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「はじめの1歩」をみんなと一緒に~ミドルコースレポート(2021.8-9)~

2021年の夏。人生の学校Compathはじめての1か月コース(ミドルコース)を開校しました。昨年Compathを立ち上げ、さまざまな実験を経て、ようやく開校に至った長期コースです。

授業づくりも、生活面のサポートも未知の領域。この不完全な部分を「余白」と捉え、コースを一緒作ってくれる仲間を募集し、7人のメンバーと講師のみなさんが集結。全員にとって「はじまりの一歩」を踏み出す時間になりました。

このnoteでは、ミドルコースのプログラム内容、参加メンバー/Compathにとって、どのような時間だったのかをレポートしていきます。
ミドルコースを「ハウスマスター」として、寮母的な立場で過ごした、インターン生ゆりがレポーターです。

開校までのプロローグ

ミドルコースのコンセプト「豊かさとは何か」

Compath代表 安井(やさいさん)が、暉峻淑子さんの「豊かさとは何か」を読んでいたこと。コロナ禍で「豊かさとは何か」と考える人は増えた気がするけれど、肝心の問いを考える余白は増えたのだろうかという問いが立ったを出発点として、コンセプトが生まれました。

ただ募集当時、具体的にどういう授業をするのかも分からない状況(ミドルコースの募集noteには、具体的な授業の内容がひとつも書いていない)。にも関わらず、気づけば、7人の参加者 であり「開拓者」が集まってくれました。

就職活動に悩む大学生。会社を退職して次に何しようか探している人。フリーランスをしながら移住先を探している人、20年働いた会社を辞め、自分の時間を作ってみようとしている人、など。

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* コミュニティボード。共に暮らす仲間たちそれぞれのできること・やってほしいことが書かれています

最後までどうなるか分からない、でも全員がぼんやりと「自分や社会にとっての豊かさを見つける」ことに期待と好奇心を持って、東川町での共同生活がスタートしました。

コース概略

詳しいコース内容を説明する前に、まずはざっくりと概略を。

日程:2021年8月24日(火)〜 9月20日(月)
場所:北海道東川町 
参加費:27泊28日(プログラム費250,000円 +宿泊費51,000円) 
* 東川町と協働し「学びたい人が学びたい時に学べる社会」を目指し、奨学生制度も導入

ミドルコース日程表

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東川町内・外の講師とコラボレーションした授業から「自分と社会にとっての豊かさ」をさまざまな視野・視点から考える1ヶ月を過ごしました。

この後は、1週間ごとのプログラム内容、そこで起きたこと・感じていたことを綴っていきます。

【Week 1】 からだをなじませる

8月24日 オリエンテーション ~森のMEISHIづくり~
8月25日~26日 feel℃ walk 
8月27日 The sense of being 
8月30日 share woods ~感じる~
                   夜の森を歩く

8月24日 | オリエンテーション ~森のMEISHIづくり~
全員がはじめまして、の初日。自己紹介として、自分を森の中にあるモノを使って表現する「森のMEISHIづくり」をしました。いつもの肩書きを一旦置いて、自分がどういう人間なのかを、自由に表現します。

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自分の名前からヒント得て作る人。
何枚も葉っぱを重ねていろんな思いを持っていることを表現する人。
ゴミを使ってきれいにデコレーションする人。

はじめてとは思えないくらいクリエイティブ。みんなのMEISHIを見ながら発表を聞いている時間は、小さな美術館を回っているような気持ちでした。

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みんなのことをまだ知らないからこそ、ひとつひとつのこだわりポイントがわかるようなわからないような。でもこの曖昧さがその人への好奇心を掻き立てました。

8月25日 | feel℃ walk(ゲスト講師 Generator 市川力さん)
「感じて触れて感度を上げる散歩」=「フィールドウォーク」。気になったものの写真を撮り、感じたことを語り合うことで、自分の興味に気づくきっかけになる時間でした。

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feel℃ walkを終えた後の時間も、印象的。

みんなで円を作り、チェックアウト(今感じている気持ちのシェア)をしていると、真ん中に置いた、後から合流したメンバーのMEISHIの上を、小さな虫が歩き始めました。チェックアウトを終えてからも、その虫はMEISHIから離れず、布地の上をさまよい、なぜかその虫をみんなが静かに見守っている。

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傍から見るとすごく変な光景だけど、偶然起きた光景をじっくり観察し、感じる。「余白」の時間が始まったんだな、と感じた瞬間でした。

後日談ですが、多くのメンバーがこの時間がすごく気持ち悪かったようです(笑)「ただ虫を見ている時間に何の意味があるんだろう」とぐるぐるしながら眺めていて、これからの時間が不安になったとか。。

