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『アントワネット』を読んで【本好きの読書感想】


#読書の秋2022

ぼくの子どもも、こんな感じだったろうか?

『Antoinette』本文より


この物語は、いささかの勇気をわたしに与えてくれました。

家族のかたちを想像したとき


生きていく上で、
例えば家族と言うものを想像したとき、
私たちはそこにどんな人物を描けば良いのだろうか?


私は幼い頃(多分高校生位までは)自分が子供を産む必要はないと本気で考えていた。それは、子供が嫌いだとか自分が子供を産みたくないとかそういったことではなくて、単純に世の中には、親を必要としている子供なんてたくさんいるんだから、わざわざ自分が新しく1人産むよりも、そうした子供と一緒に暮らして親になる方が絶対に世の中の役に立つと思っていたからだ。

そしてもちろんその頃に、自分が不妊であるということを知っているはずなど無かった。

不妊という現実と痛みの行方

しかし、結果として私もこの物語の女性と同じように子どもを望むのが難しい。そしてその原因は全くもって不明だった。遺伝子検査をしても分からないことなんて山ほどあるものだ。

この小説は、非常に珍しい立場をとって不妊治療を描いており、目線は全て夫である男性にある。そしてこういった話題は、非常にナイーブであり男女関係なく話をしづらい。
それは、
話す側も話を聞く側も、互いにどう伝え合えば良いのかが、わからないし、伝えたところでおそらく互いに困ってしまったり傷ついてしまったりすることにしかならないだろうと想像するからだ。言い方は悪いけれど、腫れ物に触るようなそんな話題の1つだろう。


悲しみの中から、光を掬うことができたなら

もしも、あなたが誰にも話せない苦しく悲しい思いを抱えて、そのことで涙を流すことを我慢しているのなら、どうかこの本を読んでみて下さい。
自身やパートナーの性別には関係なく、子ども望めないと言う事実に悲しむ人に読んでほしいと思うのです。

この物語はハッピーエンドではありません。ですが、この物語を読み終えた時に、悲しみの涙をもしかすると流すことができるかもしれません。
もし、そうであればそれはきっと良いことだと、私は感じます。

悲しみを悲しみとして受け入れることは、実はとても難しく、だからこそ、私たちはそれを他人に話して言葉にして、その痛みをあえて認識しようとしたりします。

わたしは、口に出してしまう代わりに、口に出すことが出来なかった代わりに、この本を読みました。

この物語に描かれている主人公の目線や、過去や現在や未来に対する、思いのいくつかが、あなたを救うものになるはずだと思いますし、そうであればいいなと願います。


@afterthebookcake

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