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アリバブダイアリー5.「妊娠検査薬」

ネットで注文した妊娠検査薬の配達予定を見ると2日後になっていて、現在発送準備中になっている。けれどもそわそわして落ち着かない。もう待っていられない。そんな様子を見かねた夫が、今から買いに出ようと私を誘った。それから少し離れた所にあるドラッグストアへと2人で出かけた。国道の大きな道をバイクに乗って走って行った。街路樹の葉の緑色は、太陽の光に照らされて青々と目に鮮やかで生命力に満ちていた。落ち着きの無い私の気持ちをなだめるような、とても柔らかな光だった。沿道にある来た事の無い大型スーパーにはドラッグストアの看板があったので、そこで買う事にした。妊娠検査薬を購入するのは心許無く恥ずかしさが邪魔をした。だからすぐ側にあった目薬も手にしてレジカウンターへと向かい、支払いを済ませた。

足早に買い物を終えて、すぐに家路に着いた。そして帰宅後さっそくトイレで妊娠検査薬を使ってみる事にした。箱から取り出したプラスチックの細長い棒はチープな感触で、正確さは信頼出来なかったがとりあえず試してみた。検査薬を見てみると、一瞬にして赤い線がはっきりと現れ、疑いようのない結果が見て取れた。陽性を表す2本の線だ。反応が出るのに時間がかかるだろうとトイレを離れていた夫が戻ってきた。


「もう、結果出てる。はっきりと。陽性。陽性みたい。」そう彼に話した。どんな反応をするのか怖かったので、平静を装って話しかけた。「えっ、もう出たのか。こんなに早く。本当なのか。うわー!これから人生変わるぞ~!」


夫の顔はほころんでこの上なく喜んでくれたが、私は今更素直に喜ぶのを見せたくないような感情になってしまった。凄く嬉しい時に時折顔出すあまのじゃくな私。その対処に私自身が困りかねる。


私の中に新たな命がいる確率、約99パーセント。

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