今思えば、私たちが大事にする「立ち止まる価値」に関係する、素敵な問いだったなぁ。

少しずつ 余白の共同生活に、からだをなじませていったWeek 1でした。

【Week 2】 自分とつながる、社会に気づく

8月31日 日常と豊かさ~カメラワークショップ~      
       デモクラシーフィットネス(傾聴筋)
9月1日   食と豊かさ~パーマカルチャーデザイン~
9月2日   私と豊かさ~NVCワークショップ~
9月3日  北欧のデモクラシー
9月4日  share woods ~共にイスを作る~

Week 2は、自分の身の回りにある豊かさに目を向ける時間になりました。

8月31日 | 日常と豊かさ〜カメラワークショップ〜 
    (ゲスト講師 プロカメラマン 飯塚さん) 
     デモクラシーフィットネス
    (ゲスト講師 Sorenさん&Sanaeさん)

気になった東川の街並みをカメラに収め、「デモクラシーフィットネス」の授業では、目の前の人の話に真摯に耳を傾ける1日。

「デモクラシーフィットネス」とは
デモクラシーに必要な考え方や心、スキルを九つの筋肉(深聴筋/発言筋/反対表明筋/おとしどころ筋/まきこみ筋/行動筋など)に例え、「話す・聴く・考える」を参加者同士で数十秒~数分で繰り返し行うワークショップ
特集記事 「行動する人」を増やしたい ~日本でも「デモクラシー・フィットネス」がスタート」から一部抜粋)

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写真を撮ることも、人の話を聞くことも、日常のなかで当たり前にやっていること。でも改めて向き合ってみると、新たな発見がいっぱい。

写真撮影では、誰かと写真を比較して落ち込む自分に気付いたり、デモクラシーフィットネスの時間では、目の前の人の話を、たくさんこぼれ落としながら聞いていることに驚いたり。身近なことでも、1つ1つ時間をかけて向き合うことで、自分の気持ちや思いを発見することができました。

9月3日 | 北欧のデモクラシー(ゲスト講師 Sorenさん&Sanaeさん)

「民主主義」をテーマにワークショップを開催。北欧の民主主義の考え方をベースにしながら「民主主義=投票・政治」だけでなく、私たちの暮らしの中に民主主義は息づいている、と体感できる機会になりました。

授業後、みんなでご飯を食べていたら、ちょうどニュースで政治の話が流れ、話題は「日本の社会・民主主義」のことに。

日本の民主主義って、すごく遠いものに感じる。社会にはいろんな問題があることはよくわかっているけど、自分が社会を変えられるとは到底思えない。でも、北欧では身の回りから「民主主義」を実践している。小さな積み重ねで社会が出来ているなら、私たちも身の回りの小さな社会から何かできないか。」

こんな話で盛り上がり、メンバーみんなでアクションを起こそうという話に。

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* 10月30日 デモクラシーフェスティバル2021に、ミドルコース参加者メンバーで出展。「日常のなかのデモクラシー」をテーマに、一般の方とも対話しました。

社会への無力感を持ちながらも、身近な小さなコミュニティから実践する。私たちが大事にする「民主主義」に手触り感が出てきた時間でした。

【Week 3】 体も心も、思いっきり動かす

9月7日 地球と豊かさ~森の長老の木に出会う旅~
9月8日 生活のライフスツールづくり 
    東川のまちづくり
9月9日 私と豊かさ~NVCワークショップ~ 
9月10日  北の住まい設計社見学
     デモクラシーフィットネス(反対意見筋)
9月11日   share woods ~ともに場所を作る~

Week 3は、体も心も思いっきり動かして「豊かさ」を考える時間になりました。

9月7日 | 地球と豊かさ~森の長老の木に出会う旅~(ゲスト講師 ネイチャーガイド 塩谷さん)

日本初のネイチャーガイド 塩谷さんと「長老の木」に出逢いに森へ。何百年も前からそこに佇んでいる木の空気感は圧巻でした。

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*「長老の木」と共に

9月8日 | 生活のライフスツールづくり(ゲスト講師 E10の遠藤さん・清水さん)

スウェーデンの木工学校に留学経験を持つ遠藤さん・清水さんと共に、木のバターナイフとスプーンを作りました。同じ大きさの木材から始めたのに、完成品はそれぞれの大きさや形になっていて、個性がにじみ出る面白い機会に。

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* みんなで作ったバターナイフとスプーン

9月9日 | 私と豊かさ~NVCワークショップ~(ゲスト講師 まりあさん)

