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まなかい ローカル72候マラソン

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まなかい… 行きかいの風景を24節気72候を手すりに 放してしるべとします。                                        万葉集        …
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2020年4月の記事一覧

清明 第15候・虹始見(にじはじめてあらわる)木を立て 気を立てる

清明 第15候・虹始見(にじはじめてあらわる)木を立て 気を立てる





春の土用を前に 個人邸のお庭は大体 引き渡しまでこれた

木を立てるのは 気を立てること 

彼らがおさまるところにおさまると 気立てのいい庭になる 

沓脱ぎ石も据えた 飛び石も打った 園路も整えた 

石は静かに 放散しがちな気を 鎮めてくれる

新しい時が動き始めるのを確認して お客さんへお渡しする

デザインの仕事はいちど手を離れる



夜間作業となるホテルの仕事はまだ途中だ

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清明 第14候 鴻雁北(こうがんきたへかえる)

清明 第14候 鴻雁北(こうがんきたへかえる)



若い時見た いまの自分のどこかを作っている 忘れられない風景というのがあって そんな場所はいつか誰かに見せたいものでもある 
 候は「鴻雁北(こうがんきたへかえる)」 南から燕が渡ってきたら、雁が北へ帰っていく 
 人にも 帰りたい風景というのがあるのかもしれない

作庭の現場が丸一日空いた時に いまなら あの頃見たあの風景が観れるかもしれないと 飛び出していた 
 20年も前だから多少は変わ

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清明 第13候・玄鳥至(つばめきたる)

清明 第13候・玄鳥至(つばめきたる)

万物発して清浄明潔なれば、此芽は何の草としれる也(暦便覧)

ここのところの作庭の現場が東京郊外なので よく車を走らせる

青山通りや 首都高 東名高速沿い 開発を逃れて残った林や公園で木々のみどりが一斉に吹き上がり ふわふわと風に和毛を揺らしている 桃色と緑が混ざった葉桜も 黄梅や連翹の黄色も ツルニチニチソウやハナニラの紫も 早緑の地に悦び溢れる 今年は躑躅や藤やアイリスの仲間も早い もう初夏

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春分 第12候・雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)

春分 第12候・雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)

遠くで雷の声がし始める

夜中に台所で僕は、、、という詩があったけど

夜中に起きて水を飲もうと灯りをつけたら 昼間の花活けで払った枝が流しに活けてあった

この小さな白い花の 今ここで咲く不思議 にこんな夜更けに出会う不思議

咲くことは

とよもす遠雷のように 古く 

いまここで それが聞こえることが 

咲くという 淡く艶やかないとなみ 

花は春の陽に美しいが 

月や夜が彼らの別の姿を

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春分 第11候・桜始開(さくらはじめてひらく)

春分 第11候・桜始開(さくらはじめてひらく)

楽しみに準備してきた弟の結婚式が感染リスクを避けるため延期になった。

都内の桜が満開を迎えるちょっと前の「すわ!」という時期だっただけに余計にもの悲しい。両家の親も楽しみにしていてくれた。本人たちも。僕もひとまわり年が違う弟の やや遅い晴れ姿を楽しみにしていた。

花見の自粛は震災を思い出す。

あの時も桜はいつもの桜ではなかった。

桜はいつものように咲いているけれど、愛でる人の目がそれをいつ

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