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「ダブルスタンダードを許して新陳代謝を繰り返すことが企業を強くする」 ー先駆者に聞く、スタートアップを生かしたDX新事業の作り方

2021年6月22日(火)に開催したイベント「先駆者に聞く、スタートアップを生かしたDX新事業の作り方」では、イノベーションの創出が必要だと考える大企業が「スタートアップに投資をしたい、協業したい」と考えるケースが増えている中、スタートアップを生かしてDX新事業を創出し育むための本質や課題について議論しました。

機械部品商社ミスミでの新規事業会社の立ち上げやネット印刷通販のラクスル立ち上げなど新規事業家として活躍する守屋実さん、人工知能(AI)開発のスタートアップを設立し内閣官房IT総合戦略本部の本部員も務めるシナモン社長の平野未来さん、KDDIでスタートアップ支援プログラムや投資ファンドも統括するKDDI事業創造本部ビジネスインキュベーション推進部長の中馬和彦さんをゲストにお招きしてお話を伺いました。聞き手は、村松進日経産業新聞副編集長が務めました。


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まず、参加者アンケートでわかったことは、新事業創出で最も重要だと思うポイントは「事業の明確な目的」だと考えている方が多いことです。

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これについて登壇者の皆さんは、次のようなコメントをしています。

−中馬さん
「大企業が組織の壁を取り払うにはどうすればいいか」という質問をよくいただくので、阻害要因が出ると思いましたが、意外でしたね。ハードシングスで言うと、よく「失敗しないオープンイノベーション」というテーマで話をしてもらえませんかと依頼されることがありますが、そういうときは「失敗しないは無理です」とお断りするようにしています。ただ、「失敗を恐れないオープンイノベーション」だったら私はおそらく日本で一番の自信があるので、「ぜひやらせてください」と言っています。つまり「失敗を恐れず」にということが非常に重要だと思います。

−守屋さん
僕自身のハードシングスの話で言うと、僕のことを「スタートアップにいる人間」「エンジェル投資家」などという認識をもっている人がいるかもしれませんが、実は20年間会社勤めをしているんです。職業人人生で言うと会社勤めが一番長い。その間に新規事業を17回やっていて、5勝7敗5分です。負け越したというのが僕の実績で、新規事業とはそんなものではないかと思っています。

−平野さん
私はまだ成功したことがない、0勝です。アンケート結果を見て思うのは、私は一番大事なことは「パーパスがあるかどうか」だと思っているので、そこを皆さんと共有できていたことはとてもいいことだと思いました。中馬さんが言った「失敗を恐れない」ということは、本当に重要だと思います。私自身の一番大きな失敗をお話しすると、「ものすごい技術を作ればみんなに使ってもらえる」と思っていたことです。3年間ひたすら研究開発を続けて、リリースしたら誰からも反応がないということがありました。「失敗してもいい」というマインドが大事だと思いました。もし、もっと早い段階で顧客ターゲットに話を聞いていれば、ニーズがないことはわかったはずです。3年も費やさずとも最初の1ヶ月で気づけた可能性が高いです。高い勉強代を支払ったと思いました。失敗するなら早くする。それを恐れないことが大事だと思います。


さらに、「失敗を恐れない文化の作り方はありますか?」という参加者の方からの質問については、「ダブルスタンダードを許して新陳代謝を繰り返すこと」が重要だという話になりました。

−中馬さん
当然、コモディティでやっている事業部などでは、「ユーザ満足度」「顧客エンゲージメント」「サービス品質」などを追いかけて、売上や利益を考えることが必要です。でも、新規事業については、1年で売上や利益をどれくらい出せるかではなく、トライの数などをKPIにやったほうがいいと思います。そこをいかに切り離せるかだと思います。

−守屋さん
ダブルスタンダードを許さないから、今のような議論になるのではないかと思います。本業で失敗することは最悪ですから、本業で失敗しないようにするのは当たり前だと思うんです。でも、今はまだ何物でもない新規事業で失敗を恐れていてどうするんだ、と思います。「新規事業と本業は違うものである」という大前提に立つことが大事だと思います。

−平野さん
日本は小さい上場が多いですよね。過去25年を見て、スタートアップで1兆円を超えた企業は「楽天」「zozo」「サイバーエージェント」の3社だけです。少なすぎると思います。大企業がスタートアップを買収して、マインドも変えてスピードを買って、という感覚で企業をどんどん成長させていくような構造にしていかないといけないと思います。

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守屋実さん
新規事業家

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1992年機械部品商社ミスミ入社。新規事業開発に従事。2002年新規事業の専門会社であるエムアウトをミスミ創業者の田口氏と創業。複数事業の立ち上げおよび売却を実施。2010年守屋実事務所を設立。新規事業創出の専門家として活動。ネット印刷通販のラクスル立ち上げに参画。


平野未来さん
シナモン社長

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2008年東京大学大学院修了。在学中にアプリ開発のネイキッドテクノロジーを創業、2011年にミクシィに売却。2016年に人工知能(AI)開発のシナモンを設立。2020年4月から内閣官房IT総合戦略本部の本部員も務める。


中馬和彦さん
KDDI事業創造本部
ビジネスインキュベーション推進部長

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1996年国際電信電話(現KDDI)入社。2018年よりビジネスインキュベーション推進部長として、スタートアップ支援プログラムKDDI ∞ Labo及び投資ファンドKDDI Open Innovation Fundを統括。経済産業省J-Startup委員、ILSアドバイザリーボード、スポーツ産業振興委員会委員等を歴任。


村松進
日経産業新聞副編集長

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1994年日本経済新聞社入社。一貫してビジネス報道を担当し、ヘルスケア産業の取材経験が長い。仙台支局キャップも務め、東日本大震災からの東北の復興やアイリスオーヤマを現在も取材し続けている。

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