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【Co-founder 遠又×安井 対談インタビュー】〜Compath設立1周年を迎えて今考えていること〜

2021年4月22日に1歳を迎えたCompath。
私たちにとって、本当にいろんなことがあった1年間でした。
1年の節目に、2020年度の活動をまとめ、浮かんだ問いをもとに日本の社会構造のリサーチをしました。
私たちの目にどんな世界が見えているかを共有しながら、いろんな人たちと対話をしたいと思い、ふたつの仕掛けを用意しています。
ひとつめはCompath Dialogue BOOK、このブックレットが皆さんとの対話の種になれば。
ふたつめはCompath Dialogue DAY、2021年度はじまりの対話のイベントが6月6日にあります。
ぜひ、一緒に旅をしていただけるとうれしいです。

これからも自分たちのペースで歩き続けるために、1年の節目にちょっと立ち止まって語り合おうと、Compath Dialogue BOOKには私たち二人の対談も収録しました。
これまでのこと、これからのことを語り合った対談パートを、noteでも公開したいと思います。

■聞き手
大川彰一さん

株式会社留学ソムリエ代表取締役。日本認定留学カウンセラー協会(JACSAC)幹事、TAFE Queensland駐日代表、東洋経済オンラインレギュラー執筆者。「留学ソムリエ®︎」として国際教育事業コンサルティングや留学に関する情報発信を広く行う。全国の大学や高校、留学イベントでの講演実績は多数。Compathの2人とは2020年1月の教育イベントで出会って以来、交流が続いている。

1年間を振り返って

―まずは、この1年間を振り返って、今、どんな気持ち?

遠又:あっという間だったよね。Compathを立ち上げる前は、妄想プロジェクトだったというか、「いつか日本にフォルケホイスコーレみたいな場所をつくれたらいいねー」みたいな感じで。縁あって東川町と出会い、そこからどんどん夢が現実になっていったよね。顔が見える人が増えた1年間だったな。

安井:「この道で間違ってなかった」という確信が得られた1年目だった。4年前にデンマークでフォルケホイスコーレに出会って、二人して惚れちゃって、6時間くらい部屋にこもってコンセプトを練って…。「とりあえずやってみよう!」から始まって、謎の自信と行動力でここまで来たけど、ようやく間違っていなかったと思えるようになった。

私たちは教育のプロでもフォルケのプロでもないけど、やってみないとわからないと思ったから会社を作ったんだよね。でも、設立した2020年4月の時点では、いまいち自信がもてなかった。この1年間、実践者として積み重ねてきて、学びに来てくれる人の顔が見えるようになって、日本とデンマークとの違いや実践の難しさを身をもって感じたからこそ、自分の言葉で自信をもって語れるようになってきたんだと思う。

遠又:最初は、本当に参加者が集まるのかなっていう不安も大きかったよね。初めてだった9月のショートコースでは、参加してくれる人がいたことが、まずすごくうれしかった。それまでは参加者像がぼんやりしていたのが、一人ひとりの顔が見えたことで実感が湧いて、「こういう人が来てくれて、一緒に学んでいくんだ」って思い切って最初の一歩が踏み出せた感じがしたな。

同窓会

―9月のショートコースでは、どんな気づきがあった?

遠又:募集前は、自分たちと同世代の20〜30代が多いかなと思っていたんだけど、14名の参加者は意外と年代がバラバラで、大学生もいれば40代の社会人もいて、男女比も半々くらい。「あ、こういう人たちが来るんだ」という感じだった。自分のための学びの時間が欲しい人って、世代に関係ないんだという気づきがあったよね。

安井:そうそう。ちょっと立ち止まって生き方を考えたいな…という人が多いかなと思っていたけど、それだけじゃなかった。観光地に行ったり美味しいものを食べたりする旅行じゃなくて、地域と出会う旅がしたいという人や、コロナ禍でオンライン授業が続くなか、人とつながりたい、世界と出会いたいという大学生もいて、動機もさまざまだったよね。

9月のプログラム

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―11月のワーケーションコースはどうだった?

安井:やるまではドキドキしてた(笑)。余白を大事にするフォルケでは何もしない時間が価値の真髄なんだけど、5日間はリモートワークでフォルケのプログラムは平日の朝と夜と土日だけ…という余白があまりないスタイルで、こんなのはフォルケじゃないと言われるんじゃないかと…。

でも、8日間が終わったときの後味が、フォルケで感じた空気感だったんだよね。本家であるデンマークの形式を全て守らなきゃいけないっていう思い込みから解放されて、こういうかたちで日本の社会や文化にチューニングしながら、自分たちらしくやっていけばいいんだと思えた。

遠又:私は、暮らしって大事だよねと改めて思った。私は教育業界にいたこともあって、フォルケに出会う前は、「学びには目的・意図があって、コンテンツがあって、カリキュラムが大事!」って思っていたんだよね。でも、フォルケの本には「(学びには)生活が大事」と書いてある。

