最近読んだ本たち(2024年5月分)
2024年5月の5冊
5月前半は落ち着いていて、本を読みつつゴールデンウィークを満喫できた。
後半は忙しかったので、読書はやや失速。毎月言っているけれど、「もっと読みたいなあ」と思った。
ひと月に50冊読みます! なんていう方はどんな暮らしをしていて、どんなふうに読んでいるのだろう。羨ましい……!!
『傲慢と善良』 辻村深月
ベストセラーになった小説をわたしがタイムリーに読めることは少ない。ワンテンポあとどころか、10年後くらいに読むのだってざらだ。「あ」とか言っているうちに5年が経つ。
でも、これは友人がおすすめしてくれたのでわりと早めに買ってみた。
婚活を題材に、自意識とほんとうの自分とのはざまで苦しむ人が浮かびあがる。キーワードはタイトルのとおり「傲慢」と「善良」だろう。
もっと若い頃に出会いたかった小説。わたしも結婚前後の年頃には自意識と他者評価のあいだでよく悩んだ気がする。おばちゃんになった今は、また別のことで悩んでいる。人生ずっと悩んでいる。そんなものかもしれない。
『何者』 朝井リョウ
就職活動期の大学生たちにスポットライトをあてた作品。わたしも就職活動には苦戦したくちなので、彼らに感情移入しながら読んだ。
朝井リョウさんの小説にはいつも「あー、あるある!」が詰まっている。誰もが一度は抱いたことがある違和感や落胆などをすくいあげる筆致は、毎度あざやか。
大学生のとき、いましたよね? アルバイトに行くのに「ちょっと仕事行ってくるわ」とか言いたがっちゃう奴。……わかる!
『トリップ』 角田光代
一つひとつの短編が連なっている。1話目にちらりと登場した人物が、次の話では主人公になる仕掛けだ。そこでは東京郊外の町を舞台に生きる人々の、傷や痛みを抱えた心の模様が描かれる。
丁寧に、みっちりと組み上げられた心理描写も読みごたえ満点なのだけれど、なによりすごいのは一瞬の光景がきれいに浮かび上がるところ。どの話にもばしんと心に残るシーンがある。商店街や川沿いの景色が目に浮かぶようだ。
大好きな短編集になった。今もちょこちょこと読み返している。
『夜ふかしの本棚』 朝井リョウ/円城塔/窪美澄/佐川光晴/中村文則/山崎ナオコーラ
先日、記事にもした本。朝井リョウさんや円城塔さんら6人の作家たちによる書評的エッセイ集だ。
個性的かつ実力派のクリエイター揃いだから、みなさんがどんな本に「つくられて」きたのかとても気になって手にとった。
結果、本を買いたくなる病にかかってしまい、困っている。それくらい、魅力的な作品だった。
『黄色い家』 川上未映子
わたしの場合に限って言うなら、小説を読み終えると登場人物の名を忘れてしまいがちだ。ストーリーは思い出せるが、たいてい人物名がおぼろげになっていく。
それが、この作品は読み終えてしばらく経った今も、すべての登場人物の名を憶えている。それだけ強烈な印象を残す小説であり、キャラクター一人ひとりの存在感が濃かった。
3センチ近い厚みの単行本にもかかわらず、仕事や家事のあいだに読み進め、3日で読了した。まるでなにかに取り憑かれたように読んだ。必死に、ななめなひたむきさで生きていく少女の姿が魅力的すぎた。
「ノワール×青春」小説、文句なく面白かった。今年読んだもののうち、現時点でのナンバーワン。読みごたえのある小説を求めていて、しかもエンタメ色も譲れないという方には絶対おすすめしたい。
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朝井リョウさんの『何者』を読んだあと手にとった『傲慢と善良』文庫版の解説がたまたま朝井リョウさんだった。その解説が面白かったのでまた『夜ふかしの本棚』で朝井リョウさんの読書論に触れ……、となぜか今月は朝井リョウさんだらけになった(この二文だけでも4回お名前を出している!)。
先月は『正欲』を読んだし、この2か月は朝井リョウさんの作品に多く触れた。食べもの同様、惹かれたらしばらくそれを喫し続けるのがわたし。それでいいのだ。
6月はなにを読もうかな。
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