザインにした点!」
*スターフライヤーの最大の"特徴"は、何といっても色。
とにかく「黒」に拘っている点です。
どの空港を離発着する国内線は、ほぼ「白ベース」の機体。
その為「スターフライヤー」の機体は遠くからでも、直ぐ分かり目立ちます。ブランディング効果絶大です。
この機体のテーマは「21世紀のモダン」。
ロータスなども手がけているデザイナーの「松井龍哉氏」によってトータルデザインされ、2006年には「グッドデザイン賞」を受賞しました。この完成度は、他の会社には、中々真似できません。
では、何故「黒い機体」になったのか?
就航前、機体デザインは 3つの方向があり、最終的には「MODERN」で「LUXURY」のゆるやかな曲線を生かした機体に落ち着いたそうです。
今までに無い「エアライン」を創るべく模索していた創業者は、周囲の反対を押し切って、機体カラーに「黒」を選択しました。「黒」は"太陽の光"を吸収する為、精密機械の塊である航空機には適さないと、機体カラーに「黒」を使う事を敬遠していた航空業界の中で、その試みは、正に異端。
その後、エアバス社との安全検証を重ねた結果、実際には何の問題が無いことが実証され、今のスタイリッシュな機体デザインが完成しました。
■3.「航空業界ではタブーとさた"プレミア戦略"で顧客満足度を上げた点!」
*スターフライヤーの競争力の"源泉"は、顧客満足度に拘る「プレミアム戦略」です。
SFJは、日本版「顧客満足度指数」(JCSI)調査で、調査開始以来、国内航空カテゴリー部門で、11年連続"1位"を獲得しています。
好評価の要因は、快適な機内環境です。シートピッチは、競合他社の標準より、最大 約10cmほど広くしています。
また、全便・全席が「レザーシート」で、モニターと電源も備え付け、国内線では、"例"がありません。
大手エアラインとは違う「プレミアム感」を上手く訴求し、高い満足度を得て来ました。
ポイントは「豪華すぎないプチプレミアム」
日本でも過去、「プレミアム戦略」を採用した航空会社はありました。例えば「スカイマーク」は2014年に全席プレミアムをうたう「グリーンシート」を導入した事があります。
標準座席数375席の機体を271席仕様としました。
これは標準比72%の座席数になった為、単純計算で運賃は3割以上加算しなくては採算が合いません。
そのハードルは高く、スカイマークも2015年に取りやめました。しかし スターフライヤーが成し遂げたのは「24時間 離発着可能な北九州空港」が有ったからです。
スターフライヤーの成功の理由は、「プレミアム感」を出しながら、「LCC」に分類されるほど、安い運賃を提供できた点です。
■4.「感動のあるエアラインとして、社員が知恵を絞り様々なプロジェクトを実施している点!」
*搭乗手続きカウンターで自然発生的に生まれた「空飛ぶメッセンジャープロジェクト」(プロジェクトの一つ)
空港という場所には、色々な人生の、「出会い」や「別れ」、「決意」や「愛情」の溢れるシーンがあります。
就職で東京へ旅立つ友を見送るシーン、お孫さんとの別れのシーン、単身赴任のパパを見送るシーンなど。
そのような様子と出会った「グランドスタッフ」が、お見送りの方に声をかけ、搭乗されるお客さんに、「サプライズメッセージ」を記入し貰い、そのメッセージを機内で「客室乗務員」から お客さんに届けたことで、この「プロジェクト」は始まりました。
社員さん 曰わく、こういた地域密着型、お客さん密着型のプラスアルファのサービスは、「北九州空港」のような比較的規模が小さい地方空港だからこそ出来たと言われています。
それに加えて何よりも、スターフライヤーには「お客さんの為に、何かしたい」と思う人たちが沢山いるといいます。
だからこそ、自由な発想で企画を考え 話し合い、実現していく、「風土」が根付いたと思います。
これから先、この「感動のあるエアライン」という理念を、単なる「言葉」だけじゃない、しっかりとした思いで、繋いで頂きたいと思います。