いまいちピンときてなかったんだけど、2回のフォルケを通して、まさに共同生活のなかで学びが生まれるんだと実感した。特に11月のワーケーションコースでは、それぞれがリモートワークしている時間もあったんだけど、その時間や空間も含めて共同生活の一部で、それがあったからこそ学びが生まれたと感じて…。参加しやすい2泊3日のコースを作ろうかという話もあったけど、やっぱり7日間以下にはしたくないって思ったよ。

安井:11月のフォルケで出会った、転職の間の期間を使って北海道を旅していた人が、「ビジネスで学べることと人として生きるうえで大切にしたいこととの間に乖離がある。だから、今は本を読んだり旅をしたりしているんだ」って言っていて、すごく共感したんだよね。

ビジネスを通して学べることはたくさんあるし、自分が成長している感覚も得られるんだけど、成果を出して承認されればされるほど、自分の本質ではないところを承認されているような気がしてしまう。だから、もっと頑張らないと認められないんじゃないかと無理をしてしまう。でも、暮らしのなかでの学びって、そこに存在していること自体が承認されるんだよね。

「あなたはこれができるから素晴らしい」じゃなくて、「あなたはあなただから素敵」と。そういう承認経験があると、フォルケを離れてからも、「あのときの自分が自然体で好きだったな」と思い出すことができるし、そのときの自分にも戻れるんじゃないかな。

遠又:そうだね。オンライン同窓会も楽しかったよね。改めて、居心地の良いコミュニティだなと思った。Compathを応援してくれている参加者も多くて、プログラムの後も関係性が続いていくというのはうれしいよね。

11月のプログラム

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コロナ禍で感じたこと

―コロナで、Compathの受け止められ方は変わった?

遠又:コロナの影響は感じるよね。全員が一斉に立ち止まらざるを得ないという状況は、これまではなかった。コロナ前にはCompathの事業の話をしてもなかなか理解してくれなかった人が、「会社以外の学びの場って大事だよね」と共感してくれたことも。そういう意味で、コロナは潜在的な学びのニーズに気づくきっかけになったのかなって思う。

安井:ふと立ち止まったときに、「自分の人生って…」という問いが立つ。それをゆっくり考える場として、私たちの活動に興味をもってくれる人が増えているのかなと。10〜20代の若い世代のなかには余白に価値を置く人たちも増えていると感じるし、まだ時間はかかるけど、世の中の流れが変わっていくという期待感はあるよね。コロナ禍により、その変化の速度が早まっているんじゃないかな。

東川町×Compath

―東川町に移住して、暮らしはどう?

遠又:すごく楽しい。養鶏家の新田夫妻と知り合って、お二人に惚れ込んで、「この人たちの住んでいる町で暮らしたい」というのが最初だったんだよね。お店で新田さんの卵を買うと「新田さん元気かなー」って顔が浮かぶように、8,000人いる町の人たちの顔が少しずつ見えてきたよね。町の人みんながご近所さんという感覚がすごく心地いい。東川町は自然が豊かで気持ちがいいし、手前味噌だけど本当に良いところだよね。

安井:2週間に1回くらい、やっぱりここにしてよかったわーとしみじみ思う(笑)。おもしろい町だよね。東川町を辿り着いた自分たち天才だわ(笑)

遠又:そう思っちゃうくらい、東川町がすごくいい(笑)。「こんな人いないですかねー?」って尋ねたら、「いるよ」ってすぐに名前が挙がるんだよね。小さな町なんだけど、人財がめちゃくちゃ多彩。

安井:人と人との関係性も心地良いよね。付かず離れず、一人ひとりが自立しつつも、支え合って生きている。素敵なものや人に出会ったときに、ただうらやむんじゃなくて、自分もがんばろうと刺激がもらえて、それが町中に循環してる。その渦の中に自分もいる感覚なんだよね。

渦が速すぎると焦りに変わってしまうけど、そういうときには「焦りすぎだよ」と声をかけてくれる人もいる。ゼロからものをつくることに挑戦していると身としては、焦らず自分たちらしいペースでやっていこうと思えるから、この町でよかったなと思う。

遠又:思うようにいかなくて焦ったり不安に感じたりしているときに、「やり続ければ大丈夫よ」とさらっと言ってくれる人が周りにいることには、本当にありがたいよね。

―東川町が舞台であることで、Compathに変化や影響はある?

遠又:東川町に移住してから、「社会の手触り感」を大事にしたいよねって話をよくするようになったよね。都会で暮らしていると、自分を含めた社会とか地域とか、そういう感覚が抜け落ちがち。

私たちは二人とも首都圏で生まれ育ったから、ここの地域の手触り感みたいなのが新鮮で。私たちの行動が地域に与える影響が、都会にいたときよりも鮮明にわかるんだよね。東川で暮らすなかで、地域の価値観や哲学に触れながら手触り感を取り戻すことって、Compathにとっても大事な要素なんじゃないかと思うようになった。

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―1年を振り返って、後悔していることはある?

