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本を貸すというコミュニケーション

 人に本を貸すのは、難しい。でもそれは、ネガティブな意味ではない。難しいけど、楽しいのだ。
 本を貸そうと、自分の本棚を眺めるときには、必ず貸す相手のことを考える。

 その人の好きなものや興味を持っているもの、どんな本、どんなジャンルがが好きそうなのか。

 これを貸したら、どう思うだろうか、など、本を選びながら相手のことを色々と思い描く。

 そしてまた、自分が気に入っている本を、その人は気に入ってくれないかもしれないし、こんな本を進めたりしたら変に思われてしまうかもしれない、などと気をもんだりもする。

 本を貸す、というのは、ある意味自分の心のかけらを貸すようなにも思えて、少し気恥ずかしさもあったりするけれど、一方ではその人に喜んでもらいたい、あるいは自分を知ってもらいたい、という気持ちもあるものだ。


 逆に、人から本を借りたりすると、次は自分からその人に本を貸してあげたくなったりする。

 本の貸し借りは、お互いを理解するための、コミュニケーションのひとつなのだと思う。


 相手の好きな本を知ることで、その人の意外な面を見ることも多い。例えば、普通の主婦のように思っていた人が、ロシア文学が好きだったり、年配の人が最新のSF小説を読んでいたり。

 そんな時は、その人の知らない一面を知れてうれしく思ったりする。

 もちろん、そういうことは本だけに限らない。

 好きな音楽でも、好きな食べ物であっても同じだろう。お互いの好きを貸し合い、共有し、ともに楽しむことはとても素晴らしいことだと思う。お互いの距離を縮めることができるし、新しい世界に出会うこともできるのだから。


 ただ、最近はぼくは電子書籍で本を読むことが増えている。とてもいい本なのに、人に貸しづらいのがちょっと難点である。




読んでいただいて、とてもうれしいです!