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本のはなし

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読書記録や、本をめぐるエッセイをまとめています。
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2024年7月の記事一覧

読んで、つなぐ

読んで、つなぐ

すっかり時間が経ってしまったけれど、7月はじめに堀江敏幸『雪沼とその周辺』を読み終えた。雪沼という小さな地方都市に住む人々の生活と、心の表情が描かれる短編小説集だ。

実は堀江敏幸さんの作品を読むのははじめてだ。その穏やかな筆致と美しい日本語をここちよく感じながら読み進め、ふと思った。

「雪沼って、実際にある地名なのかな」

自然現象の名を冠した地名は案外少ないらしいことを、昔、ある小説で知った

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最近読んだ本たち(2024年6月分)

最近読んだ本たち(2024年6月分)

6月もあっという間に過ぎていったけれど、マイペースに読書できた。夜はだいたいソファに丸まって本を読むわたしのことを、家族は「ダンゴムシ化している」と言う。

わりと面倒くさいダンゴムシだと我ながら思う。どうせならかわいくておちゃめなダンゴムシになりたい。

『すべて真夜中の恋人たち』 川上未映子

本屋さんで一目惚れして購入した一冊。文庫版は、夜の静謐さを映した暗いブルーグレーに、光がちらつくよう

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その気配を感じたから

その気配を感じたから

あるべきじゃないものがはさまっていた。

このあいだ、子どもの頃に大好きだったエッセイ集『まず微笑』を記事のなかで取り上げた。

三浦朱門、曽野綾子、遠藤周作の各氏によるこの本は、わたしが小学校の頃に繰り返し読んだ一冊だ。キリスト教系の小学校に通っていた当時、シスターに薦められて、母に買ってもらった(著者のお三方はカトリック信徒)。

「あのエッセイがまた読みたいなあ」、そう思ったのだけれどもう新

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