■5.「ANAとの深化提携で、生産座席の多くをANAに販売し固定収入を確保した点!」
*スターフライヤーは、収益性悪化の危機をANA提携で乗り切りました。上場後、羽田以外の国内路線や、国際線に規模拡大を急いだこと(特に国際線の釜山線)が裏目に出て収益性は一挙に悪化、2013年度には大幅な赤字に転落しました。
そして、国際線と関西=福岡路線からの撤退し、ANAとの提携の深化によって再建が図られました。
ANAは2012年12月に、それまで「SFJ」の大株主であった「DCM社」から全株を買い取り、保有比率17.96%の筆頭株主となっています。
提携深化の内容として、「コードシェア」の拡大が上げられます。ANAがSFJから座席を買い取り、それをANA便として販売するという「コードシェア」の路線・規模を拡大しています。
これはSFJにとってANAからの固定収入を確保し、同時に事業規模の実質的縮小(自社販売座席数の圧縮)でもあります。
ANAへの業務委託として、生産体制整備に関してANAから支援を得ると伴に、多くの業務をANAに委託しています。
これがコスト低下を齎しました。
このことはANAにとっても好都合だった訳です。
座席を購入してANA便として販売するという「コードシェア」は、自社の機材・乗員を使うことなく便数(特に羽田の発着枠)を拡大⇒ANAの路線便数基盤を拡げることになりました。
これは対JAL競争力や、市場支配力の強化に有効なものでした。
また提携会社の予約販売をANAのシステムに取り込むことは、単なる業務システムの統合以上の効果が得られるものでした。
ANAにとって、提携会社への影響力強化やLCCの流れに影響されかねない国内線の運賃秩序(特に羽田を基点とした路線)の維持にも役立っていると考えられています。
こうしたSFJとANAとの業務提携は、両社にとって、WINWINの関係になっています。
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◎と言うことで…
企業が「成長・存続」する為には、頭(脳)の使い方が"2つ"必要だと感じています。
所謂「右脳と左脳」「論語と算盤」「理系と文系」「理論武装とクリエイティブ」など、両方の使い分けが必要だと痛感します。
その上で、経験やスキル、優秀なブレーンなど「人」が"鍵"になると思います。
「スターフライヤーさん」にも同じことが言えます。
SFJさんが再建できたのは、正に「SFJ"らしさ"」と「ANAとの提携」です。
最後に全体と、今後の課題を整理します。
「スターフライヤー」の事業は、ANAとの強い提携関係による安定的、効率的な体制で、羽田路線を中心とした国内の巨大な市場に「ゆとりある座席」や「個性的で良質なサービス」を提供することで、比較的に高い収入単価と高い搭乗率を得て利益を上げる構造になっています。
今後は、外国の会社と厳しい競争環境にある「国際線」で、その"モデル"が、どのように効果を発揮できるかが課題と言えます。
また就航から10年以上たてば、「リピーター」にも飽きが来ます。
そこで「機内装備」の更新や、「企業価値」を維持拡大していことが、最大の課題だと思います。
優位を維持できるように、設備投資も必要になると思います。
*【航空業界の今後の3つ課題】
〇1.LCCブームの終焉に追い込む「パイロット」不足(2030年問題)
〇2.FSCとLCCの差が無くなり、新興エアラインの台頭で競争が激化(燃料費の高騰含む)
〇3.国内空港の整備と、民営化による離発着獲得の競争の激化(パイロット問題含む)
*【現在の航空会社】→ANAやJALといった「FSC」(フルサービスキャリア)・ジェットスターやバニラエアといった格安航空の「LCC」(ローコストキャリア)・FSCとLCCの中間に位置する「MCC」(ミドルコストキャリア)の3つに分けられる。
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