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時価総額10兆円のビジネスモデル【3】誰でも、どこでも、ビットコインを簡単に売買できる世界に

 インターネットの黎明期、Googleはユーザーフレンドリーな検索エンジンを提供し、インターネットに接続しているユーザーであれば誰でも世界中の情報を見つけることができるようになりました。いわば情報へのアクセスを民主化したと言えます。
 コインベースは2012年に、誰でも、どこでも、ビットコインを簡単・安全に売買できる世界を作る、とのコンセプトで事業をスタートしました。インターネットに接続している人なら誰でも暗号資産へ投資できるようにすることで、ネット上での価値移転手段であるデジタルアセットへのアクセスを民主化することを狙っています。
 今やコインベースのプラットフォームには、100カ国以上の約4,300万人の個人投資家、7,000の機関投資家、115,000のエコシステムパートナー(カストディなど各種サービスの利用者)が参加しています。

 それでは、S-1資料「経営陣による財政状態及び経営成績に関する分析と考察」(P89)から、ビジネスモデルと事業環境をひも解いていきましょう。

ブロックチェーンと金融技術組み合わせ信頼性の高いプラットフォーム提供

 コインベースの強みは、ブロックチェーン技術と従来の金融技術双方の長所を組み合わせ、信頼性が高く、使いやすい売買プラットフォームを提供していることです。世界で24時間365日リアルタイムで取引される仮想通貨市場に対応するため、堅牢なプラットフォームを構築しています。また、世界各国の規制当局と協力し、規制への対応、セキュリティ対策も進めています。
 12年末から20年末までに、仮想通貨全体の時価総額は5億㌦弱から7820億㌦へと成長、コインベースの個人投資家は13,000人から4,300万人に増加しました。さらに最近では、売買プラットフォームを利用する機関投資家の数が大幅に増加し、17年末の1,000社強から20年12月末では7,000社に増加しています。
 そのコインベース、どうしても業績が仮想通貨の市況に大きく左右されるため、市況と同社の関係を分析しています。S-1によると、ビットコイン価格は10年以降、大きく分けると4回の価格変動サイクルを観察することができるとのことです。下記の対数チャート(Bitcoin Price, Log Scale)をみると、各サイクルの期間は2年~4年程度で、前のサイクルより時価総額は大幅に上昇しています。市況に多少の変動はあっても長期的には明るい展望を持っているということを言いたいように見えます。

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米国株とビットコインの相関性、20年以降高く

 米国株とビットコインの相関性に関しては、常に議論があるところです。過去には、ビットコイン価格は米国株と相関性があるとは言えませんでしたし、そこがビットコインの魅力の一つとされてきました。この傾向は、20年2月にCOVID-19の影響で米国株と仮想通貨が大幅な下落に見舞われるまで続いていました。しかし、コインベースは昨年3月以降に市況が回復するにつれて、今度は相関性が高くなってきたと分析しています(チャート,Crypto Market Capitalization vs.S&P500)。
 ビットコインなど仮想通貨価格が業績に与える影響が大きいため、コインベースは18年以降、カストディサービスなどのサブスクリプション型サービスの投入を進めてきました。今やカストディなどついて90以上の仮想通貨をサポートしています。

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預かり資産、M&A利用し大幅増ーー市場全体の11%に

 個人投資家の利用者はビットコインへの関心の高まりを背景に、うなぎ登りで増えています。下記のチャート(Verified Users)にもあるように、20年4Qには4300万ユーザ獲得しています。また、同社プラットフォーム上の仮想通貨の預かり総資産も増加し、20年4Qには900億㌦にもなったそうです。19年にXapoの機関投資家向けのカストディ事業を買収した効果もあるでしょう(チャート, Assets on Platform and Crypt Market Capitalization)。
 20年4Qには、同社が預かる仮想通貨の総額(預かり資産額)は取引市場全体の11.1%を占めます。18年(4.5%)→19年(8.3%)→20年(11.1%)と増えてきました。仮想通貨別では、うち70%がビットコイン、13%がイーサリアムになります。

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機関投資家の取引、個人を上回るーーDeFiで利用も

 個人投資家と機関投資家のトレーディング・ボリュームに関する記述(P98)もありました。ヘッジファンドやファミリーオフィス、テスラなど事業会社のビットコイン購入の裏にはコインベースがいると噂されていましたが、その規模感が分かる資料は公開されていませんでした。下記のチャートをみると、19年Q2から機関投資家のトレーディング・ボリュームが個人投資家を上回っていたことが分かります(チャート, Trading Volume and Crypto Asset Volatility)。開示資料によると「2020年に、機関投資家がインフレに対するヘッジとしてビットコインに投資する動きが加速していることがわかりました。さらに、分散型金融(DeFi、※1)のアプリケーションに参加するための仮想通貨(トークン)の使用が増加しています」とのこと。個人投資家の参入は市況に大きく左右されるため、コインベースは機関投資家向けサービスの拡大に今後も注力していく計画です。

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