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自分の軸はどこにある?

最近、「人の目を気にするな」とか、「自分の心の求めるとおりに動いたらいい」といった言葉をよく目にする。

ツイッターを眺めていても、書店の売れている本のタイトルを見ていてもそうだが、こういう、「まず大事なのは自分だよ」というメッセージが、社会的に強くなっているように思う。

僕としては、たしかにそうだろうとは思うのだけど、かといって、実際にそういうふうに生きられる人は少ないんじゃないかと感じている。だいたい、心の声ってなんなのだろう。僕自身もそうだが、人の目を気にしたり、自分のことを後回しにしてきたような人間にとっては、心の声がどこにあるのか確かめなくては話が始まらなかったりするのではないか。

前の記事に、「心を強くしようとして挫折した」というようなことを書いたのだが、その途上で僕も、この難題にぶち当たった。僕は昔から、人の目を過剰に気にしたり、自分の意見よりも他人の意見をむやみに尊重するクセがあった。つまりは、自分ではなく他人を軸にして生きていたのである。

心の弱さを自覚したとき、まずは、自分を軸に生きてみようと考えて、いろいろと実行してみた。例えば、他人に言われたことよりも自分がやりたいと思うことをやろうとしたりとか、人の目を気にせずいろいろとチャレンジしてみる、などである。

要は心の持ちようなのだが、これはこれでうまくいった。小さなことでもいろいろなことに挑戦してみたし、その過程で、ときに失敗もしたが、たしかに得るものはあった。

しかし、自分のなかの他者の軸が失われていくことで、ひとつの問題に突き当った。それは、どんなに他者の軸をなくしていっても、自分の軸を得られなかった、ということである。

結局、自分はなにがしたかったのか、なにを求めていたのかは、わからなかったし、今もわかっていない。他人を軸にしなければ自分の軸が自然と見つかるものだと考えていた僕は、途方に暮れてしまった。また、心の奥底を見れば本当にやりたいことが見つかるのではないかと、一晩中悩んでみたこともあったが、そもそも心がどこにあるのかもわからないし、これだ!と思っても次の日には気が変わっていたりして、明確な答えは得られなかった。

今思えば、他人を軸にして生きていたときも、苦しかったのは事実だとしても、それはそれでうまくやっていたように思う。自分を軸にしようとして他人の軸を減らしていった結果、僕は僕のなかの軸そのものを失ってしまった。どちらかといえば、こちらのほうが苦しかった。

おそらく僕の軸は、他人のものとある程度重なっている。そして、それを無理に変えようとすると、自分そのものが失われてしまう。最近になってようやく、それはそれでありだと考えられるようになったが、悩んでいた当時は、人のことを気にすること自体が嫌で、そんなことを思いもしなかった。

「大事なのは自分だ」という意見には僕もある程度賛同するが、一方で、これは、自分の欲求がなんなのかをそれなりに理解できている人にしか当てはまらないのではないかとも思う。自分を後回しにしてきたような人にとってまず大事なのは、「自分ってなんだろう」と考えることではないだろうか。

また、僕は他人の軸を失っていく段階で、他人のことをあまり顧みないような時期に突入したことがある。この時期は、「大事なのは自分だ」というメッセージに引っ張られて、必要以上に他人を無下にしてしまったりもした。器用な人はこんなふうにはならないのかもしれないが、僕みたいに不器用に生きている人にとっては、むやみやたらに他人を気にせず生きるほうが難しいのかもしれない。

最終的に僕が行き着いた答えは、「バランスが大事」だということである。僕の場合は、昔のようにやたらと人の目を気にするのも疲れるが、かといって、気にしすぎないとバランスが崩れて嫌なやつになってしまう。だから、適度に他人を気にしつつ、気にしすぎてるなと感じたら、少し自分を大切にしてみる。そんな感じで生きている。

こんなことを言っては本末転倒な気もするが、もし、「自分の軸が見つからない」と感じている人や、「他人ばかり気にしている」と自覚しているような人がいるとするならば、そういう人は、それでもいいんじゃないかと思う(もちろん、本人が苦しんでいるなら話は別だけど)。というのは、そういう人はたまたま自分の軸が他人のものと重なってしまっているだけで、それ自体は悪いことではない。逆に、「自分の軸はどこだ!」と探し始めたら、僕みたいに軸そのものを失ってしまうかもしれないからだ。

なんだかとりとめのない文章になってしまったが、読んでくれた人のなかで少しでも「わかる!」と思ってくれる人がいたら嬉しい。「そうかなぁ」と思う人もいるとは思うが、僕は僕の実感を書いているので、そういう人がいても仕方がない。まずは、読んでくれたことに感謝である。ありがとうございます!

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