マガジンのカバー画像

まなかい ローカル72候マラソン

71
まなかい… 行きかいの風景を24節気72候を手すりに 放してしるべとします。                                        万葉集        …
運営しているクリエイター

#はなのみち

まなかい;小寒 第68候・水泉動(しみずあたたかをふくむ)

まなかい;小寒 第68候・水泉動(しみずあたたかをふくむ)

「寒中丑紅」… 本紅は寒中の冷たい清らかな水で作られるものが良いとされた。寒中の「丑の日」に作られたものが特に薬効が高く、唇の荒れに効果があるとか、口中の虫を殺すなどと評判が立っていた。紅は唇を彩るものだから、舌で触れるなどして体内に入りやすい。紅花から抽出された本紅であれば、むしろお薬となる。お猪口に刷かれた紅の表面は玉虫色。薬指や筆で濡らすと、ふわっとほどけて赤となる。

小寒から数えて九日目

もっとみる
まなかい;冬至 第65候『麋角解(しかのつのおつる)』

まなかい;冬至 第65候『麋角解(しかのつのおつる)』

鹿に憧れる。

頭に2本も「木」が生えているから。

きっと角は依代。アンテナ。

そういえば、門松は一対だ。

赤坂氷川神社に奉納させていただいた「花手水」は、お正月らしくということで、横に渡した竹に一対の竹の器を立て、苔のついた槇、松、白梅を挿した。苔の生えた槇の古木はちょっと威厳のある角にも見える。松は千代の命を寿ぐ。

鹿の角は木にそっくりだから、あの角に花が咲き、葉っぱが生え、実がなった

もっとみる
寒露:第49候・鴻雁来(こうがんきたる)

寒露:第49候・鴻雁来(こうがんきたる)

鶴や白鳥や雁が、弓なりの列島に渡ってくる。

この都市ではニュースでしか見ないけれど。

白く大きな翼を持つものたちよ。

V字で飛行を続けるものたちよ。

羽毛のような雲を見て、その不在を紛らわす。

燕は南に帰った。青光る翼で。風を切って、波を躱して。

入れ替わるように北から優雅に使者たちがやってくる。

これが天使でなくて何だろう。

廻る地球の、凍てつく北方からの魂の飛来。

 彼らの

もっとみる
秋分;第48候・水始涸(みずはじめてかる)

秋分;第48候・水始涸(みずはじめてかる)

涸れるは枯れる、渇れる、嗄れると通じて、それは水分が抜けていき、いのちが離(か)れる、そうやって水分が抜けると軽くなる、空になって、虚ろと成って、仮の場になるということ。

花を生ける日々はありがたいことに、その感触を手に取ることができる。

ありったけの水分は実に閉じ込め、あとは色づくばかりの木瓜。棘のある枝の素型(すがた)を。紅葉した錦木。割れて顔を出す赤い実。日が短くなり、光合成するクロロフ

もっとみる
芒種 第26候・腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)

芒種 第26候・腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)

腐れたる草が蛍となる。

腐った草が蛍になるなんて、、、ちょっと不思議です。

草が腐って、蛍になるのではなく、腐った草も蛍の命の部分になっている。草の中に沢山の細胞が生きていました。それぞれに生命誌が刻まれています。蛍も沢山の細胞が形作っています。かたちは一度無くなりますが、魂はずっと転生していく。個体と固体の話ではなく、生き物は全て死に、そうして次の命の場所になるということ。日本の言葉では「死

もっとみる
小満;第23候・紅花栄(べにばなさかう)

小満;第23候・紅花栄(べにばなさかう)

 中東あるいはエジプト原産と言われるベニバナ、本紅で有名な紅花の咲くのはまだ先。

「半夏ひとつ咲」ともいうから咲きはじめは夏至の末候。

  まゆはきを俤(おもかげ)にして紅粉(べに)の花(芭蕉)

  行く末は誰が肌触れむ紅粉の花(芭蕉)

と奥の細道巡礼で芭蕉が詠んだのは、今の日付に換算すると7月中旬となるようだ。

 まゆはきは「眉掃き」「眉刷毛」で、おしろいを叩いた後 眉についたそれを払

もっとみる
雨水 第6候・草木萌動(そうもくめばえいずる)

雨水 第6候・草木萌動(そうもくめばえいずる)

赤坂氷川神社花活け教室「はなのみち」。第3季の最終回は中止となりました。新暦雛祭りの前日、みなさんと花の連句「めぐり花」で春のお祝いとともに締めくくろうと思っていましたが叶わず。でも折角なのでいつもの時間に広間で待たせていただき、花材を取りに来られる方たちとひと時を過ごしました。

花瓶に生けた小さな花は、イースターと雛祭りの合わせ活け。器をイースターの卵に見立て、鳥のようなフリージアを添えていま

もっとみる