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時価総額10兆円のビジネスモデル【2】個人投資家や機関投資家の売買取引手数料が収益源ーー売上の96%超に

 コインベースは2月25日、米証券取引委員会(SEC)に日本の目論見書に相当する開示書類「Form S-1 」を提出しました。上場後の時価総額1000億㌦(10兆円兆)ともいわれるコインベースの売上とビジネスラインを読み解きます。

20年売上は前の期比2.4倍の12億㌦

 注目の2020年12月期の売上高は前の期比約2.4倍の12億7748万㌦(1㌦105円換算で1340億円)、最終利益は3億2231万㌦(338億円、前期は3038万㌦の赤字)でした。同社のビジネスラインは①個人投資家向け②機関投資家向け③エコシステムパートナー向け(カストディ、ステーキング等)ーーで構成されています。開示資料からは100か国以上で展開する個人投資家や機関投資家によるプラットフォーム上での取引手数料が主な収益源で、売上の96%以上を占めていることが分かりました。地域別では米国76%と欧州各国24%と、米国がほとんどを占めます。

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四半期ベースでも売上急拡大ーー積極的なM&Aも

 20年4Qの売上は3Q比1.85倍の5億8511万㌦(約614億円)でした。四半期ベースでみると、ビットコイン価格が上昇に転じた20年1Qより、売上と利益が急激に伸びていることが分かります。決済手段の一つである仮想通貨は利用者が増えることに意味があります。この間の仮想通貨高により成功体験を持つ投資家が増え、これがさらなる投資を呼び込んでいます。
 オーガニックな成長に加えて、機関投資家向けビジネス拡大のためM&Aにも積極的です。19年にはXapoのカストディ事業(※1)、20年には機関投資家向けブローカレジサービスを手掛けるTagomi(※2)をそれぞれ買収し、これがこの間の売上増に寄与しています。
 ただ、市況がさえなかった19年は最終赤字に転落する場面もありました。S-1でも繰り返し指摘されていますが、ビットコインをはじめとする仮想通貨の価格に収益が大きく左右される点は留意した方が良いでしょう。

CB四半期業績推移

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業績安定を狙い第三のビジネスライン強化

 個人投資家向け、機関投資家向け売買プラットフォームに続く第三のビジネス、”エコシステムパートナー向けサービス”はカストディ・サービス、マイニングのステーキング、教育関連、ペイメントーーなどで構成されています。まだまだ売上に占める比率は低いものの、これも順調に伸びていることがうかがえます。中には、仮想通貨・ブロックチェーンの犯罪利用を監視・追跡するソフトウェアを米当局に提供するコインベース・アナリティクスといった仮想通貨分析サービスもあります(※3)。
 コインベースの業績はビットコインの市況に左右されやすいため、比較的安定的な機関投資家向けカストディなどのエコシステムパートナー向けサービスの比重を高めていく考えだということです。下記のチャートからも分かるように15年以降次々と取引所プラットフォーム以外のサービスを投入しています。

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        ※青は取引系、水色はサブスク型サービス投入時期

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 ビジネスラインについては次回以降、もう少し踏み込んで読み解いていきます。

※1: The Company closed a transaction with Xapo, Inc. (“Xapo”) to acquire the customer relationships of Xapo’s institutional custody business, which includes high net worth individuals and institutions. 

※2:Tagomi is an institutional brokerage for crypto assets and offers an end to end brokerage solution that caters to sophisticated traders and institutions. Tagomi operates an advanced trading platform which pools liquidity from multiple venues to offer efficient pricing, algorithmic trading, a suite of prime services (including delayed settlement and borrowing and lending of fiat currency and crypto assets), and a flexible account hierarchy and operational processes that meet the needs of institutional clients.

※3:コインベース・アナリティクス(Neutrino), Neutrino developed solutions for analyzing crypto asset flows across multiple blockchains, providing actionable insight on the whole cryptoeconomy. The Company renamed the Neutrino services to Coinbase Analytics.


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