NVC(非暴力コミュニケーション)を通して、自分の中にある、いろんな感情と向き合う時間

NVC(非暴力コミュニケーション)とは?
1970年代に、アメリカの臨床心理学者マーシャル・B・ローゼンバーグ博士が体系化した、思いやりのコミュニケーション手法です。『観察』『感情』『ニーズ』『リクエスト』という4つの要素に着目しながら、自分を表現し、相手を受けとめていきます。

心に深く向き合った結果、あるメンバーから、共に暮らす仲間に向けた、具体的なリクエストがありました。

「チェックインの時に沈黙になるのが実はあまり心地よくない」
「なんでも褒め合うだけでなく、率直に自分が思ったことを口にできる関係性になりたい」

勇気あるリクエストによって、授業後はミドルコース中に思っていたことを率直にシェアしあう「ぶっちゃけ会」が開催されました。

話したい人が話して、話したくない人は聞いているだけでもいい。違うことをしていてもいい。そんな自由な空気感の中で、今まで自分が思っていたことを率直に話す時間。

正直ハウスマスターの私はドキドキしていましたが(笑)、「お互いを大事にする」という前提が出来ていたので、シェアのたびに、みんなの表情が柔らかくなり、より一層、コミュニティの安心感が高まる時間でした。

怖いと感じることも、自分から思っていることを場に出してみる。場に出す勇気と誠実さは確実に周囲に伝わり、関係性が深まっていくことを体感した時間でした。

【Week 4】 余白。そして、自分たちで綴じていく

9月13~15日 余白の時間
9月16日~20日 みんなで作る時間

たくさんの授業を終え、気が付けば最終週。3日間の余白時間と、メンバー自らに何をするかが委ねられた時間。

数週間の出来事、自分の問いや思いを振り返った後、1人1人が「場の作り手」となって、さまざまなコンテンツが行われました。

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*メンバーみんなで決めたスケジュール

演劇部出身メンバーによる、ダンスや発声のワークショップ。みんなを改めて知る人生グラフを使ったワークショップ。東川町での経験を振り返る時間、などなど。

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* 「コースから帰った後に、ミドルコースの経験を周囲にどう話すか」という問いを基に話したワークショップにて。みんなの想いが凝縮されたワークシート

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* みんなで作った森の中の居場所でランチとヒュッゲタイム

それぞれの背景や問いを使って作られる時間は、この2021年8-9月のミドルコースに集まった仲間だからこその時間。大声で笑って、涙して。いろんな感情を率直に場に出し、みんなで一緒に共有する。温かく楽しい、最終週でした。

【Last Day】 改めて、これからよろしく

ミドルコース最後の日。最初に出会った森近くの、小さな古民家に集まりました。

28日間を綴じる時間として、10年後の自分に手紙を書き、今メンバーに話しておきたいことを対話しました。

「これからミドルコースで出会ったみんなと何かできるかな?」
「ミドルコースで学んだことは?」
「暮らしの中でデモクラシーをどう実践しよう?」

問いを投げかけながら、シェアを重ねていきました。

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そんなすぐに社会は変わらないけれど、ミドルコースの経験を話すことで、周りから小さく変えていきたい。これからも情報共有しながら、社会や自分のことを一緒に考えていきたい。

みんな口々にそう話している姿が、とても頼もしい。全員の表情がとても柔らかくなっていることにも、驚きました。

最後のチェックアウト。チェキで撮影した「残しておきたいミドルコースの風景」を見せながら、改めてこれまでの時間が自分にとってどんな時間だったのかを話しました。

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涙涙のお別れになるのかと思いきや、全然そんなことはなく。ポジティブなパワーに溢れた、とても温かな最後の時間。

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ミドルコースでの28日間は、メンバーにとって人生のごくわずかな時間で。みんなとずっと一緒に入れるわけでもないし、ここで離れてしまうともう会えないかもしれない。

でもそれぞれの心の中には「まあ、ここからも続いていくよね」という共通した思いがあったように思います。

すぐに会えなくても、話すことが出来なくても、仲間がどこかで頑張っている。そう思えるだけで、自分は一人ではないと思えるし、一緒に頑張ろうと思える。ミドルコースはここで終わりではなくて、ここからスタートするんだと思っています。

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Compathにとって、はじめての長期コースだったミドルコース。一緒に「はじめの一歩」を踏み出した仲間たちと、これからどんな景色を見ることが出来るのか。
私たちの旅は、まだまだ続きます。

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2022年も、ミドルコース開催が決定しました(2022年8月29日〜9月23日)。詳細は、4月末公開予定です。参加したい、興味がある方の個別相談は随時受け付けておりますので、お気軽にフォームよりご連絡ください。

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