遠又:残念だったのは、コロナで仕方がなかったとはいえ、やっぱり実践が足りなかったこと。丁寧に文化をつくることも大事だけど、そのためにこそ実践の数を増やす必要性を感じたな。

安井:そうだね。まだ実践が少なくて大きなトラブルもないぶん、負うべき痛手は負っていないんだろうな、今後そういうことが起きたときに試されるんだろうな…という予感はある。

遠又:1週間くらいだとストレスやハレーションがあまりないからね。でも、そういうのも含めて、今後が楽しみだな。

課題とビジョン、そして野望…

―今感じている課題や今後の方向性は?

遠又:課題は、レポートにもまとめたように、余白(休み)を取ることへのハードルが高い日本の社会構造、学びに投資しない国や企業の体質、そして、地域社会の手触り感の薄さ。どれも日本の社会や文化に根強く染みついたものだよね。一つの組織にコミットする、忠誠心が大事っていうマインドは、会社だけじゃなくて学校の部活とかも同じ。真面目な人ほど休みにくいのが今の日本だよね。

安井:こういう学びの場がある、選択肢があることを知るだけでも、価値があると思うんだよね。デンマークでは新卒の平均年齢が28歳で、次のステージに進むには早いなと思ったら学校に残ったり、他のことをしたりしてから働き始める人も多い。他にもそういう国はたくさんある。何歳で大学を出て、すぐに就職して…みたいな人生のペースがかっちり決まっているのは日本独自の慣習なんだよね。

遠又:人生のペースは人それぞれでいいんだというのは、心から共感。日本ではペースが決まっているから、なんだか切迫感があるし、そこから外れるのが怖くなっちゃうんだよね。フォルケのような年齢問わず学べる場所があるんだ、必要なタイミングで学びに来ている人がいるんだということを知ってもらえたら、自分も必要なときに行けるんだという安心感につながると思う。

余白

お金

手触り感

―2021年は、どんなことに挑戦したい?

安井:これからは、フォルケをモデルにした大人の学びの場づくりと、フォルケで学ぶという選択が当たり前になる寛容な社会づくりの両方をやっていきたい。そのために立てた2021年の目標が、「濃い実践をつくる」と「研究・リサーチをする」。学びの場づくりを実践しつつ、大人の学びというものを、社会的な構造も含めて俯瞰して紐解いてみたいんだよね。

遠又:実践は安井中心、研究・リサーチは遠又中心で…。

安井:実践としては、3ヶ月間のロングコースを1年前倒してやる。週末フォルケ(ワーケーションコース)をやりながら、夏には1ヶ月間(ミドルコース)、冬には3ヶ月間(ロングコース)のプログラムをやる!

遠又:うん、がんばろう。学術的に研究・リサーチをするために、私は今年の4月から慶應義塾大学大学院(政策・メディア研究科)の院生になったんだよね。Compathをフィールドとして、対話や学びを通して個人の行動や意識がどう変わっていくかを学術的に分析したいと思ってる。

安井:実践と研究の両方ができるのは、二人いるメリットだよね。必要に応じて分離できるし。

遠又:二人の間に明確な役割分担はなくて、スキームに応じて役割を決めていく…みたいなのはこれからも変わらないけどね。私たち自身の関係性がこれからどう変わっていくのも楽しみ。

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―最後に、長期的な野望を!

遠又:Compathが10年、20年後も続く学び舎になってほしいというのが願い。そのためにもまずは東川町で、焦らずにゆっくり丁寧に第1号をつくりたい。日本でも作れるんだということが実証できれば、自分もやってみたいという人が出てくると思う。

安井:この道を歩み続けて、自分自身に飽きずにいたいなというのが私の野望かな。歩んでいくなかで、きっとたくさんの出会いがあるはず。そのすべてを自分自身の生き様にしていけたらいいな。

遠又:いつも二人で、かわいいおばあちゃんになりたいねって言ってるんだよね(笑)。心豊かで朗らかなおばあちゃんたちを目指して……2021年もがんばろう!

(執筆・笹原風花/写真・和田北斗、畠田大詩)

---2021.06.06 Compath Dialogue Dayを開催します
いま、Compathが持っている3つの問いを中心に据えて、Compathが一番対話をしてみたいゲストをお呼びして3つのDialogueをお届けします。
1)Dialogue1 “Compath -2020 to 2021-”
2)Dialogue2 “フォルケホイスコーレと市民の社会参画のデザイン”
3)Dialogue3 “豊かさが再定義される時代の学びと余白の価値とは”
・開催日時:6月6日(日)10:30-17:00
・開催場所:オンライン(Zoom)
いつも近くで応援してくださっている方にも、初めてフォルケホイスコーレやcompathについて触れる方にも、お楽しみいただけるよう、いろんなお話をお届けできればと思っております。


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